自己免疫性肝疾患
別名 | autoimmune liver disease |
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Clinical Chart
- 自己免疫性肝疾患には自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis:AIH)と原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis:PBC),さらに原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis:PSC)がある(IgG4関連閉塞性胆管炎はIgG4関連症候群として別項).AIHとPBCはいずれもわが国では中年以降の女性に好発する疾患で,2疾患合わせるとこの年齢階層の女性では,慢性肝疾患全体の5~10%を占めるコモンディジーズ.PSC含めいずれも特定疾患の対象症例であり,いわゆる難病指定を受けている.
- PSCは診断技能の向上で増加しているが,現時点ではまれな自己免疫性肝疾患で,男女比は約6:4で男性に多い.年齢分布は小児から30歳までが多い.
- AIH,PBCはともに症状としては黄疸で初発することが多く,ウイルス肝炎と異なり血沈が亢進していることが診断の契機になる.かつては予後不良の疾患であったが,それぞれ有効な内服療法が見出され,予後が改善した.
- わが国のPSCでも,近年はIBD〔inflammatory bowel disease;とくに潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)〕の合併率が高まってきた(約34%).
- AIHとPBCの診断には特異度の高い自己抗体が存在するが,PSCには特異度の高い自己抗体は存在せず,直接胆管造影〔PTC(percutaneous transhepatic cholangiography),ERC(endoscopic retrograde cholangiography)など〕が診断の鍵を握る.
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診断
1.自己免疫性肝炎(AIH)
[診断]
[診断]
- ①厚労省研究班による診断指針にわが国におけるAIH の診断基準が示されており,この診断基準を,国際自己免疫性肺炎研究グループ(International Autoimmune Hepatitis Group:IAIHG)によるスコアリングシステムを参考にして診断する(厚生労働省「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班 自己免疫性肝炎分科会,Alvarez F, et al(戸田剛太郎訳):International Autoimmune Hepatitis Group Report:review of criteria for diagnosis of autoimmune hepatitis. J Hepatol 31:929-938, 1999,Hepatology 48:169-176, 2008,厚生労働省研究班:自己免疫性肝炎(AIH)診療ガイドライン 2013 参照).
- ②AIH を疑うきっかけになるものは,トランスアミナーゼ異常があるにもかかわらず,肝炎ウイルスマーカーが陰性であること,自己抗体が陽性であること,慢性炎症のmarker である赤沈が亢進していることである.
- ③急性肝炎様に発症することがあり,その場合には診断基準やscoring system の基準を満たさないことが少なくない.急性肝不全を呈することもありうるため,対処に難渋する場合には肝疾患専門医療機関に紹介する.
- ④他の自己免疫性疾患の合併に留意する.頻度の高いものは橋本病,Sjögren 症候群,関節リウマチで,それぞれ10~20%の症例に合併する.
- ①診断基準があるので,これに従う(厚生労働省難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班 原発性胆汁性肝硬変分科会 参照).PBC 診断上鍵となるのは 慢性の肝内胆汁うっ滞,AMA 陽性所見と肝組織像での特徴的所見〔慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC),肉芽腫と胆管消失〕の存在である.
- ②肝生検だけではsampling error の問題があり,従来クサビ状生検など外科的生検が推奨されてきたが,わが国の厚労省難治性肝胆道疾患研究班の成果の一つとして病理組織学的分類にNakanuma 分類を採択すると病変の不均一な分布によるsampling error のrisk が抑えられる(表7,中沼安二・他, 2006, 厚労科研班会議, 2010,Hiramatsu K, et al:Histopathology 49:466-478, 2006,Nakanuma Y, et al:Pathol Int 60:167-174, 2010 参照).また,腹腔鏡を併用すると特徴的な所見(赤色パッチ,粗大な起伏状変化)により診断能が向上する.
- ③抗ミトコンドリア抗体(AMA)は本疾患の標識自己抗体である.陽性率は90%を超すが注意点がある.
- ④瘙痒感を含めまったく自覚症状を欠く無症候性PBC と症状のある症候性PBC に分類するのが一般的である.無症候性または瘙痒感のみの症候性PBC は10 年を経ても,各々90,80%の症例が組織学的進展を認めない.
- ①2015年3月時点で確立されたとは言い難いが,わが国の診断基準として厚生労働省「難治性肝胆道疾患に関する調査研究班」坪内班(2012)のものがある.鑑別疾患として重要なIgG4RSC との胆道造影所見の差についてはIgG4RSC のガイドラインに図示されている(図3).
AASLD のガイドライン(Chapman R, et al:Hepatology 51:660-678, 2010 参照),EASL のガイドラインでも,血液生化学検査で慢性胆汁うっ滞性の存在と,MRCP やERC などの胆道造影所見が重視される基準となっている.診断基準のゴールドスタンダードは幾度も改訂されてきたMayo Clinic のものである(Lindor, Mayo Clinic, 2013 参照,表18).
- ②直接胆道造影所見(図3)
曲型的な胆道像は肝内および肝外胆管のびまん性狭窄(multifocal structuring)とビーズ状所見(beaded appearance)である.- ①ビーズ状所見:短い狭窄や輪状狭窄(annular stricture)と正常部が交互にみられる所見.
- ②帯状狭窄(band-like stricture):非常に短い狭窄帯.欧米では1/5 にみられるという.
- ③憩室様変化(diverticulum-like outpouchings):欧米では1/4 程度にみられる.
- ④枯れ枝状変化(pruned tree sign):肝内胆管が数・サイズとも減少する.肝内胆管に変化のある症例ではよくみられる.
- ⑤shaggy sign:肝外胆管の胆管壁にみられる毛羽立ち様の壁不整所見.典型的症例では頻度が高い.
- ①ビーズ状所見:短い狭窄や輪状狭窄(annular stricture)と正常部が交互にみられる所見.
- ③組織学的所見
肝生検で,原発性硬化性胆管炎に特徴的と考えられる所見は,肝内小胆管にみられるものである.一方,原発性硬化性胆管炎を他の胆汁うっ滞性慢性肝疾患と分け隔てる主たる病変部位は,肝内胆管でも肉眼的に病変の認識が可能な大型胆管である.しかし欧米ではsmall bile duct PSC(胆管造影で異常を認められず,肝生検でのみ診断されるPSC)の存在が知られており,AASLD・EASL 両ガイドラインでも肝生検が強く推奨されている.わが国はPSC そのものが稀少疾患であり,胆管像で診断可能なものが大部分(≒95%)だが,肝生検の併施が望ましい.
- ④血液検査
- ①生化学検査:ALP などの胆道系酵素の上昇を認める.Mayo Clinic 診断基準では「ALP が正常上限の2~3 倍以上を6 カ月」示すことが必要だが,診断確定している症例でもALP がさほど上昇しない例もまれではない.
- ②自己抗体:抗核抗体は20~30%に陽性.抗ミトコンドリア抗体は陰性.抗平滑筋抗体を含め,これらの自己抗体陽性例は,むしろAIH やPBC を除外するために肝生検が必要になる.さらにIgGサブクラス4.IgG4RSC を除外するために必須である.
- ③ CEA,CA19-9:これらの腫瘍マーカーは,a:PSC の診断確定時,鑑別を要する胆道系悪性腫瘍の除外目的と,b:PSC と診断したのち,合併率の高い胆管癌,胆嚢癌(さらにIBD 合併例では結腸癌)のスクリーニング目的の検査として重要である.
- ①生化学検査:ALP などの胆道系酵素の上昇を認める.Mayo Clinic 診断基準では「ALP が正常上限の2~3 倍以上を6 カ月」示すことが必要だが,診断確定している症例でもALP がさほど上昇しない例もまれではない.
2.原発性胆汁性肝硬変(PBC)
[診断]
3.原発性硬化性胆管炎(PSC)
[診断]
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- 表7 PBCの組織病気
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- 表18 原発性硬化性胆管炎と鑑別を要する疾患
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