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パーキンソン病およびパーキンソンニズムを生じる疾患

別名 Parkinson disease, Parkinsonism

疾患スピード検索で表示している情報は、以下の書籍に基づきます。

臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. パーキンソン病は 10 万人当たり 150 人前後の有病率を示し,最も多い神経変性疾患である.高齢化とともに緩徐に増加している.病理学的には黒質線条体のドパミン神経の変性とαシヌクレインを主成分とする封入体であるレビー小体が神経細胞に蓄積する.原因は不明であり,治療は対症療法である.
  2. パーキンソン病診断の基本は,臨床経過と 4 大徴候(安静時振戦,筋強剛,無動,姿勢反射障害)などの神経学的所見によるパーキンソニズムの確認と,画像などによる除外診断である.
  3. パーキンソン病と鑑別上問題となる主な疾患は血管性パーキンソニズム,薬剤性パーキンソニズム,その他の変性疾患に伴うパーキンソニズムである.
  4. パーキンソン病の基本病態は黒質緻密部ドパミン神経細胞の変性によるドパミン欠乏であり,最も有効な治療は L-ドパ補充療法である.しかし,L-ドパ製剤の長期投与に伴うウェアリングオフをはじめとする運動合併症を遅らせる目的で,発症早期はドパミンアゴニストで開始することが望ましい.
  5. パーキンソン病の診療は「パーキンソン病治療ガイドライン 2011」1)に基づいて診療を進める.70~75 歳以上の高齢者か,認知症または精神症状を合併する場合には,L-ドパで治療を開始する.その他の場合は,ドパミンアゴニストで治療を開始するが,個々の患者の症状と生活上の事情に合わせて治療法を選択する(パーキンソン病治療ガイドライン 2011,医学書院 参照).
  6. パーキンソン病以外に,パーキンソニズムを生じる疾患は(表1)に示すように多数の疾患が存在する.この中で,特定疾患治療研究事業の対象になっている疾患は,パーキンソン病,多系統萎縮症,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,ウィルソン病,ゴーシェ病である.パーキンソン病の場合,Hoehn and Yahr 重症度分類(表2)をもちいて重症度の評価を行う.
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表1 パーキンソニズムを呈する疾患
表はPC版サイトをご覧ください
表2 Hoehn and Yahr の重症度分類
表はPC版サイトをご覧ください

検査

1.パーキンソン病
[検査]
 血液一般,生化学,髄液検査では本症に特異的な所見は認めない.
<画像検査>
 本症の診断は主に臨床症状,神経学的所見および臨床経過で行うが,画像検査は他のパーキンソニズムとの鑑別に役立つ.CT や MRI,脳血流 SPECT 検査では特異的な所見は認めない.CT とMRI で小脳や橋の萎縮がみられれば,多系統萎縮症(MSA-C)が疑われる.また,MRI で被殻の萎縮や T2 高信号があれば,多系統萎縮症(MSA-P)の可能性を考える.中脳被蓋の萎縮,中脳水道や四丘体槽の拡大があれば進行性核上性麻痺を示唆する.血管性パーキンソニズムでは,脳室周囲白質の広範な融合性の MRI Flair・T2 高信号や CT 低吸収域が重要な所見である.また,基底核,特に被殻や淡蒼球に多発性の小梗塞,小出血を認めることが多い.
 MIBG 心筋シンチグラフィーとドパミントランスポーターを用いた SPECT(ダットスキャン)は保険収載されており,鑑別診断に有用である.パーキンソン病では心臓交感神経節後線維が障害されるため, 123I-MIBG 心筋シンチで心臓への取り込みが比較的発症早期から低下する.ダットスキャンはドパミン神経終末を123I で標識したドパミントランスポーターで可視化することにより,ドパミン神経の障害を判定する.パーキンソン病と他の疾患との鑑別に有用である.また,本検査はレビー小体型認知症とアルツハイマー病などの他の認知症との鑑別にも有用である.

2.パーキンソニズムを生じる各種疾患
[血管性パーキンソニズム]
<検査>
一般検査には特異な所見はない.画像検査では,頭部CT,頭部 MRI にて基底核に多発性小梗塞を認めることが多い.また,頭部 MRI で皮質下白質に T2 高信号を示すびまん性の融合性虚血性変化を認めることも多い.

[進行性核上性麻痺(PSP)]
<検査>
 一般検査には異常を認めない.画像診断では中脳被蓋の萎縮(水平断での morning glory flower sign),四丘体槽や第三脳室の拡大を CT や MRI で認める. MRI 矢状断では「ハチドリのくちばし様」と形容される萎縮像(humming bird sign)を認めることがある.SPECT では前頭葉の血流低下がみられることが多い.MIBG 心筋シンチグラフィーは正常である.

[大脳皮質基底核変性症(CBD)]
<検査>
 一般的な検査には異常はない.画像検査では,頭部CT,頭部 MRI で,非対照的な大脳皮質の萎縮を認める.萎縮は中心前回,中心後回に強いことが多い.脳血流 SPECT で萎縮部位に一致して取り込み低下を認める.萎縮に先行して取り込みの低下をみる場合もある.
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