『弊社は検査機器・試薬メーカーでありまして、検査を受託することが出来ません。弊社プライマリケアサイトのスピード検索におきましては、
医歯薬出版株式会社からの許諾を受けて「臨床検査項目辞典」の情報を一部転載させていただいております。』
各検査項目がどのような目的で用いられているかを示します。
- HcyはCBSの遺伝子異常による酵素活性低下で,ホモシステインが増量するホモシスチン尿症の診断に有用である.通常はメチオニンの増加を指標として診断する.
- Brattströmらが1984年に高Hcy血症が脳血管障害の危険因子であると報告して以来,Hcyと動脈硬化症との関係が注目を集めている.
- 脳梗塞,心筋梗塞,閉塞性動脈硬化症,深部静脈血栓症と血中Hcy濃度とが有意の関係を有し,独立した危険因子であることが疫学統計的に証明されている.また,Ⅱ型糖尿病患者では血中Hcy濃度は非糖尿病群より低値ながら,より強い動脈硬化危険因子であるともされており,他の危険因子と相乗作用を示す可能性が指摘されている.動脈硬化のリスクが高い甲状腺機能低下症でも軽度ながらHcyが高値で,甲状腺ホルモン補充療法でHcyが低下する.特に,一過性脳虚血発作や脳梗塞患者でHcyとの関係を検討したわが国での研究成果では,血中Hcy濃度が高値群では対照群と比較して5.8倍のリスク増大を認めている.
- Hcyの動脈硬化促進作用については種々のメカニズムが考えられている.なかでもreactive-oxygen species(ROS)との関係を指摘する論文が100以上報告されている.Hcy代謝過程で産生するROSにより培養血管内皮細胞を酸化ストレスで傷害する.傷害された血管内皮細胞はさらにROSを産生して悪循環を形成し,血管の動脈硬化が加速すると考えられる.
- ヒト培養大動脈血管内皮細胞にHcyを添加すると単球の内皮細胞への接着を増加させ,接着分子のVCAM-1のmRNA発現を5倍増強する.血管平滑筋に対しても増殖を促すうえに,コラーゲンの合成を増して病変を増悪させる.
- HcyはROSの産生を介して血小板を活性化する.血栓形成促進作用は,第Ⅴ凝固因子,プロテインC,組織プラスミノゲンアクチベーター,組織因子などとの相互関係とトロンボモジュリンの発現抑制などによることが明らかにされている.そのほかに,Hcyは小胞体ストレスと称して蛋白の立体構造変異をもたらすこと,低比重リポ蛋白(LDL)と結合して変性LDLを産生することなども動脈硬化促進要因として知られている.
- 高Hcy血症の原因として,Hcyの代謝に関連する,前述の4つの酵素に関する遺伝子変異がそれぞれ知られている.なかでもmethylene tetrahydrofolate reductase遺伝子(MTHFR)に関して多くの報告がある.すなわち,1996年に変異MTHFRで活性が低い患者で冠動脈疾患が多発することが報告され注目を集めた.これはMTHFR 677C→Tの点突然変異でアラニン残基がバリン残基にアミノ酸置換が起きたためと判明した.この変異のわが国でのアレル頻度は0.33,ホモ型は10.2%と非常に多い.人種間で差があるもののcommon mutationであり,冠動脈疾患や脳梗塞患者では変異アリルの頻度が高いことが報告されている.このような変異アリルを有する例では他の遺伝子型と比較して血中Hcy濃度が高い.
基準値・異常値
不特定多数の正常と思われる個体から統計的に得られた平均値。 |
男性8~17μmol/l,女性6~12μmol/l
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高値 |
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低値 |
低値が問題になることはない.
低値が問題になることはない. |
( 高橋伯夫 )