抗菌薬との正しいつき合い方:薬剤耐性(AMR)について考える
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 抗菌薬は、現代の医学や医療において欠かすことのできない薬剤のひとつです。しかし、抗菌薬の消費が増え続けることに伴いAMR(Antimicrobial Resistance:薬剤耐性)も出現しています。AMRの増加と拡散によって、抗菌薬を用いた感染症治療で人々の命を救うことが難しくなり、社会的にも経済的にも深刻な状況に陥ることが指摘されています。AMRで亡くなった人の数は■■■■年には全世界で約■■万人であったと報告されており、この数は、■■■■年には■,■■■万人に増えると予想されています。また、AMRを有する病原体が引き起こす感染症の治療においては、長期にわたる入院、高額な薬剤が必要とされ、その経済的負担はかなり重いものとなります。AMRが社会・経済に与える影響については、米国、欧州などの試算により、このまま対策がなされなければ■■■■年までに全世界で■,■■■兆ドルの国内総生産が失われるとされています。日本でも、厚生労働省のAMRアクションプランにおいてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症による追加的医療費がDPC病院で総額■,■■■億円にのぼると報告されています。 感染症に対する有効な治療法がなかったり、それを必要とする人々が利用できなかったりした場合にもたらされる結果は、COVID-■■のパンデミックにより世界に広く知られることとなりました。AMRもまた対策を講じなければ患者の治療を困難または不可能にする、世界の公衆衛生に対する脅威です。さらにAMRに関しては、保菌者が発症しないまま知らぬ間に世に広く蔓延する「サイレント・パンデミック」という事態も危惧されています。そのため、世界保健機関(WHO)をはじめとする様々な団体はAMRを世界中で取り組むべき社会的課題と位置づけ、抗菌薬の適正使用や感染予防などAMRに対する啓発活動を積極的に行っています。このように世界的な脅威であるAMR対策に取り組むことは、持続可能な社会の実現に向けたSDGsの達成にもつながります。2■■AMR対策の背景にあるものグローバルな社会的課題であるAMR ■-■)

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