C型慢性肝炎
別名 | chronic hepatitis C |
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690)
Clinical Chart
- 慢性肝炎とは,肝細胞の壊死炎症反応が少なくとも6カ月以上続く状態を指し,C型肝炎ウイルスの持続性感染により起こるものをC型慢性肝炎という.数年~数十年のスパンで緩徐に進行し,他臓器に重大な障害がなければ肝細胞癌・肝不全などの肝臓関連死で約90%落命する.
- C型慢性肝炎は,たとえALTが正常範囲であっても進行性の疾患であり,高率に肝細胞癌が出現する予後不良の疾患である.したがってC型慢性肝炎は全症例が治療対象となる.
- C型慢性肝炎の治療の第1は根本療法である抗ウイルス療法であり,それが不可能なとき,次善の策として肝炎の鎮静化を目標とする肝庇護療法を行う.
- C型慢性肝炎の抗ウイルス療法の結果を左右する因子には,HCV遺伝子型,血中HCV量,肝炎進展度(特に肝硬変に至っているか否か)と年齢がある.IFNを含むレジメンで治療する際に治療効果を左右する因子としてIL-28B SNP型(国内ではrs8099917)が重要であるが,DAAs(direct acting antivirals)製剤の組み合わせで行われる非IFNレジメンでは影響しない.
- 逆に経口DAAs治療の時代には,各々の製剤で増殖を抑えられない耐性ウイルスが存在するか否かが治療の成否を大きく左右する.
- C型慢性肝炎の抗ウイルス療法は,2015年12月現在革新的な進歩の途上であり,現在可能な治療法がよいのか,近未来に可能となる治療法がよいのか,一人ひとりの患者ごとに吟味する必要がある.
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診断の手順
- ①問診
飲酒歴,輸血歴,肝疾患家族歴,経静脈的薬剤濫用歴,刺青歴.肝疾患歴.以上より,いつごろ,どのようなルートでウイルス感染があったかを推定する. - ②C型肝炎ウイルスマーカーの種類とその意義(図1).
- ③血算・血液生化学,AFP,PIVKA-Ⅱ
1~2 カ月に 1 度フォローする.血小板数は,肝組織像をよく反映し,重要である〔≧20×104:F0~1, 15~18×104:門脈域の中等度線維性拡大(F2), 12~15×104:bridging fibrosis を伴う高度な線維化(F3),≦8~12×104:肝硬変(F4).重要なことは,ALT が正常でも肝炎の存在は否定できないことである. - ④腹部エコー,CT,MRI
- ①初診時の検査では,胆道疾患(閉塞性黄疸)の除外が目的である.
- ②慢性肝炎と診断後は肝細胞癌の早期発見が目的である.エコーは最低年 2 回,CT,MRI は年 1 回以上施行する必要がある.わが国の肝細胞癌の予後が世界で最もよい(5 年生存率≧60%.米国は6%)理由は,高リスク群を囲い込み,効率よく早期診断しているからである(Kudo M, et al:Liver Cancer 4:39-50, 2015 参照).肝硬変に近い段階のケースでは,より頻度を高める必要がある.
- ⑤凝固系(フィブリノーゲン,PT,PT-INR)
PT 活性<50%または INR>1.5 は肝予備能不良を意味する.肝移植を念頭に置く.特に急性増悪の場合は PT 活性<40%未満であれば,劇症化も少しは考慮に入れる必要がある. - ⑥肝生検(腹腔鏡)(犬山シンポジウム, 1995 参照,島田宣浩・他:Gastrointest Endosc 35:267, 1993 参照)
- ①経過中に一度は施行しておくことが望ましい.
- ②組織学的病期(線維化の程度に比例)により,「肝細胞癌への距離」が異なるため,肝生検・腹腔鏡の情報は患者管理上重要である.1 年間の肝癌発症率は,小葉改築を伴わない慢性肝炎(F0~F1):0.2~0.5%,小葉改築を伴う慢性肝炎(F3):2~5%と,それぞれ約 2~10 倍異なる.
- ③近年,超音波を用いて弾性度を計測することにより肝線維化が推定できるようになり(Fibros-canTMなど),非侵襲的に肝炎の進展度を測定できるようになってきた.ただ,F2 と F3 や F3 とF4(=肝硬変)の鑑別などが正確にできるまでには至っていない.
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