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悪性リンパ腫

略称 ML
別名 malignant lymphoma

疾患スピード検索で表示している情報は、以下の書籍に基づきます。

臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

●悪性リンパ腫(ML)
  1. リンパ球組織におけるリンパ球の腫瘍性増殖疾患であり,Reed-Sternberg(RS)細胞と称する特徴的大型細胞の存在により Hodgkin リンパ腫(HL)と,RS 細胞を認めない非Hodgkin リンパ腫(NHL)に区別される.病理分類の詳細は,WHO 分類第 4 版(表1)に則り分類される.
  2. 特徴的な臨床症状は,無痛性リンパ節腫大である.HL では隣接するリンパ節への連続性があり,NHL では非連続的に節内または節外に進展するのが特徴である.また古典的 B 症状は,38.3℃以上の発熱,びっしょりする夜間の発汗,10%以上の体重減少である.これらは HL の臨床診断では重要であるが,NHL では一般的ではないため,必ずしも記載は推奨されない.
  3. 悪性リンパ腫の確定診断には,腫瘍が存在すると推測されるリンパ節などの腫瘍病変からの生検が必須である.生検施行時に留意すべき点は,可能な限り最も腫大したリンパ節や腫瘍性病変から組織を採取することである.サテライトのリンパ節は反応性のことがあり,確定診断に至らない可能性がある.また鼠径部のリンパ節生検は,頸部リンパ節生検に比べて,炎症など反応性の影響を受けやすいため,同等の腫瘍性病変であれば,なるべく鼠径部リンパ節生検は避けて,頸部リンパ節など他部位からのほうが良い.
  4. リンパ節生検の免疫組織学的検査,フローサイトメトリーまたは分子生物学的検査による核型決定は,正確な診断を行うための補助的検査としてきわめて重要である.ただしフローサイトメトリーや分子生物学的検査は,一度検体をホルマリンにつけてしまうと検査不能となってしまうため,新鮮な状態で検査に出す必要があり注意が必要である.
  5. 腫瘍量と進展度の評価を行うため,末梢血液検査,生化学検査,HTLV-1 抗体検査,HIV検査,頸部・胸部・腹部・骨盤部 CT 検査,PET/CT 検査,骨髄穿刺検査(とくに NHL)を施行する.HL において PET/CT 検査で骨あるいは骨髄に異常集積を認めない場合,骨髄検査は省略してもよい.

●非 Hodgkin リンパ腫(NHL)

●<低悪性度悪性リンパ腫(indolent lymphoma)>
  1. わが国の発症率は年間,人口 10 万人当たり 13~21 人である.
  2. 濾胞性リンパ腫では,臨床病期Ⅲ~Ⅳ期の進行例が多く,骨髄浸潤や白血病化を起こすこともまれではない.いわゆる MALT リンパ腫では,胃,肺,唾液腺,皮膚,甲状腺,乳腺,肝臓などの節外臓器に限局性の病変を示すことが多い.自己免疫性疾患が存在し,慢性炎症が母地となることがあるため,シェーグレン症候群,橋本病などの精査を行っておく.
  3. 濾胞性リンパ腫では t(14;18),Bcl-2(+),Bcl-6(+),CD10(+),CD5(-), CD19(+),CD20(+),CD22(+),CD79a(+)を示し,MALT リンパ腫ではトリソミー 3,t(11;18),CD5(-),CD10(-),CD20(+),CD79a(+),CD23(-)などが特徴である.
  4. 限局性濾胞性リンパ腫では局所放射線療法,進行期の濾胞性リンパ腫では,リスクや腫瘍量に応じて無治療での経過観察をするか,抗 CD20 モノクローナル抗体(リツキシマブ)単剤治療,あるいはリツキシマブ併用化学療法などを施行する.限局期 MALT リンパ腫では,Helicobacter pylori が存在すれば除菌療法,除菌不応例や胃以外の MALT リンパ腫では,放射線療法や手術療法を施行する.進行期 MALT リンパ腫は,濾胞性リンパ腫と同様の治療方針である.
  5. 濾胞性リンパ腫の生存期間中央値は 7~10 年.MALT リンパ腫の 5 年生存率は 86%, 10 年生存率は 80%である.

●<中等度悪性リンパ腫(aggressive non-Hodgkin lymphoma)>
  1. びまん性大細胞型 B 細胞性リンパ腫(DLBCL)の年間発症数は,約 6,000 人である.
  2. 持続性および無痛性のリンパ節腫大が重要な所見(約 70%程度)である.
  3. 確定診断は,腫大したリンパ節もしくは節外性病変の生検標本病理学的,免疫組織学的診断による.免疫組織学的診断では,CD19,CD20 の細胞特異的抗原の陽性が DLBCL の診断上重要である.
  4. 治療
    ①初発・限局期(Ⅰ期かつ非巨大腫瘤)DLBCL の標準治療は,R-CHOP 療法 3 コース後に放射線療法である.
    ②初発・進行期(巨大腫瘤性Ⅰ期,Ⅱ期~Ⅳ期)DLBCL に対する標準治療は,R-CHOP療法 6-8 コースである.
    ③再発 DLBCL は,R-ICE,R-DHAP,CHASER,R-GDP,R-ESHAP,R-EPOCH などの救援化学療法を施行する.直接的な検証がされているのは,R-ICE と R-DHAP のみであり,治療効果はほぼ同等であったが,他のいずれのレジメンもほぼ同等の有効性であると考えられている.救援化学療法が奏効すれば,若年者では自己末梢血幹細胞移植併用の大量化学療法が施行される.
  5. 早期と初発の中等度悪性リンパ腫の 4 年生存率は 87%,初発・進行期 DLBCLの5年生存率は 58%,再発中等度悪性リンパ腫の標準治療後の 5 年生存率は 53%である.

●<高悪性度悪性リンパ腫(highly aggressive non-Hodgkin lymphoma)>
  1. リンパ芽球性リンパ腫/白血病は,NHL の 3~4%,Burkitt リンパ腫は 1%未満である.
  2. 腫瘍増殖はきわめて早く,リンパ節以外の腫瘍浸潤,巨大腫瘤の形成も高頻度に認められ,進行期で診断されることが多い.確定診断に時間がかかったり,全身状態が不良であったりした場合,急速に死の転帰となることもある.いったん治療が開始されれば,治療の反応が良好であるが,それゆえに腫瘍崩壊症候群を呈することもあるため,十分な水・電解質管理が必要である.
  3. 血清 LDH,尿酸値,可溶性 IL-2 が高値を示し,骨髄浸潤がある場合には,汎血球減少を呈するのが特徴である.
  4. 短期間の強力な多剤併用化学療法とともに,中枢神経再発予防目的での抗癌剤の髄腔内投与が必要となる.補助療法の徹底(特に腫瘍崩壊症候群や抗癌剤毒性の対応)が必要である.リンパ芽球性リンパ腫/白血病では,寛解に入った場合,地固め療法として同種造血幹細胞移植の検討も必要になる.
  5. リンパ芽球性リンパ腫/白血病と Burkitt リンパ腫では,化学療法が十分施行されれば,予後不良ではない(特に小児では予後良好であり,長期生存が 80%以上に得られている).

●Hodgkin リンパ腫(HL)
  1. わが国では,人口 10 万人当たり 11,422 人(平成 10 年度)の報告がある.
  2. 無痛性のリンパ節腫大を初発症状とし,頸部および縦隔リンパ節から発症することが多い.進展様式は,隣接するリンパ節へ連続的に進展するのが特徴である.その他の症状では,古典的 B 症状を呈することが多い.
  3. WHO 分類第 4 版に則り,病理分類する.
  4. リンパ組織の病理所見で,Reed-Sternberg(RS)細胞の存在が特徴的である.
  5. 病期,予後因子により,放射線療法および化学療法を施行する.
  6. 標準療法により 70~80%の症例で長期予後が得られる.
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検査

1.非Hodgkinリンパ腫(NHL)
[低悪性度悪性リンパ腫]
<検査>
①病型診断にはWHO 分類第4 版(表1),病期診断にはAnn Arbor 病期分類(表2)を使用する.また,消化管悪性リンパ腫の臨床病期分類は,Lungago 国際会議分類(表10)を使用する.
②組織学的に結節構造を示すリンパ腫のうち,FL の診断が疑わしい症例については,t(14;18)の存在をFISH 法で確認することが有用である.免疫染色にてBCL-2蛋白質発現の有無をみることはFLと反応性濾胞との鑑別には有用であるが,FL と他の組織型には役立たない.また,MALT リンパ腫においては,トリソミー3 が約60%に,t(11;18)が25~50%に認められる.

[中等度悪性リンパ腫]
<検査>
①確定診断は,腫大したリンパ節もしくは節外性病変の生検標本病理学的,免疫組織学的診断による.免疫組織学的診断では,CD19,CD20 の細胞特異的抗原が陽性でDLBCL の診断上重要である.
②腫瘍増殖などを反映してLDH,IL-2R が上昇する.LDH は重要な予後予測因子であるが,IL-2R は疾患の診断につながるような特異性はないが,治療効果の判定に参考となる.
③病期診断に重要な検査として,CT 検査とFDG-PET 検査がある.特にFDG-PET 検査では,DLBCLに対しては90%以上の精度があり,肝臓,脾臓などの病変の有無の判定に有用であるため,可能な限りCT検査とともに施行すべきである.

[高悪性度悪性リンパ腫]
<検査>
①診断は,リンパ節,腫瘤の生検組織の病理診断によりなされる.
②血清LDH,尿酸値,可溶性IL-2 受容体が高値を示し,骨髄浸潤がある場合には,汎血球減少を呈する.
③表面マーカーと染色体検査も診断上重要である(表5,7).

2.Hodgkinリンパ腫(HL)
[検査]
 リンパ組織の病理所見で,RS 細胞の存在が特徴的である.
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表1 悪性リンパ腫のWHO 分類第4 版(2008)
表はPC版サイトをご覧ください
表2 Ann Arbor 病期分類
表はPC版サイトをご覧ください
*: 肝臓,骨髄,中枢神経系への非連続性浸潤は常にびまん性
筋外病変(Ⅳ期)とみなす.
肝臓への浸潤は,下記のいずれかがあれば陽性とする.
 ① 肝腫大とアルカリホスファターゼの上昇および少なくとも2 種類の肝機能検査値異常.
 ②1 種類の肝機能検査値異常と肝シンチグラムの異常.
脾臓への浸潤は,下記のいずれかがあれば陽性とする.
 ①Xp やシンチグラムで確認された触知可能な脾腫.
 ②脾シンチグラムにおける明らかな陰影欠損像.
表5 非Hodgkin リンパ腫の各病型のマーカーによる鑑別(B 細胞系)
表はPC版サイトをご覧ください
*:弱いまたは特定できない,注:日本人型HCL ではCD25 陰性,**:濾胞過形成との鑑別に有効,病型の鑑別には無効.
B-LBL:precursor B-lymphoblastic leukemia/lymphoma, CLL/SLL:chronic lymphocytic leukemia/small lymphocytic
lymphoma, LPL:lymphoplasmacytic lymphoma, WM:Waldenstrom macroglobulinemia, MALT:extranodal
marginal zone B-cell lymphoma of MALT, FL:folicular lymphoma, MCL:mantle cell lymphoma, MZL:marginal zone
B-cell lymphoma, SMZL:splenic MZL, HCL:hairy cell leukemia, PC:plasmacytoma, DLBCL:diffuse large B-cell
lymphoma, BL:Burkitt lymphoma, ALCL:anaplastic large cell lymphoma
表7 非Hodgkin リンパ腫における代表的な染色体異常
表はPC版サイトをご覧ください
*1:部位により異なる.肺25~40%,胃25~60%,結膜~20%,眼窩~15%,大腸~15%.
*2: 部位により異なる.皮膚~30%,結膜~30%,耳下腺~20%,肺~10%.肝4 例中4 例と
の報告あり.胃・大腸,甲状腺,乳腺では現在までみつかっていない.
*3:わが国の例では10%以下.
表10  消化管悪性リンパ腫の臨床病期分類(Lungago国際会議分類)
表はPC版サイトをご覧ください
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