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神経・筋疾患の診療

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臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. 神経疾患・筋疾患の種類はきわめて広範である.ここでは特定疾患治療研究事業(56 疾患)に含まれる神経疾患と,難治性疾患克服研究事業(130 疾患)の対象となっている神経疾患とこれに含まれない疾患の中から日常診療で比較的頻度高く遭遇する疾患について記載した.
  2. 診断や治療にあたっては主要症候のみならず神経系および全身的な症候や合併症にも注意を払う必要がある.
  3. 神経・筋疾患の診断には局在診断(神経系の解剖学的部位の推定)と病変の性質(血管性,炎症性,腫瘍など)の診断の 2 つの側面がある.局在診断には神経学的所見についての詳細な観察と考察が重要である.病変の性質の把握には症状,臨床経過,家族歴などの病歴についての十分な聴取が不可欠である.
  4. 神経学的所見と病歴の特徴から,病態についての仮説を立てる.これに基づいて確定診断・鑑別診断に必要な補助検査を取捨選択する(表 1).
  5. 神経・筋疾患には根治的な治療法が十分に確立していない疾患がある.ただし,治療可能な疾患を見逃さないことが大切である.また,適切な対症療法,リハビリテーション,社会的支援などを工夫することにより ADL や QOL を維持・向上させることが重要である.
  6. 各種神経・筋疾患の診療ガイドラインは随時改訂がなされており,最新版に必ず目を通しておく.
  7. 患者本人や家族への病名や予後の告知には十分な配慮が必要である.これらの疾患のなかには医療費の公的補助が受けられるものや,障害の程度により障害年金や介護保険サービスなどの受給対象となる場合がある.制度の内容と利用法について熟知しておくことは重要である.また,全国的な患者会組織がある疾患もあり精神的支援や社会的活動の維持などに大きな意義をもつことも多い.
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チェックポイント

①問診
  1. ①主要症候,随伴症状の詳細
  2. ②発症年齢
  3. ③発症様式(突発完成発症,突発再発性,急性発症,亜急性発症,緩徐進行性,再発寛解性など)
  4. ④既往歴
    • a:内分泌疾患,悪性腫瘍,骨関節疾患などに注意
    • b:治療薬の服用
  5. ⑤生活歴(職業歴,飲酒,喫煙,薬物乱用など)
  6. ⑥家族歴(同様の症状があれば家族の診察,遺伝形式の検討)
②全身的診察
③神経学的診察
次のⅠ.~Ⅴ.の順序で診察を進める.
  1. Ⅰ.病歴の聴取時に観察する
    • ①意識・精神症状
    • ②認知機能,顔貌,不随意運動
  2. Ⅱ.立位の状態で調べる
    • ①歩行
    • ②継ぎ足歩行
    • ③ロンベルグ試験
  3. Ⅲ.座位の状態で調べる
    • ①脳神経系
    •  a:眼底所見,視力,視野
    •  b:外眼筋麻痺,眼振,眼瞼下垂,瞳孔,対光反射 
    •  c:顔面の感覚
    •  d:顔面筋(前額趨壁,鼻唇溝,まつ毛徴候)
    •  e:聴力
    •  f:球麻痺(舌萎縮・偏位,カーテン徴候,嚥下障害,構音障害)
    • ②上肢
    •  a:視診
    •  b:筋緊張
    •  c:筋力(肩関節の外転,指の開扇)
    •  d:手回内回外試験,手指微細運動
    •  e:指鼻試験
  4. Ⅳ.仰臥位の状態で調べる
    • ①上肢の腱反射(二頭筋,三頭筋,腕橈筋,手指屈曲反射)
    • ②下肢
    •  a:視診
    •  b:足クローヌス
    •  c:筋力(股関節屈曲,足関節背屈)
    •  d:腱反射(膝蓋腱,アキレス腱)
    •  e:病的反射(Babinski 反射,Rossolimo 反射の有無)
    •  f:膝踵試験
  5. Ⅴ.病歴と神経学的所見の結果から,さらに詳細に所見を調べる
    • ①筋力低下,筋萎縮の分布と程度
    •  a:近位筋優位か遠位筋優位か
    •  b:線維束性攣縮の有無
    • ②小脳症状
    • ③感覚障害の分布と程度
    • ④自律神経症状(起立性低血圧,膀胱・直腸障害,発汗異常)
    • ⑤高次脳機能
    • ⑥ADL
④補助検査
  1. ①特に注意すべき生化学検査
    • a:CK,CK アイソザイム,ミオグロビン
    • b:甲状腺機能,Na,K,Cl,Ca,P,乳酸,ピルビン酸,ビタミン B1,ビタミン B12葉酸
    • c:腫瘍マーカー(神経特異性エノラーゼ(NSE),pro-GRP など)
    • d:尿中クレアチン(g/日)/(尿中クレアチン(g/日)+尿中クレアチニン(g/日))(正常<10%)
    • e: 自己抗体(抗 GM1 抗体など各種抗ガングリオシド抗体,抗 Hu 抗体などの傍腫瘍症候群の関連抗体,抗 NMDAR 抗体など各種抗受容体抗体,抗VGKC 抗体など各種抗イオンチャネル抗体,抗アクアポリン 4 抗体など)
  2. ②放射線学的検査
    • a:単純 X 線(頭蓋,頸椎,胸椎,腰椎)
    • b:頭部 CT,頭部 MRI,頭部 MRA,頸部 MRA,脳血流 SPECT,骨格筋 CT,脳・脊髄血管撮影,頸動脈エコー
  3. ③髄液検査
    • a:外観,蛋白,糖,細胞数・細胞分画
    • b:ミエリン塩基性蛋白,免疫電気泳動(オリゴクローナルバンド),IgG インデックス,腫瘍マーカー(HCG,CEA,AFP,CA19-9,GFAP,S-100 蛋白,NSE,β2ミクログロブリン),乳酸,ピルビン酸
    • c:細胞診
    • d:凍結保存(可能な限り保存しておく)
  4. ④電気生理学的検査
    • a:脳波
    • b:神経伝導検査
    • c:針筋電図
    • d:大脳誘発電位検査(体性感覚,聴性脳幹,視覚) 
    • e:経頭蓋磁気刺激法
  5. ⑤組織学的検査
    • a:筋生検
    • b:末梢神経生検

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表1 神経筋疾患の運動系の局在診断
表はPC版サイトをご覧ください
◎:特徴的所見 ○:一般的に認める所見 △:障害部位によっては認める所見 ×:通常認めない所見
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