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前眼部疾患(感染性結膜炎ほか)

別名 anterior ocular segment

疾患スピード検索で表示している情報は、以下の書籍に基づきます。

臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. 前眼部は視診・触診で直接みることのできる部位なので診断も容易である.解剖学的位置関係をしっかりと把握し,病変部位を判断することが大切である.
  2. 前眼部疾患では,充血,眼脂,視力低下,眼痛,流涙など主訴も多彩である.異なる病因でも同様な症状を生じる場合が多いので,しっかり鑑別する必要がある.
  3. 感染症では,比較的予後のよい結膜感染症と,初期治療が予後を左右する角膜感染症を混同しないこと.
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種類

1.眼瞼・涙器の疾患
1)内反症と睫毛乱生
[種類]
①睫毛内反症と眼瞼内反症
  1. ①睫毛内反(小児):先天的に睫毛が角膜のほうへ向かって生えている状態.下眼瞼内側部に多い.
    1. ②目瞼内反(高齢者):目瞼皮膚弛緩などにより目瞼が内側に彎曲し睫毛が角膜に接触する状態
②睫毛乱生:睫毛の何本かが角膜に向かって生えている状態.多くは熱傷後などの瘢痕萎縮が原因.

2)その他の眼瞼疾患
[炎症]
①麦粒腫
②霰粒腫
③眼瞼縁炎,眼瞼炎,眼瞼皮膚炎
[眼瞼下垂]
[Quincke 浮腫]
[眼瞼腫瘍]
[眼瞼痙攣]

3)涙道の病気
[涙嚢炎・涙小管炎]
[高齢者の鼻涙管閉塞]
[先天性鼻涙管閉塞]

2.結膜・角膜の疾患
1)感染性結膜炎
[細菌性とウイルス性結膜炎の鑑別]
①細菌性結膜炎の起炎菌は肺炎球菌,ブドウ球菌,レンサ球菌など.
②ウイルス性結膜炎は,流行性角結膜炎(EKC,アデノウイルス8・19型),咽頭結膜熱(PCF,アデノウイルス3・7型),急性出血性結膜炎(AHC,エンテロウイルス70型など),そのほか麻疹ウイルス,風疹ウイルス,ヘルペスウイルス,による結膜炎など.
③細菌性は粘液膿性または膿性の眼脂が特徴.ウイルス性は,眼瞼の腫張・耳前リンパ節の腫張・結膜濾胞・漿液性の眼脂などが特徴.
④ウイルス性のほうが感染性が強いので注意が必要.
⑤眼脂塗抹標本中に,細菌性は多核球や起炎菌,ウイルス性は単核球が認められる.
⑥確定診断は,起炎菌の培養同定,ELISA法による抗原の検出やPCR法によるウイルスのDNAの検出など.アデノウイルスの簡易検査器具(アデノチェック®)も有用である.

2)結膜のアレルギー性疾患
[診断]
①問診が重要.症状発現の季節性,地域性,職業,住宅環境など.アトピー性疾患の有無,家族歴など.
②掻痒感を伴う充血,眼脂,流涙が特徴.春期カタルでは,異物感や眼痛,羞明が加わる.
③急性期には,眼球結膜の浮腫,眼瞼結膜の混濁・濾胞形成など.春期カタルでは特徴的な石垣状乳頭増殖を上眼瞼結膜に認める.結膜フリクテンは,球結膜に充血を伴った隆起性病変を呈する.
④特徴的所見としては,結膜分泌物中に好酸球が多く存在する.

3)角膜感染症
[種類]
①黄色ブドウ球菌,肺炎球菌によるもの
 やや黄色に混濁した楕円形の病変.
②緑膿菌によるもの
 辺縁が不整で,広範囲に壊死を生ずる.輪状膿瘍.角膜穿孔をきたす可能性がある.
③真菌によるもの
 辺縁が不整で角膜表面より扁平に盛り上がる病変.潰瘍を取り囲む輪状の混濁がある.
④アカントアメーバによるもの
 樹枝状や円盤状の潰瘍形成.輪状潰瘍,輪状浸潤.

3.結膜炎の学校内感染
 昔から学校内感染として重視されてきたのはトラコーマであったが,現在では問題となることはない.現在,学校内の伝染性眼疾患としての主なものは,ウイルス性結膜炎である.現段階では,病因ウイルスそのものに対する治療薬剤が確立していないことから,その対策は感染予防と流行の防止が主体となっている.細菌性結膜炎は,種々の抗菌薬により治療が可能であり,伝染性眼疾患として問題となることは少ない.

4.ヘルペスウイルスによる眼感染症
1)眼瞼炎
<種類>
①単純性疱疹
  1. ①HSVによる初感染,あるいは初感染後にウイルスが神経節内に持続潜伏し,あるとき再活性化することによって発症する感染症
    1. ②初感染は1~5歳.ほとんどが不顕性感染.最近は成人の初感染も多い.
      1. ③眼瞼周囲の皮疹を生じる.再発性の場合は結膜・角膜などに合併症を伴うことが多い.
②帯状疱疹
  1. ①YZVによる初感染である水痘罹患後,神経節に潜伏していたウイルスが再活性化し発症する感染症
    1. ②誘因は,加齢,悪性腫瘍,糖尿病,膠原病,ステロイドや免疫抑制剤の長期投与など
      1. ③眼部帯状疱疹は,三叉神経の第1枝の支配領域に発生する.
        1. ④角膜腫瘍,ぶどう膜炎,強膜炎,網膜炎などを合併することも多い.
          1. ⑤鼻背部に皮疹が存在する場合は,眼疾患の合併に注意する(Hutchinsonの法則)

2)結膜炎
<種類>
①眼部帯状疱疹などに合併する結膜炎を除いては,ヘルペスウイルスによる結膜炎は単純ヘルペスによるものが主である.
②単純ヘルペス性結膜炎は初感染に多く小児の発症がほとんどであるが,最近は成人の初感染例が増加している.
③小児のHSV-1による結膜炎は急性濾胞性結膜炎として発症する.アデノウイルスによる結膜炎との鑑別が必要だが,HSV-1は通常片眼性で充血の程度も軽い.小児の片眼性の結膜炎をみた場合は,必ず皮疹が伴っていないかを確認する.
④成人のHSV-1初感染における結膜炎は,結膜に樹枝状ないし地図上潰瘍を呈する.
⑤皮疹を伴う結膜炎は通常VZVによるものであるが,HSV-1が帯状単純疱疹を起こした場合は鑑別が困難となる.この場合VZVでは神経痛を伴い,HSV-1では伴わないことが重要な鑑別点となる.
⑥HSV-2による新生児ヘルペスは全身症状に加えて結膜炎を呈する.分娩時の産道感染による.粘液膿性眼脂を生ずることが鑑別点となる.

3)角膜炎
<分類・症状>
①上皮型
 樹枝状角膜炎,地図状角膜炎.ウイルスが角膜上皮で活発に増殖している状態.
 自覚的には,異物感,視力低下,流涙,羞明など.角膜知覚が低下するため,訴えが軽いこともある.
②実質型
 円盤状角膜炎,壊死性角膜炎.角膜実質内に集積したウイルス抗原に対して,遅延性アレルギー反応を生じたもの.
③内皮型
 角膜輪部炎.角膜内皮不全のために,病変部の周囲に浮腫を生じる.
④その他
 水痘帯状ヘルペス(VZV)角膜炎は眼神経支配領域の眼部帯状疱疹に合併して,結膜病変,角膜病変が生じる.角膜病変は,上皮型が多く点状角膜炎や偽樹枝状角膜炎として現れる.

4)その他のヘルペス眼瞼感染症
①強膜炎・上強膜炎
②ぶどう膜炎

5.ドライアイ
[種類]
全身疾患に関連のあるドライアイと眼疾患に伴うドライアイに分類される.
①全身疾患に関連したドライアイ
 ①Sjogren症候群,PSS,SLEなどの自己免疫疾患
 ②加齢
 ③糖尿病,神経麻痺,内服薬の副作用
②眼疾患に伴うドライアイ
 ①アレルギー性結膜炎などの疾患
 ②瞬目不全
 ③涙液の保持機能不全
 ④コンタクトレンズ装用に伴うもの
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