抗破傷風抗体
抗破傷風抗体
別名 | 破傷風抗体 |
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臨床的意義
- 血中の破傷風抗体価を測定することで,ワクチン施行者の免疫状態が感染防御レベル以上のものであるか否かを判定したり,あるいは破傷風抗毒素血清(tetanus immuno human gammaglobulin:TIG)投与者に残存する抗毒素力価を調べることができる.抗毒素抗体価が0.01~0.15単位(IU/ml)以上であれば破傷風の感染は予防できると考えられている.
- 沈降精製百日咳ジフテリア破傷風混合(DPT)ワクチンを生後3~12ヵ月までに3~8週間隔で3回,15~18ヵ月の間に1回追加することで接種者の90%が破傷風に対する基礎免疫を獲得しうるが,その持続期間は約10年である.1994~1995年にかけてのわが国の調査では,24歳以下では90%以上が防御レベル以上の破傷風抗体価を有するのに対して,30歳以上では防御レベル以上の抗体価を有するものは20%以内にすぎなかったことが報告されている.したがって,破傷風抗体価を測定することにより,受動免疫の状態を知るとともに,適宜破傷風ワクチンを追加接種することが推奨されている.
- 破傷風抗毒素血清(TIG)による治療を受けている患者では,破傷風抗体価は治療により投与された抗血清の血中残存量を反映するので,TIG接種後の経過観察にも利用できる.破傷風抗体価は個人の免疫状態にも影響を受けるので,先天性免疫不全症患者やヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)感染症患者では抗体価の低下がみられる.
- その他,ワクチン接種後の疫学調査など集団の免疫状態を調べる場合にも用いられる.
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基準値・異常値
- 基準範囲
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陰性(有効抗体価>0.15IU/ml)
- 高値
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破傷風トキソイド接種者、 破傷風抗毒素血清(TIG)投与者
破傷風トキソイド接種者,破傷風抗毒素血清(TIG)投与者
- 低値
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免疫不全状態
各種(先天性,後天性)免疫不全状態
- 次に必要な検査
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今後の検査の進め方
- 抗体価が感染防御レベル以下である場合は,破傷風トキソイドを追加接種し,数日後に再度抗体価を測定する.それでも感染防御レベル以下であるならば約1ヵ月後にトキソイドを再度接種する.
- 破傷風感染症の場合は,創傷部位の組織や汚染土壌の嫌気培養による破傷風菌の分離を試みる.
( 古谷信彦 )
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