『弊社は検査機器・試薬メーカーでありまして、検査を受託することが出来ません。弊社プライマリケアサイトのスピード検索におきましては、
医歯薬出版株式会社からの許諾を受けて「臨床検査項目辞典」の情報を一部転載させていただいております。』
各検査項目がどのような目的で用いられているかを示します。
- HLA抗原の検査は,主に移植におけるドナーとレシピエントの組織適合性適合度の検討や血小板不応状態に陥った患者への適応血小板の検索などに行われている.
- 腎臓移植では,必ずしもHLA抗原がすべて適合していなくても移植腎は生着することもあるが,HLA抗原の適合度の高いほど移植成績は良好である.腎臓移植の生着成績には,クラスⅠ抗原の適合性よりもクラスⅡ抗原(特にHLA-DR抗原)の適合性の方が重要と考えられている.なお,臓器移植ネットワークにおける腎臓移植のレシピエント選択では,DR抗原が最優先されている.また,腎臓移植の生着率は対立遺伝子(アリル)レベルでの適合性が高いほど良好である.
- 一方,造血幹細胞移植においては,クラスⅠ抗原の適合性の方が重要と考えられている.また,造血幹細胞移植においては,対立遺伝子(アリル)レベルでの適合性が求められている.この際に,レシピエントがヘテロ接合で持つアリルの一方をドナーがホモ接合で持つ場合,輸血後GVHDと同様の現象がみられるので,ドナー選択において禁忌と考えられている.
- 近年,輸血によるGVHDが問題になっている.これは輸血血液中のドナーリンパ球がレシピエントの組織を攻撃して起こるもので,最終的には,ほとんどが死亡する.輸血後GVHDの発症は,レシピエントがヘテロ接合で持つHLA抗原の一方の抗原をドナーがホモ接合で有している場合に起こしやすいと考えられている.
- HLA抗原は高度な遺伝的多型性に富み,免疫応答に密接な関わりがあることから,さまざまな疾患についての調査が今までに数多く行なわれてきた.関節リウマチ,1型糖尿病,インスリン自己免疫症候群はいずれもHLA-DR4と相関するが,アリルレベルでは関節リウマチと1型糖尿病はDRB1*0405と,インスリン自己免疫症候群ではDRB1*0406と相関する.ナルコレプシーは,ほとんどの患者でDQB1*0602(DQ6)が認められている.SLEについては,DRB1*1501(DR15)との相関が報告されている.その他に報告されているものとしては,特発性膜性腎症(DRB1*1501),潰瘍性大腸炎〔DRB1*1502(DR15)〕,Hansen病(DRB1*1501,DRB1*1502),橋本病(HLA-DR53),原田病(HLA-DR4,DQ4),などがある.ナルコレプシーやインスリン自己免疫症候群,糖尿病のようにHLA抗原と非常に強い相関を示す疾患では,診断の補助として有用である.
- HLA抗原は,遺伝的に高度な多型性に富んでいることから,親子鑑定や民族調査などにも応用されている.
基準値・異常値
異常値を呈する場合 |
1型糖尿病、 Hansen病、 インスリン自己免疫症候群、 ナルコレプシー、 関節リウマチ、 橋本病、 原田病、 全身性エリテマトーデス、 潰瘍性大腸炎、 特発性腎症
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次に必要な検査 |
移植において組織適合性を検査する場合は,HLA-DR抗原検査,抗HLA抗体検査も同時に実施するべきである.
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( 小林 賢 )