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ショック

別名 Shock

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臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. ショックの診断,治療の第一歩は血行動態の把握である.
  2. 血行動態に応じた緊急処置と同時進行で原因の診断,治療を行う.
  3. ショックに対する薬剤は慎重に使い分け,経験主義的使用は避けるべきである.

●循環血液量減少性ショック
  1. 診断:ショックで外頸静脈が両側とも虚脱していたら,循環血液量減少を考える.まず重症度の判定をしつつ,細胞外液の大量輸液にて治療開始.原因精査を行う.
  2. 内因性カテコラミンの分泌により,見た目の血圧などが一時的に安定していることもあるが,突然急変するものと考え注意して対応する.
  3. 治療:まずは Trendelenburg 体位,下肢挙上などで対処.脱水に対しては輸液,出血に対しては輸血が必要となる.

●血液分布異常性ショック
[神経原性ショック]
  1. 日常生活で最も遭遇することの多いのは,痛みや不安,驚愕などに対する迷走神経反射である.
  2. その他,高位脊髄損傷や脊椎麻酔時にショックとなることがある.
  3. 治療:まず大量輸液を行い,改善なければノルアドレナリンを使用したり,著しい徐脈を認めればアトロピンを使用することがある.

[アナフィラキシーショック]
  1. 原因は多岐にわたるが,不明なこともある.
  2. 臨床症状から軽症と判断しても,急速に悪化し呼吸停止,心停止に至ることがあり,十分な観察を要する.
  3. 治療:第一選択はアドレナリンの筋注である(皮下注ではない).その他,抗ヒスタミン薬やステロイドを使用する.

[敗血症性ショック]
  1. 敗血症(sepsis)は,感染によって発症した全身性炎症反応症候群(systemic - response syndrome:SIRS),すなわち infection induced SIRS と定義される.
  2. 初期には,炎症性メディエータの血管拡張作用により末梢血管抵抗は低下し,高心拍出状態(hyperdynamic state),warm shock となるが,病状が進行すると,血管内皮細胞の障害に伴い末梢血管抵抗が増大,心拍出量も低下し,低心拍出状態(hypodynamic state),cold shock に至る.
  3. Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2012では,early goal-directed therapy(EGDT)に乳酸値正常化を目指す(early lactate guided therapy:ELGT)ことが組み込まれた.昇圧薬はノルアドレナリンが第一選択となり,ドパミンの推奨度が下がった.

●心原性ショック
  1. 原因の診断とそれに対する緊急処置が必要.
  2. 最も頻度が高いのは急性心筋梗塞とその合併症によるもの.
  3. 診断と治療はほぼ同時に行われなければならない.そのため,心電図と心エコーについては,一般臨床医が施行し判読できなくてはならない.
  4. ショックの遷延に対して,各種カテコラミンによる補助やペーシング,IABP,PCPS などの電気的,機械的補助が必要となることがある.

●心外閉塞,拘束性ショック
[心タンポナーデ]
  1. 頸静脈怒張を伴うショックを見たら,必ず疑う.心エコーが診断に有用.
  2. 治療:まず心嚢穿刺,困難なら心膜切開術,さらには緊急開胸術を要することもある.

[緊張性気胸]
  1. 緊張性気胸を疑う所見は,頸静脈怒脹,患側の胸郭運動低下,打診による鼓音,聴診での呼吸音低下,皮下気腫,気管偏位などである.
  2. 緊張性気胸を疑えば,画像診断行う余裕はなく直ちに緊急脱気を行い,引き続き胸腔ドレーンを留置する.処置後にレントゲンで確認する

[肺血栓塞栓症]
  1. 治療は,血栓溶解療法(ウロキナーゼもしくはt-PA の静注),カテーテル血栓溶解療法,血栓吸引除去術,血栓破砕術など.
  2. ショックもしくは心停止に至った場合は,経皮的心肺補助装置(PCPS)の導入が必要となる.また,外科的血栓除去術を検討すべきである.
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ショックの初期治療

 ショックに対する基本的初期治療は,①心肺蘇生を含めた緊急処置とその準備,②ショックの原因と病態の把握,③それぞれの原因・病態に対する輸液・薬物療法,処置,④ショックに合併する呼吸不全,腎不全,肝不全などの多臓器不全および播種性血管内凝固症候群(DIC)の予防と治療である.
 病態を把握せずにむやみに昇圧剤や利尿剤を使用すると余計に病態を悪化させるため,注意が必要である.
①呼吸管理
 ショックの患者では,病状の進行に伴い多臓器の機能不全を合併しうる.その中で最も頻度が高い臓器が肺である.病理学的にはdiffuse alveolar damage(DAD)の所見を呈し,急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome;ARDS)と呼ばれる.2012 年にARDS の新しい診断基準がBerlin 定義(表6)として報告された.
 ショック(C の異常)は,それ自体で気道確保の適応となる.脳循環の低下に伴い意識障害(D の異常)から舌根沈下(A の異常)や誤嚥性肺炎(B の異常)を合併したり,大量輸液の結果,喉頭浮腫(A の異常)や肺水腫による呼吸不全(B の異常)を合併する場合もある.いずれも気道確保の適応であるが,安易に鎮静剤や筋弛緩薬を使用すると余計に状態悪化させることがあるので,注意が必要となる.
 ショックの患者では確実に気道確保する必要があるため,迅速挿管(rapid sequence intubation:RSI)の手法がよく用いられる.導入に使用する薬剤としては,血圧低下を生じにくいetomidate(本邦未発売)やケタミン(ケタラール®)が適している.

②輸液療法
 肘正中静脈などの太い静脈路を2 本以上確保する.静脈路確保が困難な場合,まずは骨髄路(成人では上腕骨・腸骨・脛骨,小児では脛骨)を確保し,その後中心静脈路を確保する.
 輸液の選択に関しては,細胞外液の補充を目的に加温した等張電解質輸液(生理食塩水もしくはリンゲル液)を使用する.
 一般に体重の60%が水分であり,うち20%が細胞外液である.細胞外液のうち1/4が血管内に存在するため,等張電解質輸液を1,000 mL 投与しても実際に血管内に留まるのは250mL である.なお,体血管抵抗(SVR)が低下している血液分布異常性ショックでは血管内に留まる量はさらに少なくなる.
 まずは,1,000~2,000mL の加温した等張電解質輸液を急速投与し,血圧や意識状態,尿量などを評価する.初期輸液に反応しない患者では,より高度なモニタ監視が必要となる.特に観血的動脈圧ライン波形での基線の呼吸性変動の大きさによって循環血液量減少の程度,輸液反応性を推測することができる(山中源治:重症集中ケア 13, 13-16, 2014).
出血性ショックの場合は早朝より血液製剤を使用する.ヘモグロビン≧7 g/dL を目標に赤血球濃厚液(RBC)を輸血する.凝固異常(特にフィブリノーゲン≦150mg/dL)を呈する場合は赤血球製剤に先がけ新鮮凍結血漿(FFP)の輸血を必要とすることがある.
また,血小板濃厚液(PC)を必要とすることもある.

③循環作動薬
 ショックの病態評価のために心エコー検査が有用であり,短時間で循環動態の規定因子である前負荷,心収縮能,後負荷の程度を評価することができる.
 ショックの際に用いる循環作動薬には血管収縮作用のあるものと心収縮性増強作用のあるものがある(表9).各病態に応じてα作用が必要なのか,β作用が必要なのかを考えて使用すべきである.

④モニタリング
 ショックの患者においては,表3 に示されるような,平均動脈圧,尿量,混合静脈血酸素飽和度,中心静脈血酸素飽和度,血清乳酸値などをモニタリングする.

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表3 ショックを示唆する所見
表はPC版サイトをご覧ください
表6 ベルリン定義
表はPC版サイトをご覧ください
表9 循環作動薬の種類と作用
表はPC版サイトをご覧ください
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