アミラーゼ(尿)
アミラーゼ(尿)
臨床的意義
- 本検査は,原因不明の腹痛・背部痛を訴える患者で,血中アミラーゼは正常であるが膵疾患が疑われる場合に行われる.
- 腎機能が正常の場合には,尿中アミラーゼ排泄量は血中アミラーゼと相関し,血中アミラーゼの上昇により尿中アミラーゼ排泄量も増加するが,腎不全では,尿中へのアミラーゼ排泄が低下し,血中アミラーゼが増加する.血中アミラーゼの一部が免疫グロブリンや多糖体と結合したマクロアミラーゼは,腎糸球体を通過できないことから尿中に排泄されないので,尿中アミラーゼは低値となり,血中アミラーゼは持続的高値を示す.
- 急性膵炎をはじめ,その他の原因による膵型高アミラーゼ血症では血中アミラーゼに比較し尿中アミラーゼが著明に高値となり,そのうえ高値が持続するので,尿中アミラーゼ測定は膵炎の診断や経過観察に有用である.しかし,尿中アミラーゼ濃度は尿量の影響を受けるので,腹痛患者で水分補給ができない状態や下痢の患者では随時尿のアミラーゼは見かけ上高値となる.
- 尿量補正のためには,単位時間排泄量を測定するか,尿量の影響を除外できるアミラーゼクリアランスをクレアチニンクリアランスで補正したACCRを計算する.ACCRは,随時の血中および尿中のアミラーゼとクレアチニンを同時に測定し,(尿中アミラーゼ×血中クレアチニン)÷(血中アミラーゼ×尿中クレアチニン)×100の計算式で算出できる.
- 健常人のACCRは2~3%であるが,急性膵炎では6~12%と上昇し,唾液腺型高アミラーゼ血症では2~3%と正常値をとり,マクロアミラーゼ血症では1%以下の低値となる.
- 尿中と血中アミラーゼを同時に測定し,①血中・尿中アミラーゼがともに高値の場合は,膵疾患あるいは唾液腺疾患,②血中が高く,尿中が正常~低値の場合はマクロアミラーゼ血症,腎機能障害,③血中が正常で尿中が高い場合は脱水や軽度の膵傷害,膵炎回復期などを考える.
詳細を見る
基準値・異常値
- 基準範囲
-
- 100~1,200U/l(随時尿)
(基質Et-G7-PNP;参考値) - 65~700U/l(随時尿)
(基質Gal-G2-CNP;参考値)
- 100~1,200U/l(随時尿)
- 高値
-
アミラーゼ産生腫瘍、 火傷および外傷性ショック、 急性アルコール中毒、 急性膵炎、 子宮外妊娠の破裂、 耳下腺炎、 手術後高アミラーゼ血症、 消化管の穿孔・穿通、 前立腺疾患、 唾液腺の化膿性炎症、 唾石による導管の閉塞、 大動脈瘤破裂、 腸間膜血栓症、 腸閉塞、 糖尿病ケトアシドーシス、 頭部外傷、 肺炎、 肺癌、 肺梗塞、 放射線照射、 慢性膵炎急性増悪、 膵のう胞、 膵管閉塞
- 低値
- 次に必要な検査
- 変動要因
- 腎機能障害の有無,脱水の有無,採尿時の状況(唾液の混入)などから,偽陽性・偽陰性を除外する.
- 腎機能の関与を除外するため24時間蓄尿して,尿量補正を行って確認する.
( 大槻 眞 )
「最新 臨床検査項目辞典」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部の項目を抜粋のうえ当社が転載しているものです。全項目が掲載されている書籍版については、医歯薬出版株式会社にお問合わせください。転載情報の著作権は医歯薬出版株式会社に帰属します。