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フォンウィルブランド因子マルチマー解析

フォンウィルブランド因子マルチマー解析

別名 vWFのマルチメリック成分

臨床的意義

  • 活性の高い高分子マルチマーが多くなると,血小板凝集をきたし,微小血栓により溶血や臓器障害をきたし,血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)を引き起こす.ADAMTS13の先天性の欠損症は常染色体劣性遺伝のUpshow-Schuman症候群であり,後天性TTPでは主としてADAMTS13に対するインヒビターの産生により起こる.
  • 慢性骨髄性白血病(CML),本態性血小板血症(ET)などの血小板増多症では高分子マルチマーが消費性に減少する.
  • フォンウィルブランド病(vWD)ではvWFの質的異常や消費の異常によりマルチマーパターンが異常をきたすためvWDが分類できる.
  • 1型vWD:常染色体優性遺伝でvWFの量的異常であり,すべてのマルチマーが5~30%に減少しているがマルチマーパターンは正常である.vWF:Ag,vWF:RCo共に低下,リストセチン凝集能(RIPA)低下がみられる.vWDの70%程度を占める.
  • 2型vWD:vWFの質的異常であり,以下のように亜分類されている.
  • 2A型:常染色体優性遺伝でマルチマーパターンにて高分子マルチマーの欠損がみられる.vWDでは1型に次いで頻度が高く10~15%程度である.第Ⅷ因子活性,vWF:Ag,vWF:RCoは低下し,RIPA低下がみられる.
  • 2B型:常染色体優性遺伝でvWFと血小板の親和性が亢進していることによって,高分子マルチマーの欠乏や,UL-vWFがみられることもある.vWDの中の頻度としては約5%である.第Ⅷ因子活性,vWF:Ag,vWF:RCoは正常または低下し,RIPAは亢進する.
  • 2M型:頻度はまれである.常染色体優性遺伝でマルチマーパターンは正常であり,高分子マルチマーは存在する.機能異常により第Ⅷ因子活性,vWF:Agは正常または低下しており,vWF:RCoは低下し,RIPA低下がみられる.
  • 2N型:頻度はまれである.常染色体劣性遺伝で第Ⅷ因子との親和性が低下している.マルチマーパターンは正常であり,高分子マルチマーは存在する.第Ⅷ因子活性は低下,vWF:Agは正常または低下しており,vWF:RCoは低下し,RIPA低下がみられる.
  • 3型vWD:常染色体劣性遺伝でvWFの完全欠損である.vWDの中の頻度としては約5%である.第Ⅷ因子活性,vWF:Ag,vWF:RCo,RIPAはいずれも著減あるいは欠如がみられる.
  • 血小板型:頻度はまれで常染色体優性遺伝でvWFの異常はなく,pseudo-vWDとよばれる.第Ⅷ因子活性,vWF:Ag,vWF:RCoは正常または低下しており,RIPAの亢進がみられる.血小板膜上のGPⅠbの異常でvWFとの親和性が亢進し,マルチマーパターンにて高分子マルチマーの減少がみられる.
  • vWDの出血時の治療はDDAVP投与が有効である場合もあるが,大手術時や出血が持続する場合はvWF含有の第Ⅷ因子製剤を用いる.ただしDDAVPは2B型と血小板型では血小板凝集を惹起するため禁忌であり,3型では無効である.
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基準値・異常値

基準範囲
正常パターン
変動要因
異常値を呈する場合

フォンウィルブランド病(vWD)2型、  血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、  慢性骨髄性白血病(CML)や本態性血小板血症(ET)などの血小板増多症

フォンウィルブランド病(vWD)2型,血栓性血小板減少性紫斑病(TTP),慢性骨髄性白血病(CML)や本態性血小板血症(ET)などの血小板増多症

変動要因
  • 採取法(採血困難や採取後の検体の保管)のチェックが必要である.採血困難な場合はルート内やシリンジ内で凝固系が活性化され,その結果消費されて異常を示す.
  • 薬剤の投与歴なども考慮に入れる.
( 和田英夫,松本剛史 )
臨床検査項目辞典

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「最新 臨床検査項目辞典」
監修:櫻林郁之介・熊坂一成
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, inc., 2008.

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