抗風疹ウイルス抗体
抗風疹ウイルス抗体
別名 | 風疹ウイルス抗体 |
---|
臨床的意義
- 風疹ウイルスはTogavirus科Rubivirus属に属する直径60~70nmの一本鎖RNAウイルスで,エンベロープを有する.感染から14~21日(平均16~18日)の潜伏期間の後,発熱,発疹,リンパ節腫脹(ことに耳介後部,後頭部,頸部)が出現するが,発熱は風疹患者の約半数にみられる程度で,3徴候のいずれかを欠くものについての臨床診断は困難である.確定診断のために血清診断を要する.そのほかに血小板減少性紫斑病,急性脳症など風疹の合併症が認められたときに測定する.
- 風疹の最大の問題は,妊娠前半期の妊婦の初感染により,先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)が高率に出現することにある.このため妊婦の抗体検査やTORCH症候群では風疹の血清学的診断は必須の検査である.
- 妊婦における風疹の確定診断は,CRSを予想するうえで大変重要であり,ペア血清で測定することを原則とし,HI抗体とEIAによるIgM抗体を行うことが望ましい.風疹HI抗体が256倍(施設によっては512倍)の妊婦は近々の感染を疑い,再検査ないし,EIA-IgM抗体を測定する.この際の初感染はHI抗体価の陽転化ないし有意な増加とIgM抗体の両方で確認できるが,再感染ではHIによる4倍以上の増加のみで,一般にIgM抗体は陰性である.再感染でもCRSを起こすことがある.また,無症候性再感染で風疹との接触歴が不明である場合に感染時期を同定することは至難である.
詳細を見る
基準値・異常値
- 基準範囲
-
陰性
- 風疹感染の診断はHIで急性期と回復期の抗体価で4倍以上の上昇により診断する.最近ではEIAが使われるようになり,急性期で特異的IgM抗体が検出されれば,単一血清での診断も可能である.
- 抗体の判定は,HIでは血清で8倍未満を陰性,髄液で1倍未満を陰性,CFでは血清で4倍未満を陰性,髄液で1倍未満を陰性とする.
- 特異IgG抗体(EIA)では10IU/ml未満を陰性,10~15IU/mlを判定保留,15IU/ml以上を陽性とするものや,EIA価で4
- 異常値を呈する場合
-
- 次に必要な検査
-
今後の検査の進め方
- 母親が顕性感染した妊娠月別のCRSの発生頻度は,妊娠1ヵ月で50%以上,2ヵ月で35%,3ヵ月で18%,4ヵ月で8%程度である.成人でも15%程度の不顕性感染があるので,母親が無症状であってもCRSは発生しうる.
- CRSの診断として病原体である風疹ウイルスの検出は,ウイルス分離よりもRT-PCRによるウイルス遺伝子の検出が感度が高い.CRS患児からは,出生後6ヵ月くらいまでは高頻度にウイルス遺伝子が検出できる.検体として検出率の高い順に水晶体,脳脊髄液,咽頭拭い液,末梢血,尿などである.
- IgM抗体は胎盤通過をしないので,臍帯血や患児血からの風疹IgM抗体の検出が確定診断として用いられる.また,胎児が感染したか否かは,胎盤絨毛,臍帯血や羊水などの胎児由来組織中に遺伝子を検出することでも診断できる.
- 母親が発疹を生じても胎児まで感染が及ぶのは約1/3であり,またその感染胎児の約1/3がCRSとなる.
( 河島尚志 )
「最新 臨床検査項目辞典」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部の項目を抜粋のうえ当社が転載しているものです。全項目が掲載されている書籍版については、医歯薬出版株式会社にお問合わせください。転載情報の著作権は医歯薬出版株式会社に帰属します。