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尿検査異常(血尿・蛋白尿)と腎機能の評価

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臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

●血尿(hematuria)
  1. 尿沈渣にて1視野(HPF)5個以上の赤血球を認める場合,精査の対象となる.
  2. 血尿の診断は,悪性腫瘍と糸球体腎炎の除外診断が中心となる.
  3. 尿路の悪性腫瘍については,リスクファクターをもつ人に対して十分な精査と経過観察が必要となる.
  4. 変形赤血球と蛋白尿・円柱類が並存すれば糸球体腎炎の可能性が高くなる.

●蛋白尿(proteinuria)
  1. 尿蛋白は一日蓄尿にて判断するが,随時尿でも算出できる.
  2. 蛋白尿は150 mg/日以上であれば精査の対象となる.
  3. 頻回の早朝尿にて尿蛋白陽性となれば,糸球体疾患の可能性が高くなる.
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診断

    1.血尿
    [診断]
     尿路系の悪性腫瘍がないか,糸球体腎炎の可能性がないかを考える.

  1. ①尿路系悪性腫瘍を疑う場合
    1. ①最も可能性が高い悪性腫瘍は膀胱癌である.
    2. ②以下のリスクファクターがある場合はハイリスクと考えられる.
       喫煙,化学薬品(アリルアミン化合物)への曝露,40 歳以上の男性,泌尿器科疾患の既往,排尿刺激症状,尿路感染既往,鎮痛薬(特にフェナセチン)多用,骨盤放射線照射既往,シクロホスファミドによる治療歴.
    3. ③女性は,生理・性交・腟疾患で尿潜血陽性となるため,再検で陰性なら精査不要.特に高齢女性では萎縮性膣炎が原因となる.
    4. ④基本的検査として,尿細胞診・腎膀胱超音波検査が必須である.
    5. ⑤ハイリスクと考えられれば,積極的に膀胱鏡を行うことが望ましい.
    6. ⑥尿細胞診検査は,膀胱癌に対する感度は11~76%,特異度90%以上であり,また高分化癌では陰性となることが多いため注意が必要.3 日間連続で行うことで検出率は高まるといわれる.
    7. ⑦異型細胞が検出されれば,膀胱鏡の適応
    8. ⑧腫瘍マーカーとして,50 歳以上の男性に前立腺癌のスクリーニングとしてPSA を施行することは有用であるが,尿中のBTA やNMP22 などを膀胱癌のスクリーニングとして使うことは勧められない.
    9. ⑨尿路上皮癌の診断において超音波検査はスクリーニングとして有用だが,CT 尿路造影が感度・特異度とも比較的高い.膀胱・前立腺癌に対しては,MRI 検査がCT 検査より有用性が高い.
       発症してから3 年以内には悪性腫瘍が1~3%に発見されるとの報告がある.近年では,糸球体性血尿を除けば,尿路上皮癌スクリーニング陰性であれば定期的なスクリーニングは推奨されないとされている.なお,経過観察中に肉眼的血尿を認めたものや,排尿障害などの症状出現時は,再スクリーニングを施行すべきであるとされている.
  2. ②糸球体腎炎を疑う場合
    1. ①変形赤血球や赤血球円柱を認めるとき
    2. ②蛋白尿を認めるとき
       変形赤血球とは,ドーナツ状(標的,コブ含む),有棘状など多彩な形態を示し,大小不同が認められる場合(特にコブ状は少数でも有意といわれる)であり,糸球体性を示唆する.ちなみに円盤状や球状などの形態を示しているが,大小不同がなく単調なものを均一赤血球といい,非糸球体性を示唆する.
       糸球体性血尿を認めた場合は腎臓内科に紹介することが望ましい.糸球体性血尿は,組織学的にはメサンギウム病変と相関するといわれている.
       血尿単独例では,経過中10%で尿蛋白が陽性となる.
       肉眼的血尿を認める糸球体疾患としては,溶連菌感染後糸球体腎炎とIgA 腎症が主である.

  3. 2.蛋白尿
    [診断]
  4. ①試験紙法
    1. 試験紙法での1+~4+は以下の尿蛋白濃度にほぼ一致するといわれている.
    2. ±:15 mg/dL
    3. 1+:30 mg/dL
    4. 2+:100 mg/dL
    5. 3+:300 mg/dL
    6. 4+:1 g/dL 以上
    7. この方法の最大の欠点は,アルブミン尿以外の蛋白尿(Bence-Jones 蛋白など)を見落としてしまうことである.また,尿の濃縮状態によっても偽陽性や偽陰性になりうる.
    8. 30 mg/dL 以上で陽性となるから,それ以下のいわゆる微量アルブミン尿は検出できない.
  5. ②スルホサリチル酸
     すべてのタイプの蛋白を検出する.しかも感度は5~10 mg/dL ときわめて高い.スルホサリチル酸法強陽性で,試験紙法で陰性の場合は,Bence-Jones 蛋白の存在を第一に考えて精査すべきである.
  6. ③24 時間尿蛋白
     24 時間の蓄尿を施行することは1 日の尿蛋白量を知る最も確実な方法である.
     ただ,1 日尿をためるということはたやすいことではなく,同時に尿中のクレアチニン濃度を測定して1日クレアチニン排泄量(基本的には一定)を計算することで蓄尿が十分であったかどうかの評価を行う.男性では20~25 mg/kg,女性では15~20 mg/kg が目安であり,たとえば60 kg の男性の1 日クレアチニン排泄量は,1.2 g~1.5 g/日である.それに満たない場合は,蓄尿が不完全であると判定,そのままでは1 日尿蛋白量を過小評価してしまう.
  7. ④随時尿での1 日尿蛋白推定法
     外来患者に24時間蓄尿を指示するのは大変であり,十分な検査結果が得られないことが多い.そのようなときには,随時尿での尿蛋白/尿中クレアチニン濃度を測定すると,1 日尿蛋白量が推定できる.尿蛋白は尿の濃縮の影響を受けるため,クレアチニン濃度との比をとることで濃縮の影響はなくすことができる.
     ヒト(体表面積1.73 m2とする)の1 日のクレアチニン排泄量をほぼ1 g/日とすると,尿蛋白/尿クレアチン比がそのまま1 日尿蛋白量となる.比が3.5 g/gCr であれば,3.5 g/日の尿蛋白が排泄されていると考えてよい.
     同様に,糖尿病性腎症Ⅱ期の場合の微量アルブミン尿にも適応できる.比が30~299 の場合に微量アルブミン尿が出ていると判定する.

  8. 3.腎機能
     GFR(糸球体濾過量)の測定のためには,糸球体で自由に濾過され,尿細管で再吸収も分泌もされず,かつ腎にて代謝を受けない物質がもっとも適当であり,イヌリンクリアランスが理想的といわれているが,一般的ではない.
     近年,18 歳以上では,血清Cr に基づいて推定GFR(eGFR)を用いることが多くなっている.
     eGFR(mL/分/1.73 m2)=194×Cr(mg/dL)-1.094×年齢(歳)-0.287
     (女性は×0.739)
    この換算式には,以下のような問題点がある.
  9. ①血清Cr 値を使用しているため,筋肉量が減少している人,とくに高齢者女性では,実際よりも高く推定される.その結果,薬剤が過量投与となりやすく留意する必要がある.
  10. ②体表面積1.73 m2(標準体型170 cm,63 kg)にて補正されているため,体格の小さいひとも高く推定されてしまう.そのため,体格が標準より大幅に外れている場合は,BSA/1.73 を乗じて変換する.
  11. ③健常者は低めに推定される傾向がある.

  12. 4.その他の腎機能推定法
  13. ①シスタチン値
     シスタチンはすべての有核細胞に含まれており,筋肉量の影響を受けないとされる.そのため,筋肉量が少ない例の早期腎障害の発見に役立つ.値の感覚は,クレアチニン値とほぼ同様.
     ただし,末期腎不全に至っても,値は5~6 mg/dL程度で頭打ちになったり,腎後性腎不全ではとくに上昇しにくいとされ,注意が必要である.
  14. クレアチニンクリアランス
     Ccr(mL/分)=Ucr(mg/dL)×V(mL/日)/Scr(mg/dL)×1,440(分/日)
     Ucr:尿中Cr 濃度,V:1 日尿量,Scr:血清Cr 濃度
     Cr は尿細管にて分泌されるため実際のGFR より30%程度高いとされている.そのため,GFR への変換には,0.715 を乗じる.
     24 時間完全な蓄尿がなされていることが前提であり,蓄尿不全にともなう値のばらつきが避けられない.標準体重で一日クレアチニン排泄量が1 g を大幅に割り込む場合は,蓄尿不全を疑う.
  15. ③Cockcroft-Gault 式
     Ccr(mL/分)=(140-年齢)×体重/(72×Cr) 女性は×0.85
     簡便であるため一世を風靡したが,最近はeGFR に取って代わられた.
     GFRより高めにでる傾向があるが,高齢者や低体重例では,過小評価する傾向があり,やや使いにくい.

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