可溶性L-セレクチン
可溶性L-セレクチン
略称 | sCD62L |
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別名 | 可溶性CD62L,可溶性LECAM-1,可溶性白血球内皮細胞接着分子-1 |
臨床的意義
- L-セレクチンは,リガンドとの接着やインターロイキン-8などのサイトカイン,補体(C5a)や細菌産物などによる刺激によってきわめて容易に遊離する(sheddingとよぶ).循環血中に検出される可溶性L-セレクチンは,これらの刺激によって白血球細胞表面に発現したものが遊離したもので,細胞外成分の大部分を有する.したがって可溶性L-セレクチンは,白血球と血管内皮細胞との接着と組織内への浸潤が高頻度に認められる病態や白血球が活性化された病態,すなわち自己免疫,感染,移植拒絶,アレルギーなどを契機にもたらされる炎症性病態の際に循環血中に検出される.
- なお,可溶性L-セレクチンは白血球と内皮細胞との接着を競合的に阻害して,生体自身が本来有する抗炎症性作用として機能するものと考えられている.
- 循環血中の可溶性L-セレクチンを測定することによって,L-セレクチンが接着や活性化刺激によって白血球からどれほど遊離したか,すなわち末梢血における白血球と血管内皮細胞との接着や白血球の炎症部への浸潤の程度,および組織内における活性化白血球の細胞数の増加,さらには白血病細胞の増加を推測できる.
- 本検査は,上記の各種炎症性疾患や白血病の活動性や程度の推移,また治療効果を知りたいときに応用できる.
- またCRP,赤沈,白血球数などの一般的な炎症マーカーで十分な情報が得られない際に代用できる可能性がある.
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基準値・異常値
- 基準範囲
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347~1,310ng/ml
変動要因 - 高値
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移植拒絶、 関節リウマチ、 急性髄膜炎(髄液)、 血管炎症候群、 成人呼吸促迫症候群(ARDS)、 全身性炎症反応症候群(SIRS)、 脳脊髄炎(髄液)、 敗血症、 慢性リンパ球性白血病、 慢性骨髄性白血病
- 次に必要な検査
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基本的には炎症性疾患や白血病の活動性の指標と考えられ,経過を追って病態の進行の程度や治療の効果をみることが主目的である.また,一般的な炎症マーカーや他の可溶性接着分子などと比較検討することが肝要である.
- 変動要因
- マウス抗体を用いるEIAであるので,抗体療法を受けて生体内に抗マウス抗体を有する患者では,異常高値または低値を呈する.
( 田中良哉 )
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