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股関節疾患

別名 diseases of the hip joint

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臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. 乳児健診で先天性股関節脱臼が疑われれば整形外科へ紹介する.
  2. 乳児期の発熱を伴う股関節痛であれば化膿性股関節炎を,幼児期の股関節痛であれば単純性股関節炎を考える.
  3. 学童期の股関節痛ではPerthes病と大腿骨頭すべり症を念頭に置く.これらの疾患が疑われれば整形外科へ紹介する.
  4. 比較的若年の股関節痛であれば臼蓋形成不全股を,中年期以降では変形性股関節症を念頭に置く.
  5. 多関節の障害があれば関節リウマチおよび膠原病に伴う股関節炎を考える.
  6. ステロイド使用歴やアルコール多飲歴があれば大腿骨頭壊死を疑う.
  7. 股関節疾患の症状として大腿部や膝の痛みを訴えることがある.
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小児期にみられる股関節疾患

①先天性股関節脱臼
  1. ②診断:股関節開排制限の有無,とくに左右差をみる.クリックサイン.股関節を開排しながら検者の指で大転子を軽く押したり,股関節を90° 屈曲して大腿骨を軸方向に軽く押し込んだとき,指にクリックを感じると陽性.単純Xp ではさまざまな診断法がある(日本小児整形外科学会教育研修委員会 編:小児整形外科テキスト. p.40, メジカルビュー, 2004 参照).股関節の適合性の指標としてCalvé 線やShenton 線が有名.超音波による診断法も普及しつつある.

②化膿性股関節炎
  1. ③診断:単純Xpでは関節液の貯留により,骨頭の外側化がみられる.超音波やMRI でも関節液の貯留がみられる.MRIでは関節周囲軟部組織の変化や骨の変化もみられる.採血検査で炎症反応のチェック,血液培養検査.関節液が貯留していれば,関節穿刺を行い細菌培養検査に提出する.

③単純性股関節炎
  1. ③診断:臨床経過から判断する.炎症により関節液が貯留していると,単純Xp で骨頭の軽度側方化がみられる.超音波やMRI で関節液の貯留がみられる.

④Perthes病
  1. ③診断:単純Xp は病期により多彩な所見がみられる.病初期では正面像で骨頭の軽度側方化,側面像で骨頭前方部に扁平化がみられる程度.

⑤大腿骨頭すべり症
  1. ③診断:股関節可動域は内旋が制限される.Drehmann 徴候,すなわち股関節を屈曲するにつれて患肢の外転・外旋がみられる.単純Xp で左右を比較する.正面像で骨端線の拡大や不整が,側面像で骨端部の後方すべりがみられる.

[股関節周囲の炎症性疾患]
①腸恥滑液包炎
②大転子部滑液包炎

[大腿骨頭壊死]
③診断
 特発性大腿骨頭壊死症の診断基準および病型分類を示す(厚生労働省特発性大腿骨頭壊死症調査研究班, 2001 参照).画像検査としては単純Xp,単純MRI,骨シンチグラムが行われる.

[変形性股関節症(股関節OA:osteoarthritis)]
③診断
 統一された診断基準はなく,臨床症状と画像所見により診断する.術前・術後の臨床評価には,日本整形外科学会股関節機能判定基準が広く用いられている.
  1. ①診察所見:股関節可動域制限(とくに内旋が制限される),患肢の短縮,股関節周囲の筋力低下や筋萎縮などがみられる.以下の所見は股関節疾患を示唆する.
    a:Trendelenburg 徴候:患肢片脚で起立して非荷重肢を持ち上げさせると,最大に持ち上がらず非荷重側の骨盤が下がってしまう.
    b:Patrick(パトリック)テスト:仰臥位で股関節を屈曲・外旋し,足部を反対側の大腿にのせて胡座をかいたような姿勢にして膝を下に押しつけると股関節痛が誘発される.
  2. ②画像所見
    a:単純Xp:股関節裂隙の狭小化や消失,骨棘形成,骨頭の扁平化,嚢胞形成,軟骨下骨の硬化像など多彩な変化がみられる.関節裂隙の狭小化は疼痛と関連するとされる(図3).また,臼蓋形成不全股の場合,CE(center-edge)角と疼痛は関連するとされ,CE 角が20° 以下だと臼蓋外縁におけるストレスが増えるとされる.Sharp 角やAHI(acetabular-head index)なども評価に用いられる(日本整形外科学会診療ガイドライン委員会, 変形性股関節症ガイドライン策定委員会 編:変形性股関節症診療ガイドライン. p.64, 南江堂, 2008 参照).日本人成人の平均値は,CE 角が男性30~39°,女性27~34°,Sharp 角が男性35~39°,女性27~34°,AHI は男性82~88%,女性80~89%.
    b:単純CT:骨の形態変化を把握するのに有用.術前の評価に適している.
    c:単純MRI:関節軟骨や関節唇の損傷,海綿骨の質的変化が描出される.

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図3 股関節のOAのXp所見
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