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抗インフルエンザウイルス抗体

抗インフルエンザウイルス抗体

別名 インフルエンザウイルス抗体

臨床的意義

  • 本検査は下記の場合に行われる.
    1. A型・B型インフルエンザウイルス感染が疑われるとき.急性期と回復期のペア血清で測定し,4倍以上の上昇を認めた場合を陽性とする.急性期血清はなるべく早期に,回復期は2週間以上経過した後採取し,同じ条件で同時に測定することが原則である.
    2. ワクチンの有効性の評価.わが国のインフルエンザワクチンはsplitワクチンで,通常HI抗体価で評価する.
    3. 特定のウイルスに対する感受性を調べるとき.毎年,国立感染症情報センターでワクチン株に対するHI抗体価による抗体保有率が集計されている.
  • HIは,ウイルスHAの赤血球凝集作用を抗体が阻止する反応を利用したもので,ウイルスの型・亜型,そしてその中で抗原変異した株のそれぞれについて抗体価測定が可能である.ヘマグルチニンはウイルスの感染の際に細胞のリセプターに結合(吸着)する役割を担っており,ヘマグルチニンに対する抗体すなわちHI抗体はウイルスの中和に重要であると考えられている.抗体の持続は感染後数年間と考えられ,変異株の曝露によってブースター効果を受ける.中和反応は活性のあるウイルスを使用して,ウイルスによる細胞変性効果(cytopathic effect:CPE)を抗体が阻止する反応を測定する検査で,HIに比較して感度と特異性がより高く,抗原の選択が重要となる.
  • HI抗体の測定は一般に前年のワクチン株を抗原として測定されているが,流行株など特定の株を抗原としてそれに対するHI価を測定することもできる.現在測定方法はWHOの血清希釈1:10から始める方法に統一されている.HIでは,従来使用されていたニワトリ赤血球に対する凝集能がAH3で低下しているため,他の種類の赤血球が使用されていることがあり,異なった赤血球を用いて測定したHI抗体価を比較することは避ける.
  • CFは,ウイルス粒子内部の可溶性核蛋白を抗原として測定する.ウイルスの型特異的に反応し,A型とB型を判別する.感度はやや低く,持続期間も比較的短いが(6ヵ月),内部蛋白を抗原とすることもあって,ウイルス感染による上昇を特定しやすいことがある.
  • 血清抗体検査は急性期の診断には有用性がなく,回復期の結果と併せて,感染の確認の検査としての意義となる.経過が長いとき,あるいは症状を繰り返しているときは,感染時期の特定が困難な場合もある.
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基準値・異常値

基準範囲
陰性
  • HI:血清10倍未満,髄液1倍未満
  • CF:血清4倍未満,髄液1倍未満
変動要因
陽性

A型およびB型インフルエンザウイルス感染症

次に必要な検査
今後の検査の進め方
  • 急性期の診断には,病原を直接検出する検査法が必要で,一般には抗原検出迅速診断キットが用いられる.ペア血清の間隔が十分でない場合は,さらに日数が経過した検体を用いる.
変動要因
成人や年長児では,一度感染を受けた後,ウイルスの曝露やワクチンを繰り返すことによってブロードな交差反応を示すようになるため,急性期のHI抗体価が高くても,単一血清で診断することはできない.初感染の乳幼児では,感染したウイルス株に対してのみ抗体が産生されることがあるため,抗原の選定は重要である.流行株の抗原変異が大きい場合も同様で,流行株を抗原として検査する場合もある.
( 三田村敬子 )
臨床検査項目辞典

「最新 臨床検査項目辞典」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部の項目を抜粋のうえ当社が転載しているものです。全項目が掲載されている書籍版については、医歯薬出版株式会社にお問合わせください。転載情報の著作権は医歯薬出版株式会社に帰属します。

「最新 臨床検査項目辞典」
監修:櫻林郁之介・熊坂一成
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, inc., 2008.

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