『弊社は検査機器・試薬メーカーでありまして、検査を受託することが出来ません。弊社プライマリケアサイトのスピード検索におきましては、
医歯薬出版株式会社からの許諾を受けて「臨床検査項目辞典」の情報を一部転載させていただいております。』
各検査項目がどのような目的で用いられているかを示します。
- APL=M3はde novo急性骨髄性白血病(AML)の10~15%を占める.M3症例の大部分(95%以上)では15;17転座が見つかる.
- 本転座は,M3以外にM3VやM3B(後述)とCML の急性前骨髄性転化にもみられるが,逆にそれ以外の病型には認められず,疾患特異性がきわめて高い染色体異常である.
- M3V(別名:hypogranular or microgranular M3)とは,前骨髄球に特有のアズール顆粒が見えず,核の分葉とfolding傾向が強いためにM4と見誤られがちなM3の亜型である.アズール顆粒のサイズが小さいために光顕では顆粒が見えないが,電顕では多数の顆粒を確認することができる.M3は白血球減少を示す例が多いが,M3Vでは白血球増多を伴うことが多い.
- M3Vの一部では,胞体が強塩基性に染まる小さい前骨髄球群が認められることがある.これはM3Bとよばれ,やはりM3の亜型である.M3B細胞はM3Vばかりではなく,よく観察すると通常のM3症例の多くに認められる.M3Vを見落とさないためには,M3B細胞やAuer小体(多数のAuer小体を束として持つ細胞はfagot cellとよばれる)の存在,DIC(disseminated intravascular coaglopathy)所見に注意すべきである.
- M3症例の5%以下で15;17転座の変異型が報告されている.つまり,RARA遺伝子の相手遺伝子としてPML遺伝子以外に,これまでに4つの相手遺伝子(NPM1,PLZF,NUMA,STAT5)が報告されている(表7-9).これらの変異型M3症例のうち,t(11;17)(q23;q11.2)はRA不応性であるが,その他はRA反応性である.
- また,複雑転座(2;15;17転座,3;15;17転座など)やcryptic translocationも報告されている.cryptic translocationでは,RARA遺伝子にPML遺伝子の一部が挿入されるタイプと,PML遺伝子にRARA遺伝子の一部が挿入されるタイプがある.
- FLT3-ITD変異は,他のAMLの20~35%に認められる遺伝子変異であり,その場合には明確な予後不良因子である.しかしM3におけるFLT3-ITD変異の存在はそれほど明確ではなく,FLT3-ITD変異ありの症例は,ないものに比べて有意に全生存期間が短いが,寛解導入率,再発率には差がない.
- FLT3-ITD変異が多いのは,①白血球数が多い例,②M3V例,③short isoform PML/RARA例,④RARA/PML mRNA発現例である.FLT3-ITD変異症例に白血球数が多いのは,FLT3の恒常的活性化により細胞増殖能が亢進させられるためだと考えられている.また,RARA/PML mRNA発現症例に多いのは,この蛋白発現によりgenomic instabilityが亢進して,FLT3遺伝子の変異が起きやすくなるためと考えられている.
- M3の治療にはATRAまたは亜ヒ酸と少量化学療法剤(アルキル化剤,またはAra-C)の併用を用いた分化誘導療法が行われている.その結果,ほとんどの症例が寛解に入るようになり,再発率も10~15%と低率である.また,たとえ再発しても再び分化誘導療法により,ほとんどは寛解に入るので,長期寛解達成率は70~80%に達している.化学療法で治療が行われていた時代にはM3は治療初期に致命的脳内出血を起こす死亡率の高いAML群であったが,今日では予後最良のAML群となっている.
- しかし,さらに長期寛解達成率を上げるためには最初から予後不良群を特定することが必要であり,FLT3変異の検出や,その他の予後不良因子の特定に努力が傾けられている.
- 本検査により,分化誘導療法で治療可能なAML群を特定できる.
基準値・異常値
不特定多数の正常と思われる個体から統計的に得られた平均値。 |
検出せず
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陽性(+) |
M3変異型、 急性前骨髄性白血病、 慢性骨髄性白血病(CML)の急性前骨髄性転化
急性前骨髄性白血病(APL=M3),M3変異型(M3VやM3B),慢性骨髄性白血病(CML)の急性前骨髄性転化 |
次に必要な検査 |
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( 佐藤裕子 )