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頭部外傷

別名 head injury

疾患スピード検索で表示している情報は、以下の書籍に基づきます。

臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. 人口動態統計では1~14 歳人口の死因の第1 位は不慮の事故であり,15~34 歳人口においても2 位に入っている.さらに,およそその半数が頭部外傷によるものである.死を免れても身体や神経・精神に重大な障害を残すものは死亡者の2~10 倍に達する.
  2. 二次的脳損傷を最小限に留めるため,病院到着前救護として,生命維持に必須の処置を施行する.緊急度・重症度に応じた適切な医療機関への迅速な搬送(load and go)が望まれる(救急振興財団:「救急搬送における重症度・緊急度判断基準委員会報告書」における外傷の重症度・緊急度判断基準,外傷病院前救護ガイドライン.p.187,2005参照).
  3. 頭部外傷・意識障害を有する患者に対して以下が推奨される.
    ①CT などの検査が可能な施設に搬送するよう勧められる.
    ② 中等度の意識障害(GCS スコア9~13,JCS20~3)であれば脳神経外科専門医がいる施設へ搬送することを考慮してもよい.
    ③ 重度の意識障害(GCS スコア3~8,JCS300~30)や進行する意識障害,切迫する脳ヘルニア徴候が認められれば,専門医がいる施設へ搬送(または転送)するよう勧められる.
    ④ 転送にあたっては,確実な気道確保(挿管など)や補助呼吸,静脈路確保など最低限の蘇生的治療が必要な場合,これらを行ってから移動する.とくに低酸素や低血圧は放置してはならない.
  4. 頭部単独外傷の可能性が高いと思われても,他部位の致命的な外傷が否定されるまでは外傷初期診療ガイドライン(JATECTM)に従った治療を行うことが望ましい.
  5. 全身状態の安定を確保するためのprimary survey と蘇生のポイント:ABCDEs アプローチ
    A:気道評価・確保と頸椎保護
    B:呼吸評価と致命的な胸部外傷の処置
    C:循環評価および蘇生と止血
    D:生命を脅かす中枢神経障害の評価
    E:脱衣と体温管理
  6. 損傷の精査を行うsecondary survey のポイント
    ① Glasgow Coma Scale(GCS)スコア8 以下あるいはGCS スコア2 以上の急速な意識レベルの低下,脳ヘルニア徴候を認めた場合(切迫するD)はsecondary survey の最初にCT を撮影する.
    ② 頭部のsecondary survey では次の検索を行う.a頭髪内に隠れた外表傷や陥没骨折,b頭蓋底骨折による眼鏡状出血やBattle’s sign,c眼損傷および眼窩損傷,d外耳道,口鼻腔からの出血や髄液漏
  7. 重症化の予測因子:器質的頭蓋内損傷を疑う所見(CT 検査の基準)
  8. 意識清明で神経学的異常がなく,CT 検査の基準のいずれにもあてはまらないような症例で,虐待や事件性が否定できれば,その後注意すべきことを明示したうえで帰宅可能と考えられる.
※欧米ではCanadian CT Head Rule,Canadian Triage and Acuity Scale(CATS),
 National Institute for Health and Clinical Excellence(NICE)ガイドラインなどがある.
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検査

①CT
    意識障害が受傷時,来院時にある場合や脳や脊髄の局所症状が存在する場合は即刻行う.骨条件でも確認する.
  1. ①脳挫傷
    • a:CT で正常脳より高吸収値で,かつ不均一な領域を示す(MRI では超急性期 T2 強調像で血腫の低信号と周囲の高信号を呈する).
    • b:骨折部位に起こることもあるが,骨折がなくても,受傷部位直下(coup injury),受傷部位の対側(contra coup injury)に起こることがある.
  2. ②血腫:急性期に高吸収値を示し,血腫形成後 2~3 週間の経過で脳と等吸収値,または低吸収値を示すようになる.
    • a:急性硬膜外血腫
    •  ・脳表に凸レンズ状に高吸収域がみられる.
    •  ・空気の混入があった場合には血腫は硬膜外にある.その場合,前・中頭蓋骨含気洞を含む骨折線がみられる.
    •  ・高吸収域の一部に低吸収域をみれば,いったん止血後,再び出血が進行しているものと考える.
    •  ・硬膜動脈を横切る骨折を認めることがある.
    • b:急性硬膜下血腫
    •  ・脳表に三日月状の高吸収域がみられる.
    •  ・他の脳損傷(脳挫傷,脳内出血など)を伴うことが多い.
    • c:慢性硬膜下血腫(一般に急性頭部外傷として受診することはないが便宜上ここで取り扱う.
    •  ・多くは三日月型の低吸収域か等吸収域が脳表にみられる.(高吸収域,混合型もある)
    •  ・等吸収域の場合,単純 CT では脳室偏位血腫の接する脳表の脳溝の消失を手がかりとする.
    •  ・造影 CT では,皮質動脈を示す点状の高吸収域が頭蓋骨内板より離れて内方に偏位していることを確認する.
    •  ・10~15%は両側性で側脳室前角の狭小化(hare’s ear sign)がみられる.
    • d:くも膜下出血
    •  ・脳挫傷・びまん性軸索損傷に伴う以外に,外傷に伴って単独でみられることがある.
    • e:外傷性脳内出血
    •  ・前頭葉,側頭葉の白質にみられることが多い.
    •  ・受傷後,1 週間以上経過して発症する遅発性のものもある.
    • f:外傷性脳動脈瘤
    •  ・全脳動脈瘤の0.5%以下で,受傷後1~2週間で形成され,3週間以内に破裂するものが約80%とされる.
    •  ・穿通性外傷でも発生するが,閉鎖性頭部外傷によるものが大部分である.
  3. ③びまん性脳損傷(特に diffuse axonal injury:DAI)
    • a:CT で①~②のような局所性脳損傷の所見はないが意識障害が高度でかつ遷延している場合考慮する.
    • b:重症 DAI の場合は大脳白質,脳梁,脳幹背側部に点状出血を認めるが,軽症~中等症 DAI の場合,CTでの所見の確認が困難である.この場合, MRI が病巣診断に有用で,非出血脳損傷(T2 延長領域)が確認される.
  4. ④脳浮腫
    • a:通常は脳挫傷やDAIなどに併発し,正常白質より低吸収域を呈する.
    • b:脳ヘルニアの所見:midline shift,中脳周囲の脳槽の左右差消失を見落とさないように.
  1. ②頭蓋単純撮影
    1. ①CT がないとき,または頭蓋骨骨折が疑われるときには必ず行う(CT でも骨折の評価は可能).
    2. ②前後,側面,Towne 像の 3 方向,もしくは逆側面,頭蓋底を含めた 5 枚をとる.
    3. ③神経管骨折が疑われるときには,視束管撮影を行う.
  2. ③血液一般,生化学,凝固,血液ガス,胸部 Xp,心電図を緊急に評価する.
    1. ①基礎疾患があれば,その疾患に対する検査もするが,頭部外傷が重篤な場合,緊急性の高いものを優先する.
    2. ②緊急手術に備えて感染症血液型の検査もあわせて行う
    3. ③手術の場合は輸血の準備をしておく.
    4. ④D-dimmer は重症度や予後とも相関し,輸血を行う目安にもなる.

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