カドミウム
カドミウム
略称 | Cd |
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臨床的意義
- 本検査は,イタイイタイ病,カドミウム中毒が疑われるときに行われる.血中カドミウムは現在のカドミウム曝露を反映し,尿中カドミウムは過去の鉛曝露も反映すると考えられている
- カドミウムは近位尿細管の再吸収機能に影響を与え,尿細管蛋白尿として知られる低分子量蛋白質(β2-ミクログロブリン)の尿中排泄量が増加する.より重篤なカドミウム障害は糸球体に関わるもので,イヌリンクリアランスが増加する.その他の起こりうる影響はアミノ酸尿,糖尿,リン酸塩尿がある.
- これまで尿中β2-ミクログロブリンが指標として使われることが多かったが,最近,α1-ミクログロブリンの測定法が確立され,キット試薬も市販されているので,今後はα1-ミクログロブリン測定が普及すると思われる.カドミウムによる生体影響がα1-ミクログロブリンの方がβ2-ミクログロブリンより早期に発現するといわれる.
- 職業性曝露の場合は呼吸器からの侵入であり,肺障害である.急性中毒では肺水腫,慢性中毒では肺気腫を起こす.低濃度慢性曝露では慢性鼻炎,嗅覚障害,咳,息切れなどがみられる.慢性経呼吸器吸収でも腎障害は起こる.
- イタイイタイ病患者では,近位尿細管の再吸収低下による低リン酸血症が特徴である.カルシウム再吸収低下による尿中カルシウム排泄増加がみられるにもかかわらず,血清カルシウム濃度はPTH,1,25-(OH)2D3などのカルシウム調節ホルモンの作用により正常に維持されている.尿中へのカルシウム,リン酸排泄が慢性的に持続する結果,カルシウムとリンのバランスが負となり,常に骨から血液へカルシウムとリンの移動が起こる.その結果,低リン酸血症性骨軟化症と骨吸収の亢進による骨量の減少(骨粗鬆症)をきたすと考えられている.
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基準値・異常値
- 基準範囲
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正常者の血液濃度は3μg/dl以下
〈尿〉5μg/l以下.20μg/l以上では何らかの曝露があると考えられる.
変動要因 - 高値
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イタイイタイ病、 カドミウム汚染地域住民、 カドミウム作業者、 カドミウム中毒
イタイイタイ病,カドミウム汚染地域住民,カドミウム中毒,カドミウム作業者
次に必要な検査
- 変動要因
- 職業性の曝露では作業内容,作業様態,作業環境の点検を行う.外部からの汚染による技術的誤差は比較的少ない.
- 高齢者ではカドミウムに関係なくβ2-ミクログロブリンが上昇する.
( 千葉百子 )
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