『弊社は検査機器・試薬メーカーでありまして、検査を受託することが出来ません。弊社プライマリケアサイトのスピード検索におきましては、
医歯薬出版株式会社からの許諾を受けて「臨床検査項目辞典」の情報を一部転載させていただいております。』
各検査項目がどのような目的で用いられているかを示します。
- 先天性副腎皮質過形成のうち17α-水酸化酵素欠損症と11β-水酸化酵素欠損症では,コルチゾールが低値のためにACTH分泌が増加し,中間代謝ステロイドであるDOCが高値を示す.11β-水酸化酵素を阻害するメチラポン投与時はDOCからコルチコステロンへの変換が阻害され,DOCは高値となる.
- 先天性副腎皮質過形成のうち,3β-水酸化ステロイド脱水素酵素欠損症,21-水酸化酵素欠損症,Prader症候群ではDOCは低値となる.
- DOCの分泌調節は主にACTHにより行われているので,ACTH分泌が低下する病態(汎下垂体機能低下症,ACTH単独欠損症)では低値を示し,Cushing病や異所性ACTH産生腫瘍では高値となる.ただし,この変化は副腎皮質ホルモン全般に生じる変化なので臨床的意義は薄い.副腎腺腫によるCushing症候群では下垂体からのACTH分泌が抑制されるためにDOCは低値となるが,癌や複数のホルモン産生能を有する腺腫では高値となる可能性もあり,個々の症例により検査所見は異なる.
- 副腎腫瘍や両側副腎腫大があり高血圧や電解質異常を呈している場合,まずレニン活性,アルドステロン濃度を測定し,原発性アルドステロン症の有無を評価する.そしてアルドステロンの過剰分泌がない場合,DOCをはじめ副腎皮質ステロイド中間代謝産物の産生異常を疑って測定する.DOC産生腫瘍はステロイド中間代謝物産生腫瘍の中では比較的高頻度に認める.
- 副腎皮質球状層におけるアルドステロン生合成の最終過程は,P450c18/P450aldによる18位の水酸化とメチル化,酸化であるが,アルドステロン産生腺腫などP450c18/P450aldが病的に亢進した状態ではDOCの段階から18位が直接水酸化を受け,18-ヒドロキシ-11-デオキシコルチコステロンが合成されやすくなる.これを利用して18-ヒドロキシ-11-デオキシコルチコステロンが,アルドステロン産生腺腫による原発性アルドステロン症と両側副腎皮質球状層の過形成によって生じる特発性アルドステロン症の鑑別に有用であると考えられた時期もあった.しかし,現在では副腎静脈採血法の確立によって両者を鑑別することは可能であり,18-ヒドロキシ-11-デオキシコルチコステロンを測定する意義は薄れてきている.
基準値・異常値
不特定多数の正常と思われる個体から統計的に得られた平均値。 |
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高値 |
11-デオキシコルチコステロン産生副腎皮質腫瘍、 17α-水酸化酵素欠損症と11β-水酸化酵素欠損症、 ACTH過剰を呈する疾患
ACTH過剰を呈する疾患,11-デオキシコルチコステロン産生副腎皮質腫瘍,先天性副腎皮質過形成の一部(17α-水酸化酵素欠損症と11β-水酸化酵素欠損症) |
低値 |
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次に必要な検査 |
異常値の場合,その調節因子であるACTHおよびコルチゾール,アルドステロン,性ステロイド(デヒドロエピアンドロステロン,テストステロン)およびその代謝産物を測定する.そのほかにDOC高値では鉱質コルチコイド過剰を反映し血漿レニン活性は低値となる.
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変動要因 |
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( 伊藤 聡 )