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別名 hemorrhoids

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臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

●痔全般
  1. 肛門は長さわずか4 cmの狭い場所であるが,複雑な解剖をしている.5本の境界線と,それによって境される4つの領域,さらに3つの筋肉,すなわち5線4域3筋があり,痔疾患の病因・病態に深く関与している.5線とは口側より①肛門直腸線,②Herrmann線,③歯状線,④Hilton線,⑤肛門縁である.ほぼ等間隔で各線間はほぼ1 cmである.4域とは口側より①恥骨直腸域,②移行域,③扁平域,④肛門周囲皮膚域である.3筋とは①挙肛筋,②外括約筋,③内括約筋である.
  2. 直腸診は問診,視診に次いで重要な診察であるが,日常診療においてしばしば省略されている.痔を疑った場合は億劫がらず励行する.患者を左側臥位とし,できるだけ膝を腹部に近づけ丸くさせる.指を入れる前に必ず一声かける.通常示指を挿入するが,裂肛で肛門狭窄がある場合は小指を挿入する.手袋をした示指にキシロカインゼリーをたっぷりつけてゆっくり挿入していく.示指の長さは約7 cmであるが,できるかぎり深部まで挿入する.左右に指を回して360°見落としがないようにゆっくり触診する.直腸のみならずダグラス窩,男性で前立腺,女性で子宮頸部を触診する.直腸癌,前立腺肥大,前立腺癌,子宮頸癌,直腸瘤の有無をみる.肛門6時,後壁側で恥骨直腸筋上縁,すなわち肛門直腸線を触れる.抜去しながら内外括約筋間溝,すなわちHilton線を全周性のわずかな凹みとして触れる.内痔核,肛門ポリープ,肛門癌,痔瘻,直腸肛門周囲膿瘍,裂肛,外痔核の有無をみる.肛門の締り具合(最大静止圧)や,肛門を最大収縮させたときの締り具合(最大随意収縮圧)を指で感じる.括約不全や狭窄の有無をみる.抜去後,指に血液が付着していないかをみる.
  3. 痔核,裂肛,痔瘻が3大痔疾患である.比率は70%,20%,10%である.男女比は1:1,1:1,8:1と痔瘻のみ男女差がある.痔瘻は圧倒的に男性に多い.男性は女性より肛門腺が多く,長く,分岐が多く,分泌が多いためである.男性ホルモンも関与している.好発年齢は,痔核はすべての成人年齢に発生する.裂肛は20~40歳代に,痔瘻は乳児期と20~50歳代に好発する.
  4. 手術で病変を切除した場合は,必ず切除組織の病理検査を行う.癌や悪性黒色腫が隠れていることがある.
●痔核(hemorrhoids, piles)
  1. 歯状線の口側に発生する痔核が内胚葉由来の内痔核(internal hemorrhoids),肛門側に発生する痔核が外胚葉由来の外痔核(external hemorrhoids)である.その本体は静脈叢の数,径の増加である.ヒトが2足歩行をしたために起きた疾患である.
  2. 内痔核の病因として重視されているのは,排便時の怒責である.妊娠分娩時にも同じ状況となる.3度,4度内痔核,すなわち脱肛は,長期間排便時に怒責し連合縦走筋の伸展断裂をきたすことで,1度,2度内痔核が肛門外へ脱出し発生する.
  3. 内痔核は嵌頓しないかぎり痛みはないが,外痔核は痛みを伴う.
  4. 怒責診が重要である.2度,3度の脱出性内痔核は怒責しなければ脱出しない.トイレまたは診察室で,蹲踞位(そんきょい,和風トイレスタイル)で怒責してもらうと脱肛がみられ診断できる.同時に直腸脱の有無も診断できる.
  5. 痔核の重症度により治療方針が異なる.1度,2度内痔核に対しては坐薬,軟膏による保存治療を行う.3度,4度内痔核は硬化療法や結紮切除術等の手術適応である.
●裂肛(anal fissure)
  1. 病因としては,硬便排出→裂肛→肛門痛→内括約筋攣縮→肛門狭窄→排便時痛の記憶→排便の躊躇→習慣性便秘→硬便排出→裂肛の深化,という悪循環である.肛門狭窄に対して患者自身による肛門ブジー,拡張術は有効で合併症もなく,安全安価な治療法でこの悪循環を断ち切ることができる.
  2. 裂肛には,まれに脱肛の表面に裂肛を生じる脱出性裂肛やクローン病,HIV等に合併する症候性裂肛がある.難治性裂肛ではこれらの疾患を鑑別する.
●痔瘻(anal fistula)
  1. 肛門小窩肛門腺感染(crypt glandular infection)が悪化して直腸肛門周囲膿瘍(perirectal abscess, perianal abscess)となる.これが自潰,または切開排膿されて痔瘻となる.成人の肛門周囲膿瘍は50%が再燃し,痔瘻へ移行する.痔瘻は手術適応である.痔瘻根治術では根治と括約筋温存という,相反することが要求され,難しい.
  2. 直腸周囲膿瘍は発熱以外の症状がないことがある.不明熱では直腸周囲膿瘍も疑う.
  3. 10年以上の長期にわたり炎症を繰り返すことで,痔瘻が癌化し痔瘻癌になることがある.
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検査

2.裂肛
[検査]
①血液検査
 まれに貧血を認める.
②大腸内視鏡
 40 歳以上,または 40 歳以下でも肛門出血を反復する場合は大腸内視鏡検査を必ず行う.裂肛自体は直腸内で反転しても観察できない.スコープ先端にフードを装着していれば,肛門抜去時に肛門上皮の潰瘍を通常肛門 6 時,後壁側に観察できる.
③肛門内圧測定
 最大静止圧(maximum resting pressure:MRP)は内括約筋の収縮力を反映している.正常では 50~70 mmHg であるが,裂肛では 80 mmHg 以上と高値になる.治療として LSIS(側方内括約筋切開術)を行うと 70 mmHg 以下に低下する.

3.痔瘻
[検査]
①血液検査
 白血球高値,CRP高値といった炎症反応亢進を認める.
②腹部 CT
 水平断,冠状断,矢状断で膿瘍は低吸収域として,痔瘻瘻管は高吸収索状物として認める.特に冠状断は肛門挙筋が逆ハの字型に見え,隅越分類病型診断に有用である.
③骨盤 MRI
 腹部CTと同様に有用である.T2強調像で膿瘍は高信号に描出され同定しやすい.
④経肛門エコー
肛門から 5,7.5,12 MHz のプローブを挿入する.膿瘍は無エコー,瘻管は低エコーに描出される.触診でわかりにくい早期の膿瘍が描出できる.痔瘻癌との鑑別困難な例では,エコー下生検する.
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図5 裂肛
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