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水銀

水銀

略称 Hg

臨床的意義

  • 本検査は,水銀中毒が疑われるときに行われる.特にMMで汚染された魚を長期間多食した場合,そのようなときは環境調査も必要となる.職業的曝露(産業の場では電極,計器,水銀灯,水銀アマルガム,農薬,防腐剤,工業用雷管など)が疑われるときも同様である.
  • 非必須元素である.存在状態を金属水銀,無機水銀,有機水銀に区別でき,それぞれ体内挙動,毒性が異なる.消化管からの吸収率は金属水銀は1%以下,無機水銀は10%以下,有機水銀は90%以上である.金属水銀蒸気は呼吸器から吸収され,1回の呼吸で体内に残留する割合は60~90%であり,症状は濃度と曝露時間に依存するが,高濃度水銀蒸気の場合,気管支炎,細気管支炎,間質性肺炎がみられる.
  • 無機水銀の標的臓器は腎臓であり,腎臓障害としては蛋白尿,アミノ酸尿,血尿などの症状を引き起こす.血漿中の無機水銀は主にアルブミンと結合して存在し,わずかに血球中に取り込まれた無機水銀はヘモグロビンとは結合せず,メタロチオネインなどSH基と結合する.水銀イオン(Hg2+)により腎臓内カルシウム濃度の上昇,脂質過酸化の促進が知られている.金属水銀も無機水銀も排泄経路は尿と糞便であるが条件により一定でない.ヒトの生物学的半減期は金属水銀は約60日,Hg2+は約42日と報告されている.
  • 有機水銀は全身的な毒性を持ち,曝露量と期間により種々の器官,機能に影響する.標的臓器は神経系である.血液-脳関門,血液-胎盤関門を通過し,中枢神経障害である水俣病,胎児性水俣病を引き起こしたことはよく知られている.症状は感覚鈍麻・麻痺,しびれ感,言語障害,運動失調,歩行異常,視野狭窄,難聴などである.生物体内の有機水銀はほとんどがMMである.発生・発育過程の中枢神経系は他の器官・組織に比べてMMに対する障害感受性が高い.MMの主な排泄経路は糞便のほか,尿,毛髪である.MMは体内で徐々に無機化されるが,SH化合物など共存物質の影響を受ける.
  • 測定法は還元気化装置を組み入れた原子吸光法が奨められる.水銀はイオン化エネルギーが高いため,誘導結合プラズマ(ICP)によりイオン化する原理を応用したICP-MS分析法では感度が劣る.
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基準値・異常値

基準範囲
  • 〈血液〉5.0μg/dl以下
  • 〈尿〉25μg/l以下
  • 〈毛髪〉5μg/g以下(有機水銀曝露の場合)
変動要因
高値

水銀曝露

水銀曝露(環境,食品由来)

変動要因
  • 外部からの汚染により高値となることは少ないので,分析環境のチェックを行う.分析法に干渉がないことを確認する.
  • 歯科治療で水銀アマルガムを詰めたことにより,血中・尿中水銀が著高することはない.毛髪中水銀は大部分有機水銀由来である.
( 千葉百子 )
臨床検査項目辞典

「最新 臨床検査項目辞典」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部の項目を抜粋のうえ当社が転載しているものです。全項目が掲載されている書籍版については、医歯薬出版株式会社にお問合わせください。転載情報の著作権は医歯薬出版株式会社に帰属します。

「最新 臨床検査項目辞典」
監修:櫻林郁之介・熊坂一成
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, inc., 2008.

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