みいクリニックは2013年に東京都渋谷区代々木に開業されました。2020年にJR代々木駅近くに移転され、現在に至っています。都心に位置するこの近辺には住宅街の他に企業オフィスも多数 あり、会社に勤める方が診療のために来院されます。また、住宅街では家族で長年住んでいる方々も多く、子どもから高齢者まで幅広い患者さんにも対応しています。外来では、内科、小児科・皮膚科・診療内科を標榜されており、オンライン診療なども組み合わせて診療に当たっています。また、ご自宅での療養生活を送れるよう、地域の病院や訪問看護ステーション、薬局、居宅介護支援事業者と連携を図りながら在宅医療にも取り組んでいます。

　多項目自動血球計数装置 pocH™-80i （以下pocH™-80i） ^※を導入した最も大きな理由は、入院の必要性を迅速に判断できるという点です。当クリニックの役割の１つに大規模医療施設との医療連携がありますので、この点は必要不可欠だと考えています。当クリニックは土曜日午後、日曜日が休診のため、金曜日、土曜日午前に来院された患者さんへの判断は非常に重要なものとなります。検査を外の施設に依頼すると、結果が分かり対応できるのが月曜日になってしまうリスクがあります。本来、当日に入院する必要がある患者さんの場合、その場で検査結果を知ることができれば、自宅安静が良いのか、当日中に急性期病院を紹介した方が良いのか判断の目安を付けることができます。

　医療機器の導入については、いつも看護師長に操作性を見てもらっています。当クリニックでは使いやすさをかなり重視しており、今回、導入の決め手になったのもその点でした。さらに採血管のキャップを取る必要のないクローズタイプだったので、感染制御にも役立つと思いました。
　また、当クリニックは病院と違って臨床検査技師がいないので、医師もしくは看護師が操作することになります。操作において手間が多い、メンテナンスが煩わしい医療機器は導入したくないといった意見が出てきます。
　ランニングコストにしても迅速検査の場合は加点されるので、それほど大きな負担と考えてはいません。私達としては患者さんにいち早く検査結果を知らせて、すぐにどのような治療を行うのか説明することを念頭に導入しています。

※：多項目自動血球計数装置　pocH™-80i（医療機器製造販売届出番号：28B1X10014000028）はシスメックス株式会社を製造販売元とする多項目自動血球計数装置です。

　pocH™-80iの検査項目で注目しているのは、まず、W-SCC（小型白血球数）、W-MCC（中型白血球数）、W-LCC（大型白血球数）を調べる白血球の分類です。こうした情報は白血病や再生不良性貧血といった診断のスクリーニングになりますし、小児科でずっと熱が下がらない場合にも注意して数値を見るようにしています。
　白血球が極度に多い場合には、慢性骨髄性白血病や急性白血病などを疑います。逆に、白血球が少ない場合には、ウイルス感染症の初期を疑います。また、慢性的に軽度の白血球減少が見られる場合は、膠原病を想定して赤血球や血小板の異常も調べます。

　pocH™-80iは血球計数において多項目にわたる計測が可能です。これに時系列で検査データを集積する機能が備われば、疾患リスクのスクリーニングが可能になるのではないでしょうか。例えば、白血球の変化を数と種類で年間継続して見ていくと白血病の疑いが確認できる。そうした疾患を見逃さないということに繋がっていきます。
　血球数の増加と減少を継続的に見ていくことは非常に重要です。通常、医師は計測時の赤血球数やヘモグロビン濃度、血小板数などの値が正常範囲にあるかどうかで身体の状態を判断します。しかし、正常範囲でも一定期間の中で徐々に減少したり、増加したりする。こうした継続的な変化を現場の医師が見る機会は意外と少なく、これは診療においてその都度違う医師が対応しているからです。こうした状況はpocH™-80i によって得られた検査データを時系列で分析し、アラートを発信するといった機能があれば診療サポートができるものと思います。