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卵巣腫瘍と卵巣癌

別名 ovarian tumor and ovarian cancer

疾患スピード検索で表示している情報は、以下の書籍に基づきます。

臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. 骨盤内腫瘍の多くは,卵巣腫瘍である.子宮筋腫の一部,卵管水腫などや後腹膜腫瘍などの特殊な腫瘍もあり,鑑別の難しいときもある.
  2. 良性・悪性の鑑別は組織学的に完全にはできないため,一定の適応にて開腹術を要する.腫瘍が明らかな場合は早めに産婦人科へ紹介する.
  3. 手術適応は,大きさ,エコー・MRI の性状,腫瘍マーカー,疼痛の有無などによって決まる.
  4. 良性で癒着のない可能性が高ければ,腹腔鏡下摘出術も可能なため婦人科受診を勧める.
  5. 良性腫瘍のなかでは,漿液性嚢胞腺腫,粘液性嚢胞腺腫,類皮様嚢腫が多い.
  6. 類腫瘍病変では,子宮内膜症性腫瘍(チョコレート嚢腫)が多く認められる.
  7. 卵巣癌罹患率および死亡数は増えている.
  8. 原因不明の腹水貯留・胸水貯留をみたら卵巣癌を考慮にいれ,特に腹水細胞診から悪性細胞が出た場合は,他の原因精査に並行して早めに婦人科受診とす.
  9. 両側充実性の腫瘍の場合,転移性腫瘍(Krukenberg 腫瘍など)を必ず念頭におき全身精査をする.
  10. 卵巣癌は,従来早期発見が難しく発見されたときはⅢ・Ⅳ期が多いといわれてきたが,経腟エコーの発達で,卵巣癌の半数近くがⅠ・Ⅱ期の比較的早期癌でみつかることも多くなった.
  11. シスプラチンを中心とした化学療法は,多臓器の癌と比べると奏効率が高い.しかし長期的予後は必ずしも改善していないといわれている.
  12. 経腟超音波,腫瘍マーカーでの卵巣癌検診が試みられているが確立していない.
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検査

  1. ①超音波
     第1 選択,経腹時には十分な膀胱充満後施行する.大きさ(3 方向),子宮との関係(左右,子宮との境界がはっきりしているかなど),壁の性状(薄くつるっとしているか,厚かったり厚さに変化があるか),単房性か多房性か,内容物のエコー所見,充実性部分があるか,どのような充実性部分か,腹水があるかなど.
  2. ②超音波所見と組織との関係(表1,2)
    1. ① 嚢胞性腫瘍は,その壁が薄く不整がなければ多房性でも多くの場合は良性である.
    2. ② 漿液性嚢腫は,単房性かまたは同じような大きさの多房性嚢胞腫が多い.
    3. ③ 部分的にスムーズな隔壁をもつ腫瘍は粘液性嚢腫が多い.
    4. ④ 嚢胞性だが内部エコーが全体に散在性になっている例では,子宮内膜症性嚢腫が多い.
    5. ⑤ エコー輝度の高い内容をもち,一部に辺縁のはっきりしない丸い腫瘤像(hair ball という)をもつものに皮様嚢胞腫が多い.
    6. ⑥ 充実性部分が主体で内部エコーが不整のものは悪性が半数近くを占める.
    7. ⑦ 嚢胞性部分のなかに不整な乳頭状部分をもつものは,80%くらい悪性の可能性がある.
  3. ③CT は,超音波と比較して再現性や傍大動脈リンパ節腫大の有無などの所見をとるのに優れている.また,皮様嚢胞腫の脂肪像がはっきり描出される.5 cm以上の腫瘍には行っておく.腎機能などの問題がなければなるべく造影で行う.
  4. ④MRI は,任意の方向から画面が得られ,大きな腫瘍や,対側の卵巣や子宮,Douglas 窩など広い範囲の所見を明瞭に得られることが多いので,卵巣癌の診断には不可欠の検査である.腫瘍の内容成分のうち血液や脂肪の同定に優れている.
  5. ⑤細胞診
    1. ① 腹水がある場合は必要に応じて腹水穿刺を行う.陰性でも卵巣癌の否定はできないが通常は陽性に出る.
    2. ② 進行癌においての子宮への転移の確認だけでなく,腹水陽性例で子宮内膜吸引細胞診にて時に癌細胞がみつかるため,原則的に子宮癌検診が必要.
  6. ⑥腫瘍マーカー
    1. ① 上皮性卵巣癌の腫瘍マーカーとしては一般には,CA125,CA19-9,TPA などの組み合わせが行われている.なかでもCA125 はその代表である.
    2. ② 胚細胞性腫瘍に関しては,AFP,hCG などが行われているが,細胞の種類が不明のときはとりあえず上皮性を考えてマーカーを採血しておき,血清の凍結保存をしておくことが望ましい.
    3. ③ CA125 は漿液性嚢胞腺癌での高い陽性率を示すが,粘液性癌で低い陽性率である.100 U/mL 以上を高値としてよいが,2 桁の癌や3 桁の子宮内膜症もある.
    4. ④ CA19-9 は,従来は粘液性嚢胞腺癌の診断で使われてきたが,陽性率は必ずしも高くなく,皮様嚢胞腫でも陽性率が高い.
    5. ⑤ CA72-4,CA54/61 は,粘液性嚢胞腺癌で陽性率が高いといわれている.SLX は,類内膜癌での陽性率が高いとの報告がある.
    6. ⑥ 基本的にはある程度のマーカー(LDH,CEA などを含め)を採取しておき,異常値の出たマーカーにてフォローすることが多い.

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表1 東大式卵巣腫瘍エコーパターン分類
表2 東大式での各パターンと組織との関係
表はPC版サイトをご覧ください
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