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胸膜腫瘍

別名 tumors of the pleura

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臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. 胸膜腫瘍のなかで頻度が高いのはアスベスト曝露に起因する悪性胸膜中皮腫で,最も重要である.
  2. 悪性胸膜中皮腫はアスベスト曝露から30~40年の経過後に発症し,また低濃度曝露でも原因となるため,アスベスト曝露があれば労災で,曝露がなくても診断が確定すれば石綿健康被害救済法により給付を受けることができる.
  3. 悪性胸膜中皮腫は早期発見が難しく,早期発見例でも根治手術は困難で,シスプラチン+ペメトレキセド併用療法による姑息的化学療法が主体となる(従来,積極的に行われていた化学療法,胸膜肺全摘術,術後補助放射線療法による集学的治療の妥当性は MARS feasibil-ity study で限定的となったため,手術症例は減少している).
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検査

[アスベスト関連胸膜病変]
<悪性胸膜中皮腫>
  1. ②検査
    1. ① 胸部単純Xp:片側性胸水,凹凸不整な胸膜肥厚像,胸膜の腫瘤像などを呈する.
    2. ② 胸部CT:片側性胸水,凹凸不整を伴うびまん性胸膜肥厚像で,不整な結節・腫瘤を伴うことも多い.進行すると胸壁浸潤,縦隔浸潤,横隔膜浸潤などを呈することもある.早期の場合は胸膜プラークとの鑑別が困難な場合もあり,発生部位,凹凸不整像や左右差,厚みが5mm を超える,なども参考にする.一般的に,縦隔側の胸膜は非特異的な肥厚をきたすことが少ないとされ,また,縦隔側以外の壁側胸膜は胸壁の筋層と接しているために初期の病変は顕在化しにくいのに対して,縦隔側では縦隔脂肪織に接しており,軽微な変化が捉えやすい.そのため,縦隔側の胸膜肥厚を伴う場合は特に強く疑う必要がある.造影CTでは,中皮腫は造影効果を認めるのに対して胸膜プラークは認めないことも鑑別になる.
    3. ③ 胸部MRI:びまん性胸膜肥厚像で,T1強調画像では筋肉よりもやや高信号,T2強調画像では中等度の高信号を呈することが多い.また,CTよりも軟部組織の分解能が高いため,胸壁,胸内筋膜,横隔膜への局所浸潤や横隔膜脚を経た腹腔内への進展などの評価が行いやすい.
    4. ④ FDT-PET:リンパ節転移や遠隔転移の検索と,良性病変との鑑別にも有用で,感度,特異度はともに90%前後とされるが,塵肺症や陳旧性結核病変などのリンパ節腫大へも集積を認めることがあり,注意を要する.
    5. ⑤ 胸腔穿刺:胸水中ヒアルロン酸の上昇が特徴的で,100,000ng/mL以上がひとつの目安となる.胸水中ADA の上昇は結核性胸膜炎に特徴的とされるが,悪性疾患でも認められる場合があり,ADA 高値により悪性疾患を除外しないように注意を要する.細胞診が陰性である場合には反復して胸腔穿刺を行う事で正診率が向上するが,細胞診での確定診断は困難であり,組織型の確定など治療効果の予測を含めて,胸腔鏡下胸膜生検を行う必要がある.
    6. ⑥ 胸膜生検:局所麻酔下胸腔鏡(軟性鏡),全身麻酔下胸腔鏡による胸腔内の観察と,生検により正診率は90%程度まで向上する.病理診断は浸潤所見がわかるように脂肪組織や横紋筋を含むように深く,十分な大きさを採取することが重要である.HE染色に加えて免疫組織学的検討が必要で,陽性マーカーとしてカルレチニン,トロンボモジュリン,WT-1,D2-40など,陰性マーカーとしてCEA,TTF-1,Ber-EP4などがある.すべてを染色するのは煩雑なので,陽性抗体と陰性抗体を2 種類ずつ選択し,前者のいずれかが陰性,後者のいずれかが陽性の場合には別の抗体を検討するよう推奨されている.実際には,陽性マーカーとしてカルレチニンとD2-40,陰性マーカーとしてCEA とTTF-1を選択することが多い(日本肺癌学会:悪性胸膜中皮腫病理診断の手引き第1.0版, 2013 参照).
    7. ⑦ 採血:貧血,血小板増多,LDH 上昇は予後不良因子とされる.腫瘍マーカーとして確立されたものはないが,TPA(組織ポリペプチド抗原),SMRP可溶性メソテリン関連ペプチド),ヒアルロン酸,CYFRA が上昇することがある.CEA は中皮腫の陰性マーカーとして知られ,中皮腫患者で上昇することはなく,正常範囲のなかでも低値で抑制されているのが特徴的である.
[膿胸関連リンパ腫]
  1. ②検査
    1. ①採血:LDH,可溶性IL-2受容体の増加を認める.
    2. ②胸部単純Xp:慢性膿胸に伴う胸水に加えて,胸壁内へ浸潤する軟部陰影を認める.
    3. ③胸部CT:慢性膿胸の壁が肥厚するとともに,腫瘤形成,腫瘤の胸壁への浸潤など軟部組織陰影を認める.約60%に内部壊死を認め,それを反映して造影CT の造影効果は内部濃度が不均一であることが多い.
    4. ④胸部MRI:膿胸腔と腫瘍部の鑑別が可能とされ,造影CT が行えない症例では有用である.
    5. ⑤核医学検査(67Ga シンチグラフィー):PAL の90%以上で67Ga の集積を認め,膿胸部には集積せず,全身検索も行える.
    6. ⑥FDG-PET:67Ga シンチグラフィーに比べて感度・特異度ともに優れ,病期分類のみならず,治療効果判定にも有用である.
    7. ⑦エコーガイド下生検/CT ガイド下生検:約90%がB 細胞性大細胞型リンパ腫で,少数が末梢性T細胞リンパ腫などを呈する.

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