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肥大型心筋症

略称 HCM
別名 hypertrophic cardiomyopathy

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臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. HCM の基本病態は心筋の異常肥大と左室拡張障害である.
  2. 成因として常染色体優性遺伝を多く認め,2013 年時点で 1,400種類以上の遺伝子変異が報告されている.しかし肥大を呈する機序は単一ではなく,臨床型は多様である.
  3. 有病率は対象や調査方法によりばらつきが極めて大きく実態は不明であるが,人口の0.2%程度と考えられる.
  4. 病態として非閉塞性と閉塞性があり,治療法・予後など大きく異なる.
  5. 診断は 12 誘導心電図が端緒になり,心エコー検査により心筋肥大・拡張能を評価する. CMR・CT も有用である.
  6. 無症状の例が少なくないが,胸痛動悸呼吸困難めまい感~失神という症状から発見される.
  7. 冠動脈造影やCTにより虚血性心疾患を除外する.心筋生検は特定心筋症との鑑別に有用である.
  8. 治療は自覚症状を有するもの,突然死のハイリスク群,若年発症者が対象となる.他は無投薬で経過観察されることも多い.基本は,①自覚症状の軽減,②突然死の予防,③心不全不整脈対策である.
  9. 自覚症状の軽減や左室流出路狭窄の改善を期待して,β遮断薬や非ジヒドロピリジン系Ca 拮抗薬が投与される.薬物治療で十分な効果の得られない HOCM 症例は,左室流出路狭窄に対して手術的あるいはカテーテルによる Septal reduction therapy を考慮する.DDDペースメーカー植込み術も有効である.
  10. 心房細動を発症した HCM に対しては抗凝固療法が必須である.
  11. 心筋収縮力の増加,心拍数の増加,静脈還流の減少は HOCM の流出路狭窄を増悪させるので,強心薬・硝酸薬などは禁忌である.
  12. 生活指導として,急激な激しい身体運動を禁止すると同時に,ウォーミングアップとクーリングダウンの指導も重要である.
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検査

<心電図>
①HCM の診断に12 誘導心電図は必須であり,無症状で健診の心電図異常がきっかけで発見されることが多い.心電図所見では高率に左房負荷を認め,ST-T 異常を伴う左室肥大所見群と異常Q 波所見群に大別できる.
②高血圧や大動脈弁狭窄がないのにST-T 変化を伴う著明な左室肥大を認める場合や,虚血性心疾患がないのに異常Q 波~R 波減高,ST 低下,陰性T 波を認める場合など,臨床上から説明のつかない心電図はHCM を疑う.
③陽性T 波を伴う異常Q 波は下壁・側壁誘導に見られることが多く,遍在する中隔肥大により形成されると考えられる.また継時的に進行する心筋の変性・線維化により異常Q 波が形成される症例があり,QRS 電位の低下・心室内伝導障害も出現する.
④APH ではV4~6で高電位と巨大陰性T 波(深さ1 mV以上)を認める.
<Holter 心電図>
①多くの不整脈は無症状であり,HCM では拡張障害による心房負荷のため心房細動をきたしやすく,心室頻拍や心室細動といった重篤な不整脈から突然死をきたす.ICD の適応決定にも必要である.
②全例Holter 心電図検査の適応であり,継時的変化も考慮して定期的にチェックする.
<負荷心電図>
①運動能力の決定,治療効果の判定,突然死のリスク判定などのために行う.
<心エコー図・ドプラ法>
①HCM の診断にはもっとも有用で不可欠な検査である.基本的に心内腔の拡大を伴わず収縮能は正常であり,不均一(非対称性)な心筋肥大(≧15 mm)を検出する.高血圧や大動脈弁狭窄症の左室肥大は全周性である.
②HCM の大半で心室中隔の肥大を認め,拡張末期の心室中隔壁厚と左室後壁厚の比が1.3 以上のものを非対称性中隔肥厚(ASH)とよぶ.
③HOCM では,左室流出路狭窄を肥大した中隔と僧房弁前尖により形成し,収縮期に左室流出路狭窄部を速い血流が通過するために僧帽弁前尖が心室中隔の方向に引っ張られ(Venturi 効果),M モードでは僧帽弁前尖の収縮期前方運動(SAM)として観察される.またこれにより僧帽弁の接合が障害され,僧帽弁逆流を生じる.流出路狭窄による収縮中期の血流減少のため,M モードにて大動脈弁の収縮期半閉鎖(semiclosure)
を認める.簡易Bernoulli 式を用い,駆出血流の最高流速から左室流出路圧較差を推定する.
④左室拡張能の評価は必須である.
<心臓カテーテル・冠動脈左室造影検査>
①CT 検査により冠動脈病変の描出が可能となり,侵襲的検査は必須ではない.
②左室拡張末期圧が上昇し,時定数(τ)の延長やpeak negative dp/dt の低下など拡張機能の障害を示す.HOCM では左室内流出路で,MVO では左室中部での圧較差を認める.冠動脈造影にて冠動脈病変を評価することは必要である.
③左室造影では肥大した左室の突出や内腔狭小化がみられ,病態により独特な形状や心尖部瘤を検出する.
<心筋生検>
①心筋生検は侵襲的検査であり,適応に関して意見が分かれる.特定心筋症,とくに炎症や物質の蓄積する疾患との鑑別では有用である.
<CT・CMR>
①CT やCardiovascular Magnetic Resonance(CMR)は,心エコー検査で描出の困難な例では非常に有用である.またCMR は任意の断面設定が可能であり,心尖部の描出や心筋壁厚の正確な測定が可能である.
②CMR におけるgadolinium の遅延造影効果(LGE)は,HCM の予後と有意な関連が認められている.LGE は組織学的には線維化に相当すると考えられている.
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