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嫌気培養

嫌気培養

臨床的意義

以下の所見が認められる場合は嫌気性菌感染症が疑われるので,嫌気培養を行う.①粘膜およびこれに隣接した材料,②悪臭やガス,ドルーゼを認める,③アミノグリコシド系薬やキノロン系薬に不応.特に腹腔内感染,婦人生殖器とその付属器炎,各種膿瘍,創傷やガス壊疽,誤嚥性肺炎などは,嫌気性菌が関与する代表的な疾患である.また,抗菌薬投与中の患者に発症する偽膜性大腸炎では,Clostridium difficileが関与する.
・嫌気性菌感染症とその原因菌種は,塗抹検査所見から推定することができる.①多形性グラム陰性桿菌:Fusobacterium necrophorum,②紡錘菌:Fusobacterium nucleatumMobiluncus spp.,③有芽胞菌:Clostridium spp.,④木の枝状分枝のグラム陽性桿菌:Actinomyces spp.,⑤その他:PropionibacteriumはX,Y状グラム陽性桿菌,Finegoldia magnaは大型のグラム陽性ブドウ状球菌,Micromonas microsは極小グラム陽性連鎖球菌などである.なお,嫌気性菌感染症では種々の菌種が多数混在して観察されることが多い(表6-5).
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基準値・異常値

基準範囲
(記載せず)
変動要因
陽性

ボツリヌス症、  悪性腫瘍、  偽膜性大腸炎、  血液疾患、  誤嚥性肺炎、  食中毒、  膿瘍、  破傷風

【血液からの嫌気性菌検出】
血液から嫌気性グラム陰性桿菌(Bacteroides fragilis group,Fusobacteriumなど)が検出された患者は,悪性腫瘍や血液疾患などの易感染状態である場合が多く,予後が悪いことが知られている.Propionibacteriumが検出された場合は,皮膚由来の汚染であることが多い.
Clostridium tetaniClostridium botulinumの検出】
前者は破傷風,後者はボツリヌス症(創部感染,食中毒)の起因菌である.これらが疑われた場合には,ただちに抗血清を投与する.
【その他の重症感染症】
偽膜性大腸炎,誤嚥性肺炎,各種膿瘍,ガス壊疽なども嫌気性菌が関与する.
【多剤耐性B.fragilis group】
近年,本菌群においてメトロニダゾール耐性株,メタロβ-ラクタマーゼ産生(カルバペネム耐性)株などが報告されている.

次に必要な検査
今後の検査の進め方
  • 嫌気培養にて発育した集落が真の嫌気性菌(偏性嫌気性菌)か否かを確認する.得られた集落を2つの培地に純培養し,それぞれ嫌気培養,好気培養する.嫌気培養でのみ発育した菌種が偏性嫌気性菌である.嫌気性菌は菌種同定し,必要に応じて薬剤感受性検査(日本化学療法学会標準法に準じた微量液体希釈法.ディスク拡散法は不可)を実施する.嫌気性菌検査は総じて4日以上の日数を要するので,得られた情報は迅速に臨床へ報告するよう心がける.
変動要因
「嫌気性菌感染症が疑われるが菌が検出できない」「塗抹検査で観察された菌が発育しない」という場合,以下の状況が考えられる.
  1. 検体採取・保存の不備:嫌気性菌は酸素の存在下では容易に死滅するので,検体は専用容器に採取するか,ただちに嫌気培養を行う.また,大量に採取できる場合は,容器の死腔(空気部分)をなくして一杯に採る.
  2. 発育の遅い菌種の存在:嫌気性菌は総じて発育が遅い.特にMobiluncusBiophilaActinomycesは5日以上の培養日数が必要である.
( 中村文子 )
臨床検査項目辞典

「最新 臨床検査項目辞典」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部の項目を抜粋のうえ当社が転載しているものです。全項目が掲載されている書籍版については、医歯薬出版株式会社にお問合わせください。転載情報の著作権は医歯薬出版株式会社に帰属します。

「最新 臨床検査項目辞典」
監修:櫻林郁之介・熊坂一成
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, inc., 2008.

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