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甲状腺腫

別名 goiter

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臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. 甲状腺腫は,びまん性甲状腺腫と結節性甲状腺腫に大別できる.結節性甲状腺腫と診断がついたら,良性,悪性の鑑別を行う.
  2. 質的診断がついたら,個々の疾患に適した治療法を選択する.
  3. 良悪性の鑑別が重要である.速やかに頸部超音波検査や穿刺吸引細胞診などを行い,鑑別に努める.
  4. 甲状腺の良性腫瘍には,濾胞腺腫,腺腫様甲状腺腫(過形成)がある.
  5. 良性腫瘍で自覚症状がなければ,治療の必要はなく,経過観察を行えばよい.
  6. 甲状腺原発の悪性腫瘍は 5 種に大別される.乳頭癌,濾胞癌,髄様癌,悪性リンパ腫,未分化癌である.乳頭癌が甲状腺悪性腫瘍の 90%以上を占める.
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診断

 触診と頸部超音波検査で結節性病変を認め,悪性腫瘍が否定できなければ穿刺吸引細胞診検査を行う.良悪性の鑑別はこの 2 つの検査で大部分見当がつくが,併せて補助的に頸部軟 Xp 撮影,CT,MRI,シンチグラムなどの所見も参考にして診断する.
  1. ①触診
     患者と正対し,正面から両母指を前頸部気管前面に置き,ていねいに触診する.
     上下動する可動性のある硬い結節を触知し,圧痛を認めない場合は乳頭癌の可能性がある(亜急性甲状腺炎では顕著な圧痛がある).球形または卵円形の表面平滑,硬さ軟からやや硬の腫瘤の場合は濾胞癌または濾胞腫,形状が不整である場合は髄様癌などを念頭におき検査を進めることになる.
  2. ②頸部 Xp 検査
     乳頭癌では腫瘍に一致して高頻度に微細石灰化(砂粒体)を認める.髄様癌で砂粒体よりやや大きい斑点状の石灰化を示すことがある.
  3. ③頸部超音波検査
     無侵襲で簡便で診断価値も高い検査である.
    1. ①乳頭癌では,嚢胞状病変の乳頭状増殖,微細石灰化,気管・前頸筋への浸潤を認める.
    2. ②濾胞癌は,内部エコー不均一や被膜・筋膜への浸潤から診断可能な場合もあるが,濾胞腺腫との鑑別は困難なことも多い.
    3. ③髄様癌では,形状不均一,大小不同・粗大な石灰化を認める場合もある.
    4. 悪性リンパ腫では,入道雲のように周囲の甲状腺を圧迫して増殖する低エコー帯や,嚢胞と見間違えるほどの丸い低エコー帯を呈する.
    5. ⑤未分化癌では,既存の腫瘍の存在とその腫瘍の外に浸潤性に増殖する腫瘍の所見を認める.既存の腫瘍による皮膜や石灰沈着と,その外に広がる境界不明瞭な低エコー帯が特徴である.
  4. ④CT,MRI
     第1選択の検査法ではないが超音波検査に準じた所見が得られる.特に縦隔内進展の状況を正確に把握しうる.
  5. ⑤シンチグラム
     乳頭癌では123I,131I,99mTc で集積欠損像として認める.乳頭癌は201TI で集積が長時間残存するとされる.67Gaシンチでは乳頭癌は集積しないが未分化癌,悪性リンパ腫ではガリウム陽性を認める.
  6. ⑥穿刺吸引細胞診
     経験のある術者であれば外来で簡便に行えて診断価値はきわめて高い.
    1. ①乳頭癌ではシート状,敷石状に採取される.核は特徴ある核内封中体,コーヒー豆様核溝などの所見を認めることが多い.
    2. ②濾胞癌は腫瘍細胞が多数採取され,小型の細胞集団が散在し重積傾向,配列の乱れがあり,核異型の多いものを濾胞癌と診断するが,乳頭癌に比べて診断は難しい.
    3. ③髄様癌では腫瘍細胞は類円形,紡錘形など多様で疎結合性の細胞が多量に得られる.病理像で間質に沈着するアミロイドを確認すれば診断が確実となる.免疫組織学的にカルシトニン,CEAが陽性となる.
    4. 悪性リンパ腫では腫瘍の中心部をねらって穿刺する.多数の細胞が採取され,リンパ球系の腫瘍細胞の均一な増殖像が特徴である.高度の慢性甲状腺炎との鑑別が難しい場合もある.この場合には切開生検を検討する.
    5. ⑤未分化癌ではきわめて大型の異型性の強い腫瘍細胞が認められ,背景に壊死や好中球が多いことも特徴である.

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