『弊社は検査機器・試薬メーカーでありまして、検査を受託することが出来ません。弊社プライマリケアサイトのスピード検索におきましては、
医歯薬出版株式会社からの許諾を受けて「臨床検査項目辞典」の情報を一部転載させていただいております。』
各検査項目がどのような目的で用いられているかを示します。
- PAPは正常膵においてはランゲルハンス島のα細胞に恒常的に発現しているが,外分泌細胞では急性膵炎などにより腺房細胞が傷害された場合にのみ発現する.膵炎モデルマウスを用いたPAPの遺伝子および蛋白レベルの解析では,これらが各種サイトカイン,ケモカイン,細胞増殖因子などの生理活性物質と連動して発現することが明らかとなっている.
- 膵炎発症直後に上昇した膵酵素,他の炎症マーカーが速やかに低下するのに対し,PAPの上昇は発症3~7日目にピークを示し下降が遅延するのが特徴であり,その上昇,下降は炎症の程度あるいは治癒の程度と関連すると考えられている.こうした特徴から,本蛋白には急性膵炎の病態を反映するマーカーとしての役割が期待されている.すなわち入院時の膵炎の重症度予測には必ずしも向かないが,その後の経過中の重症度,治癒の評価には有用であり,予後の予測にも応用が可能と考えられる.
- 膵癌の多くは導管細胞由来の導管細胞癌だが,これらの癌細胞にも異所性に膵炎関連蛋白が発現することが知られている.PAP mRNAの異所性発現はまた膵導管細胞癌の80%,粘液性のう胞腺腫の30%にもみられる.この発現のレベルは癌の浸潤,転移,生命予後と関連する.また,PAPは膵以外の各種消化器癌,肝細胞癌,胃癌,大腸癌などでも発現し,血清中でも上昇することが明らかになっている.こうした場合の上昇は,代表的な消化器腫瘍マーカーであるCEA,CA19-9とは独立した因子と考えられており,PAPにはまた腫瘍マーカーとしての役割も期待されている.
- 本蛋白は膵以外にも,炎症性腸疾患の腸管やアルツハイマー病の脳,子宮内膜上皮,外傷後の感覚および運動神経などいくつかの臓器にも発現することが知られている.また,血清PAPは肝不全,腎不全でも高値を呈することが知られているため,評価の際には注意を要する.