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抗インスリン受容体抗体

抗インスリン受容体抗体

別名 抗インスリンレセプター抗体,インスリン受容体抗体,インスリンレセプター抗体

臨床的意義

  • インスリン受容体異常症は著しいインスリン抵抗性を特徴とする糖尿病で,Kahnらにより,①妖精症(leprechaunism)やRabson-Mendenhall症候群などの先天性症候群に伴うもの,②インスリン受容体自体の異常によりインスリン抵抗性が引き起こされるA型,③インスリン受容体以後のインスリンシグナル伝達ステップに先天的な異常がありインスリン抵抗性が引き起こされるC型(またはA型亜型),および,④インスリン受容体に対する自己抗体が後天的に作られ,その抗体によりインスリン作用が抑制または促進されるB型,の4型に分けられた.
  • インスリン受容体異常症B型は自己免疫疾患の一つと考えられ,女性に多く(男女比1:2)中年以降の発症が多い.①高血糖に伴う口渇,多飲,多尿,易疲労感,②低血糖を呈しそれに伴う空腹感,冷汗,手足のふるえ,頭痛など,③他の自己免疫疾患(Sjögren症候群,PSS,SLEなど)を合併した場合,皮疹,関節痛,口腔内乾燥感など,の自覚症状を呈する.
  • 理学所見では,①黒色表皮腫,多毛,稀発月経,男性ホルモン過剰症などA型と共通の症状を呈する.これらは標的臓器のインスリン抵抗性や高インスリン血症に起因すると考えられる.②皮膚の変化,レイノー現象,関節痛などの膠原病に伴う所見,がみられる.
  • 検査では,①多くは高血糖を呈するが,空腹時低血糖を認めることもあり,また高血糖の時期のあとに,低血糖の進展を示す例もある.②赤沈亢進,γ-グロブリン増加,各種自己抗体陽性など,自己免疫疾患に伴う所見を呈する.さらに,③血中にインスリン受容体に対する抗体を検出し,その抗体価はインスリン抵抗性の程度と相関する.④耐糖能の悪化と血中インスリン濃度の上昇を認め,高インスリン血症を呈するのみの者から多量のインスリン注射でも血糖コントロール不能の者まで重症度はさまざまである.⑤インスリンに対する血糖反応は低下しており,インスリン抵抗性を示す.
  • 著しい高インスリン血症(空腹時インスリン濃度が50μU/ml以上)およびインスリン抵抗性を示す場合に測定を考える.高インスリン血症を呈する異常インスリン血症および家族性高プロインスリン血症ではインスリンに対する血糖低下反応がよいので鑑別できる.他の高インスリン血症およびインスリン抵抗性を示す疾患(インスリン受容体異常症A型,妖精症,Rabson-Mendenhall症候群など)やインスリノーマ,インスリン自己免疫症候群など空腹時低血糖を示す疾患とは,インスリン受容体に対する自己抗体が血中に検出されることで鑑別する.
  • 治療は,症例によって抗体価や抗体の作用が異なるためそれに応じた治療が必要である.2~3年の経過で抗体価が低下し自然寛解することが多い.血糖コントロール困難例では,血漿交換やステロイド投与,シクロホスファミド投与,IGF-1投与などが試みられる.
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基準値・異常値

基準範囲
陰性
高値

インスリン受容体異常症B型

健常者単球の結合率と比較して患者単球への125I-インスリンの結合が低い:インスリン受容体異常症B型

次に必要な検査
glucose oxidationや2-deoxyglucose取り込みやglycerol放出の抑制などを指標とするインスリン様作用の検討.
( 葛谷信明 )
臨床検査項目辞典

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「最新 臨床検査項目辞典」
監修:櫻林郁之介・熊坂一成
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, inc., 2008.

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