おおくさ泌尿器・内科クリニックは、2014年、よこやま泌尿器・内科クリニックを継承して開業されました。クリニックは小田急線相模大野駅から徒歩3分に位置するビル内にあり、交通の便の良さもあって地元相模原市ばかりでなく、近隣の厚木市、海老名市、伊勢原市、秦野市からも多くの患者さんが通院されています。1日の外来患者数は平均で約70人、多いときには90人に上り、2021年4月には海老名市に分院を開業されています。
2014年に私が前のクリニックを継承した時には、すでに全自動尿中有形成分分析装置 UF-1000i ※1 が導入されていました。その後、2022年に全自動尿中有形成分分析装置 UF-5000 (以下UF-5000) ※2を導入することにしました。2021年に海老名分院を開業する時にUF-5000を導入して仕様や性能は理解していたので、迷いなく購入しました。
尿沈渣検査については、私達の世代は病院勤務時代に鏡検を行なっていません。当直先では遠心分離して鏡検することがありましたが、大学病院や地域の基幹病院に勤務している医師はほとんど経験していないと思います。鏡検は検査技師が行い、完全分業でした。さまざまな細胞を目視で確認できるので、鏡検の重要さは認めています。
しかし、開業医が1人で1日60人から90人の患者さんを診療するとなると、なかなか鏡検する時間を確保できないというのが実情です。泌尿器科専門クリニックにおける全自動尿中有形成分分析装置の導入は自然な流れだと考えています。
※1:全自動尿中有形成分分析装置 UF-1000i(医療機器製造販売届出番号:28B1X10014000052)はシスメックス株式会社を製造販売元とする全自動尿中有形成分分析装置です。
※2:全自動尿中有形成分分析装置 UF-5000(医療機器製造販売届出番号:28B1X10014000041)はシスメックス株式会社を製造販売元とする全自動尿中有形成分分析装置です。
赤血球(RBC)はガイドラインに則り5個/HPF以上を陽性と考えます。 5-9/HPF程度であれば定期的にフォローを行い、数が多い場合や必要と判断した場合は追加の検査を行います。白血球(WBC)も同様に5個/HPF以上で尿路感染症を疑いますが、性感染症(クラミジア、淋菌)を疑う場合は1-4/HPFであっても追加の検査を行います。最近は性病が増えているので注意する必要があります。
定性検査の尿蛋白と円柱(CAST)が陽性の場合は超音波検査で腎臓を確認したうえで、必要であれば腎臓内科の診療を勧めます。また、結石を疑う症状であったり、結石の定期フォローの場合は基本項目以外に結晶(X’TAL)のデータも注意して確認します。結晶が陽性であれば超音波やCTなどの検査を追加で行うこともあります。
他の項目について、研究用項目ではありますが異型細胞等(Atyp.C)に注目しています。以前頻尿の患者さんから膀胱がんが見つかった症例があり、その患者さんの残尿量を測定してみたところ130mLあり中等以上の排尿障害でした。念のため超音波検査を実施したところ、膀胱がんがみつかりました。UF-5000のデータを振り返って見てみると、Atyp.Cの数値が異常に高く出ていました。現在は研究用項目となりますが、注意すべき検体を見つける上で今後指標として使用できるよう検討が進むことを熱望します。外注検査に出すと約2週間掛かりますので測定項目となると患者さんのためになると考えています。