STD/STI(性行為感染症)
別名 | sexually transmitted disease/sexually transmitted infection |
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690)
Clinical Chart
- 性行為についての問診が不可欠であるが,特にプライバシーに注意して病歴をとらなくてはならない.
- 1つの性行為感染症の治療をしても,他の疾患に同時罹患している可能性があるので十分留意して同時に治療するよう心がける.
- 妊婦の場合は出産時に児への感染が起こる場合があるので,罹患している感染症により,帝王切開が必要かどうか検討する.
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診断
1.性器クラミジア感染症
[診断]
培養は組織培養などが必要で時間と手間がかかり,一般の細菌検査室では実施していない.抗原検出法〔モノクローナル抗体による直接蛍光染色法(enzyme linked immunosorbent assay:ELISA 法),DNA プローブ法(polymerase chain reaction:PCR 法)など〕,血清抗体値測定などにより診断できる.
また,淋菌感染との混合感染があるので同時に検査する.
2.淋菌感染症
[診断]
分泌物の培養により診断できるが,抵抗性が弱く,ただちに検体を検査室に届けて培地に接種する必要がある.低温にも弱いため,冷蔵庫に検体を保存してはならない.分泌物のグラム染色により,白血球に貪食された特徴的な形態のグラム陰性双球菌が多数認められれば迅速な診断の助けになる.
同時感染が懸念されるのでクラミジア抗体の検査も同時に行う.
3.性器ヘルペスウイルス感染症
[診断]
①組織培養によるウイルス分離.
②特徴的な病理学的所見の証明(巨細胞,封入体など).
③ウイルス抗原の証明(ELISA,蛍光抗体法,PCR など).
④血清抗体値測定.
5.梅毒
[診断]
①培養
人工培養はいまだに成功していない.
②T. pallidum 検出方法
墨汁法,暗視野顕微鏡,パーカーインク染色法,蛍光抗体法などで直接検鏡できる.
③血清学的検査法
非特異的抗体検出法とT. pallidum 特異的抗体検出法とがある.
b:沈降反応(ガラス板法)≦8
c:間接凝集試験(梅毒凝集法)≦40
6.トリコモナス症
[診断]
培養検査ないしは分泌物の顕微鏡検査でなされる.
[診断]
培養は組織培養などが必要で時間と手間がかかり,一般の細菌検査室では実施していない.抗原検出法〔モノクローナル抗体による直接蛍光染色法(enzyme linked immunosorbent assay:ELISA 法),DNA プローブ法(polymerase chain reaction:PCR 法)など〕,血清抗体値測定などにより診断できる.
また,淋菌感染との混合感染があるので同時に検査する.
2.淋菌感染症
[診断]
分泌物の培養により診断できるが,抵抗性が弱く,ただちに検体を検査室に届けて培地に接種する必要がある.低温にも弱いため,冷蔵庫に検体を保存してはならない.分泌物のグラム染色により,白血球に貪食された特徴的な形態のグラム陰性双球菌が多数認められれば迅速な診断の助けになる.
同時感染が懸念されるのでクラミジア抗体の検査も同時に行う.
3.性器ヘルペスウイルス感染症
[診断]
①組織培養によるウイルス分離.
②特徴的な病理学的所見の証明(巨細胞,封入体など).
③ウイルス抗原の証明(ELISA,蛍光抗体法,PCR など).
④血清抗体値測定.
5.梅毒
[診断]
①培養
人工培養はいまだに成功していない.
②T. pallidum 検出方法
墨汁法,暗視野顕微鏡,パーカーインク染色法,蛍光抗体法などで直接検鏡できる.
③血清学的検査法
非特異的抗体検出法とT. pallidum 特異的抗体検出法とがある.
- ① 非特異的抗体検出法:T. pallidum と共通抗原をもつ脂質抗原を用いるもので,serologic test for syphilis(STS)とよばれ,補体結合反応(緒方法),沈降反応(ガラス板法),間接凝集試験(梅毒凝集法)などがあり,スクリーニングで実施されるが生物学的偽陽性(biological false positive:BFP)があり,感染後4~6 週で陽性化し,治療により陰性化する.また臨床経過と相関して値が変動する.診断するうえで特異度は低いが感度は高く,スクリーニングに適し,治療後の治癒判定や経過観察にも有用である.ただし,第3 期以降では,治療によっても陰性化しないことがある.この場合は抗体価を定量しその低値固定で治癒と判定する.下記の値なら低値とみなす.
b:沈降反応(ガラス板法)≦8
c:間接凝集試験(梅毒凝集法)≦40
- ② T. pallidum 特異的抗体検出法:T. pallidum 血球凝集反応(T. pallidumhemagglutination assay:TPHA)テストや蛍光トレポネーマ抗体吸収試験(fluorescent treponema antibody absorption test:FTA-ABS テスト)などがある.STS より2~3 週遅れて陽性化し,治癒しても陰性化しない.TPHA の陽性化はFTA-ABS の陽性化よりもさらに1~2 週遅れる.これらは梅毒感染に特異的であり,BFP を呈することはほとんどない.
上記の①②を組み合わせて診断を行う(表4).
- ① STS 陽性例では梅毒感染ではないかを鑑別する.TPHA,FTA-ABS が陽性ならば梅毒感染の既往があることは間違いないが,治癒後なのか,活動性の感染なのかを鑑別する必要がある.
- ② STS は感染後3~6 週で陽性化するので,感染1カ月以内では血清反応は陰性である.必ず感染後1 カ月以上経過した時点で調べる必要がある..
- ③ TPHA はSTS に2~3 週遅れて感染後5~9 週で陽性化する.FTA-ABS はTPHA よりも1~2 週早く陽性化するが,陽性の意義はTPHAと同じなので必ずしも測定する必要はない.
- ④ 抗体価はいずれも感染して3~6 カ月後に最高値となり,治療により急速に低下する.STS は陰性化するが,TPHA,FTA-ABS は陰性化はせず低値が持続する.治療開始が第3 期以降ではSTS も陰性化せず低値が持続する.
- ⑤ BFP はSTS 陽性例の約1/4 に認められる.この場合3 法間で成績の不一致がみられたり,抗体価が低く出る傾向がある.自己抗体として抗カルジオリピン抗体が産生される疾患でみられる.
・BFP を示す疾患と発生頻度:Hansen 病(60%),進行した結核,肺炎,亜急性細菌性心内膜炎,鼠径リンパ肉芽腫症(20%),軟性下疳,猩紅熱,レプトスピラ症(10%),回帰熱(30%),鼠咬症(20%),マラリア(100%),発疹チフス(20%),トリパノソーマ症,麻疹(5%),水痘(5%),伝染性単核症,普通感冒,HIV 感染症,単純疱疹,SLE(20%),関節リウマチ(5%),妊娠(20~30%),悪性腫瘍,慢性肝疾患,麻薬中毒患者,多発性骨髄腫
6.トリコモナス症
[診断]
培養検査ないしは分泌物の顕微鏡検査でなされる.
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- 表4 梅毒感染の血清学的診断方法
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