『弊社は検査機器・試薬メーカーでありまして、検査を受託することが出来ません。弊社プライマリケアサイトのスピード検索におきましては、
医歯薬出版株式会社からの許諾を受けて「臨床検査項目辞典」の情報を一部転載させていただいております。』
各検査項目がどのような目的で用いられているかを示します。
- 本検査は,耳下腺・顎下腺が腫脹し,ムンプスを疑う場合,髄膜炎,脳炎,膵炎,心筋炎,睾丸炎,卵巣炎などムンプスに伴う合併症が考えられたとき,またワクチン後の抗体陽性や不顕性感染の診断に主に用いる.
- ムンプスの診断としては,EIAにて急性期にIgM抗体を検出するか,ペア血清でIgG抗体価の有意な上昇をもって判断する.IgM抗体は最初の数日で検出され始め,1週間でピークとなり,数週ないし数カ月検出される.ワクチン接種後の抗体チェックには6~8週後にEIAのIgGが用いられる.
- 再感染時にもIgM抗体が検出されることがあり,初感染と再感染の鑑別にはIgG抗体のavidityの測定が有用と報告されている.
- ムンプス髄膜炎において,髄液中で,IgG抗体の局所産生が91%に,IgMの局所産生が52%に認められると報告されているが,血清中の抗体測定と併せて判断が必要である.
- それ以外の臨床応用として,ムンプス難聴の診断に用いる.ムンプスの合併症として難聴の発生頻度は,Nelson教科書の記載ではムンプス患者1万5千人に1人といわれているが,最近では200~400人の患者に対して1人の発生の報告もある.一側性に急性発症を生じ,聴力損失は重症のことが多く,改善しにくい.発症年齢は15歳以下が多く,なかでも5~9歳に多い.確実例は,ムンプス発症,すなわち耳下腺または顎下腺の腫脹の4日前より腫脹後18日以内に発症する急性高度難聴とされ,ムンプス特異的IgM抗体価の有意な上昇が診断に有用である.耳鼻咽喉科においては突発性難聴の約5~7%はムンプスによる不顕性感染の可能性があることが示唆されている.
- その他の合併症として,小脳失調症,顔面神経麻痺,横断性脊髄炎,Gillain-Barré症候群,中脳水道閉鎖-水頭症,乳腺炎,甲状腺炎,腎炎,関節炎などに加え,ときに難治性の血小板減少性紫斑病を起こすことがあり,これらの疾患の診断の補助となる.
- 母親からの移行抗体のサーベイランスをEIAで行った場合,3ヵ月以下の月齢で60%台で,生後6ヵ月以降では抗体陽性者は認めない.
- また,髄液でのムンプス以外の他のウイルスの中枢神経感染の診断に用いることもある.ウイルス特異IgGの産生を証明する対照として,髄液と血清にてムンプス特異IgGを同時測定し,そのindexを対照とする.その他,急性リンパ性白血病の化学療法をうけた患児では抗体の消失がみられるが,再ワクチン接種による反応は良好であることが確認されるなど,免疫機能をみるために抗体測定は使用される.
基準値・異常値
不特定多数の正常と思われる個体から統計的に得られた平均値。 |
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異常値を呈する場合 |
IgG EIAで(±)領域は確実に免疫があるとはいえない.時間をおいての再検査が必要である. |
次に必要な検査 |
今後の検査の進め方
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変動要因 |
耳下腺腫脹があり,抗体陰性の場合では,他のパラインフルエンザウイルスやエンテロウイルスなどによる耳下腺炎や特発性反復性耳下腺炎を考える.
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( 河島尚志 )