ヘモグロビン分画
ヘモグロビン分画
臨床的意義
- 遺伝性疾患を疑うときや低色素性貧血(MCH低下)の鑑別診断として,異常Hbのスクリーニング目的やHbA2の定量目的で検査する.
- サラセミア症候群の多くが,貧血の程度は軽度で,小球性低色素性を呈するため,鉄欠乏性貧血と間違われやすい.
- わが国においては80%がβ-サラセミアのヘテロ接合体である(HbF:約3~8%,HbA2:4~8%).異常β遺伝子のホモ接合体である重症型になるとHbFが60%以上を占める.δβ-サラセミアにおいてもHbFの増加を認めるが,軽症型のα-サラセミアにおいては正常範囲内で,HbA2が減少する.
- 異常Hbは,α鎖または非α鎖のアミノ酸配列の異常で起こる.わが国における頻度は約3,000人に1人であり,溶血性貧血やチアノーゼなどの症状を呈する異常Hb症はそのうちの約30%である.
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基準値・異常値
- 基準範囲
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HbA:HbA2:HbF=97:2.5:0.5
変動要因 - 異常値を呈する場合
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HbH症、 α-サラセミア、 β-サラセミア、 δβ-サラセミア、 δ-サラセミア、 巨赤芽球性貧血、 骨髄線維症、 鉄芽球性貧血、 鉄欠乏性貧血
- 異常値を呈する場合
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- 次に必要な検査
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異常Hb症に伴う溶血現象の有無について,血清ビリルビン,ハプトグロビン,クームス試験,AST,LDを行う.小球性低色素性貧血ついで鉄代謝の確認をする.サラセミア症候群を疑う場合,Hb分画成分(HbF,HbA2)の定量検査を行う.また異常Hb症が疑われるときは,より分離能の優れた等電点電気泳動を行ってみる.溶血所見が認められた場合には,不安定Hbを検出するためにイソプロパノール沈殿試験,熱変性試験を行う.
- 変動要因
- 血液一般検査(赤血球形態,赤血球指数)の異常を確認する.
- β-サラセミアのヘテロ接合体では,HbFが上昇しないものもあり,HbA2の定量検査を行う.
( 腰原公人 )
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