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略称 Pb

臨床的意義

  • 本検査は,鉛中毒が疑われるときに行われる.鉛作業に従事している場合と急性大量曝露による場合がある.後者は調理器具からの溶出,調理材料への汚染が考えられる.血中鉛は現在の鉛曝露を反映し,尿中鉛は過去の鉛曝露も反映すると考えられている.
  • 鉛による初期の生体指標は,ヘム合成系の阻害である.血中δ-アミノレブリン酸脱水酵素(ALAD)が鉛により鋭敏に阻害されるため,その基質であるδ-アミノレブリン酸(ALA)が溜り,尿中へ排泄される.尿中ALAは血中鉛とともに鉛負荷の早期指標であり,鉛特殊健康診断の検査項目である.
  • ヘム合成酵素がプロトポルフィリンにを導入しヘムを形成するが,基質となるは二価であるため,還元酵素の作用が必須であるが,この酵素もまた鉛により阻害されるため,遊離プロトポルフィリン(FEP)が増加する.血中FEPの増加も鉛負荷の指標となっている.鉛中毒では好塩基斑点赤血球の増加も知られているが,ピリミジン-5´-ヌクレオチダーゼの活性阻害の結果である.血中鉛濃度が10μg/dl程度からALAD活性の阻害が生じ,35μg/dl程度から尿中ALAの増加と血中FEPの増加が観察されるようになる.50~80μg/dl以上になると倦怠感,胃腸障害(食欲不振便秘下痢など),末梢神経症状が現れる.80μg/dl以上で貧血がみられるようになる.
  • 血中鉛が低濃度でも小児のIQレベルの低下が認められ,母親の喫煙と関係があるとされている.アメリカで小児の鉛脳症がときどき問題となる.家屋のペンキの落屑(含鉛顔料)をお菓子代わりに食べた結果であり,小児の鉛に対する血液脳関門の形成が学童期であることから脳症を誘発する.
  • 鉛中毒の治療にはCa-EDTAの点滴静注を行う.
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基準値・異常値

基準範囲
〈血液〉5μg/dl以下
鉛作業に従事する場合,厚生労働省通達がある.血中鉛の値により分布区分が決められているが,正常・異常の鑑別を目的とするものではない.分布1:20μg/dl以下,分布2:20~40μg/dl,分布3:40μg/dl超.尿中鉛は20μg/l以下である.
変動要因
高値

鉛作業者、  鉛中毒

鉛中毒,鉛作業者

次に必要な検査

全血中δ-アミノレブリン酸脱水酵素活性,尿中δ-アミノレブリン酸の量の検査.
変動要因
職業性の曝露では作業内容,作業様態,作業環境の点検を行う.その他の場合は技術的誤差を検討する.実験器具,特にガラス器具からの汚染,プラスチック製品の可塑剤(ステアリン酸鉛が使われていることあり),分析室内の空気の汚染など.
( 千葉百子 )
臨床検査項目辞典

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「最新 臨床検査項目辞典」
監修:櫻林郁之介・熊坂一成
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, inc., 2008.

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