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メトトレキサート

メトトレキサート

略称 MTX

臨床的意義

  • MTX・ロイコボリン救援療法のように大量のMTX(100~300mg/kg)を投与すると,MTXの血中濃度の変化が副作用の発現に大きく影響する.MTXの血中濃度を測定する目的は,MTXの体外排泄状況の把握とMTXによる副作用発生の予測である.
  • MTX・ロイコボリン救援療法を実施する場合は,MTXによる中毒を発現させないため,必ず24,48,72時間の血中MTX濃度を測定する.72時間後もMTXの血中濃度が1×10-7モル濃度以上の場合には,血中濃度が1×10-7モル濃度未満になるまで十分な水分の補給,尿のアルカリ化およびロイコボリンの増量投与・ロイコボリン救援投与の延長などの処置を行う.
  • MTXの高い血中濃度持続による重篤な骨髄抑制,肝・腎機能の著しい低下,持続する口内潰瘍,下痢,下血などの副作用があらわれた場合には,ロイコボリン救援療法の強化(1回投与量の増量,投与間隔の短縮など)を行う.MTX投与後4日目に臨床検査(血液検査,肝・腎機能検査,尿検査など)を実施する.なお,臨床検査は必要に応じ継続的に実施する.
副作用
  • ショック,アナフィラキシー様症状,骨髄抑制,感染症,重篤な肝障害,重篤な腎障害,間質性肺炎,肺線維症,重篤な皮膚障害,重篤な腸炎,膵炎,骨粗鬆症痙攣,片麻痺,失語,脳症,痴呆,麻痺,Guillain-Barré症候群,昏睡
  • MTX・ロイコボリン救援療法において,MTXの高い血中濃度持続による重篤な骨髄抑制,肝・腎機能の著しい低下,持続する口内潰瘍,下痢,下血などの副作用があらわれた場合には大量のロイコボリン救援投与を実施する.
適応症
急性白血病慢性リンパ性白血病慢性骨髄性白血病・絨毛性疾患,肉腫,悪性リンパ腫胃癌乳癌(CMF療法),尿路上皮癌(M-VAC療法)
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基準値・異常値

基準範囲
中毒血中濃度域
  • メトトレキサート(MTX)投与開始後24時間のMTXの血中濃度が1×10-5(10μ)モル濃度,48時間の濃度が1×10-6(1μ)モル濃度,72時間の濃度が1×10-7(0.1μ)モル濃度以上のとき,重篤な副作用が発現する危険性が高い.
  • MTX投与48時間後の血中濃度値は副作用モニターの観点から重要な指標となるので,48時間後の血中濃度の測定は必ず実施する.
変動要因
適応症

悪性リンパ腫、  胃癌、  急性白血病、  肉腫、  乳癌(CMF療法)、  尿路上皮癌(M-VAC療法)、  慢性リンパ性白血病、  慢性骨髄性白血病・絨毛性疾患

次に必要な検査
今後の検査の進め方
  • MTX・ロイコボリン救援療法では,実施前日よりロイコボリン投与終了まで,100~150ml/m2/hrの水分補給を行う必要がある.MTXの排泄を促進するため,尿量を増加させ,MTXの溶解度を高めるためである.また,MTXの大量投与によって破壊,死滅した癌細胞より血液中に放出された多量の尿酸塩を迅速に体外へ排出するためにも,大量の水分補給は重要となる.
  • MTXの高い溶解度を保つためには,尿のpHを常に7.0以上に維持しなければならない.
変動要因
  • MTXと多くの薬剤との併用による相互作用が報告されている.
  • サリチル酸などの非ステロイド性抗炎症薬と併用すると,非ステロイド性抗炎症薬の腎におけるプロスタグランジン合成阻害作用による腎血流量の低下およびナトリウム,水分貯留傾向のためMTXの排泄が遅延し,MTXの副作用(骨髄抑制,肝・腎・消化管障害,血液障害など)が増強されることがある.
  • スルホンアミド系薬剤,テトラサイクリン,クロラムフェニコール,フェニトイン,バルビツール酸誘導体と併用すると,併用薬剤が血漿蛋白と結合しているMTXを競合的に置換遊離し,MTXの濃度を上昇させ,その毒性を増強させるため,MTXの副作用が増強されることがある.
  • スルファメトキサゾール・トリメトプリムと併用すると,両薬剤の葉酸代謝阻害作用が協力的に作用するため,MTXの副作用が増強されることがある.
  • ペニシリン(ピペラシリンナトリウムなど)と併用すると,ペニシリンがMTXの腎排泄を競合的に阻害するため,MTXの副作用が増強されることがある.
  • プロベネシドと併用すると,プロベネシドがMTXの腎排泄を競合的に阻害するため,MTXの副作用が増強されることがある.
( 加藤裕久 )
臨床検査項目辞典

「最新 臨床検査項目辞典」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部の項目を抜粋のうえ当社が転載しているものです。全項目が掲載されている書籍版については、医歯薬出版株式会社にお問合わせください。転載情報の著作権は医歯薬出版株式会社に帰属します。

「最新 臨床検査項目辞典」
監修:櫻林郁之介・熊坂一成
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, inc., 2008.

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