『弊社は検査機器・試薬メーカーでありまして、検査を受託することが出来ません。弊社プライマリケアサイトのスピード検索におきましては、
医歯薬出版株式会社からの許諾を受けて「臨床検査項目辞典」の情報を一部転載させていただいております。』
各検査項目がどのような目的で用いられているかを示します。
- 副腎皮質ホルモンの産生異常(亢進症,低下症)を疑う場合に測定を考慮する.難治性の高血圧や糖尿病,電解質異常,Cushing徴候がある場合には原発性アルドステロン症やCushing症候群を疑う必要があるが,検査成績がこれらの疾患に合致しない場合に,副腎皮質ステロイド中間代謝産物の異常を疑い11-デオキシコルチゾールを測定する.この場合,他のステロイド合成の中間代謝産物も同時に測定すると,ステロイドホルモン合成のどの過程に異常をきたした病態であるかを評価しやすい.
- 先天性副腎皮質過形成のうち11β-水酸化酵素欠損症は,欠損酵素より上位のステロイドである11-デオキシコルチコステロンと11-デオキシコルチゾールの血中濃度が増加する.ACTH負荷後のこれらのステロイドの上昇は患児では正常児の3倍以上に反応する.治療にはACTH過剰分泌抑制のために糖質コルチコイド補充療法を行うが,その際の至適量の決定に11-デオキシコルチゾールを測定する.
- 先天性副腎皮質過形成の90%以上を占める21-水酸化酵素欠損症は,17-ヒドロキシプロゲステロンから11-デオキシコルチゾールへの変換がなされないために11-デオキシコルチゾールの血中濃度が低下する.スクリーニングで血中17-ヒドロキシプロゲステロンが1,000ng/dl以上だと同疾患の可能性が強い.しかし,11β-水酸化酵素欠損症でも増加する場合があり,鑑別診断のためにACTH負荷前後で11-デオキシコルチゾールを測定する.21-水酸化酵素欠損症では低値のまま,11β-水酸化酵素欠損症では上昇する.
- Cushing症候群の鑑別のためのメチラポン試験の判定に際して測定する.この試験はメチラポンの11β-水酸化酵素阻害作用によってコルチゾールの合成が阻害され,ACTH分泌が亢進し,結果としてコルチゾール濃度は低下するものの,その前駆物質である11-デオキシコルチゾールが10~20倍に増加することで尿中17-OHCSが増加することを利用した試験である.
- 健常者とCushing病ではメチラポン投与後に11-デオキシコルチゾールと尿中17-OHCSが増加する.副腎腺腫などによるCushing症候群では,副腎からのコルチゾールの自律的分泌によりACTHは慢性的に抑制されており,メチラポン投与によってもACTH分泌は亢進しない.したがって11-デオキシコルチゾールと尿中17-OHCSの値は無反応である.現在ではメチラポン投与後の一連の反応を直接にコルチゾール,11-デオキシコルチゾール,ACTHを測定することで,より正確に評価可能である.本試験は副腎不全を疑う患者では症状をさらに悪化させるので行わない.
- 11-デオキシコルチゾールは,コルチゾール同様ACTH依存性に産生されるホルモンであるために,Cushing病や異所性ACTH産生腫瘍では高値となり,汎下垂体機能低下症やACTH単独欠損症においては低値となる.
基準値・異常値
不特定多数の正常と思われる個体から統計的に得られた平均値。 |
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高値 |
11β-水酸化酵素欠損症、 Cushing症候群、 メチラポン投与、 21-水酸化酵素欠損症、 Cushing症候群
先天性副腎皮質過形成の一部(11β-水酸化酵素欠損症),Cushing症候群,メチラポン投与 |
低値 |
21-水酸化酵素欠損症、 ACTH単独欠損症、 Addison病、 下垂体前葉機能低下症、 11β-水酸化酵素欠損症、 ACTH単独欠損症、 Addison病、 下垂体前葉機能低下症
先天性副腎皮質過形成の一部(21-水酸化酵素欠損症),Addison病,続発性副腎不全(ACTH単独欠損症,下垂体前葉機能低下症) |
次に必要な検査 |
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変動要因 |
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( 伊藤 聡 )