24時間クレアチニンクリアランス
24時間クレアチニンクリアランス
別名 | 24時間Ccr,内因性クレアチニンクリアランス |
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臨床的意義
- 慢性腎疾患(慢性腎炎,糖尿病腎症,腎硬化症など)の腎機能の評価,特に,蛋白尿,血清Cr値が急に増悪した場合.また,糖尿病腎症では糸球体過剰濾過の評価にも使用される.
- 浮腫を伴う腎障害やネフローゼ症候群,心不全などの患者では,短時間の水分負荷は危険を伴い,高齢者の1回採尿では正確な尿量が測定し難いため,2時間Ccrの施行は制限される.一方,24時間Ccrでは,水分負荷が不要で,ほぼ正確な蓄尿が可能であり,安全に容易に検査を施行できる利点がある.また,24時間の蓄尿を利用して,Ccr以外に,1日尿蛋白排泄量,1日Na,K,尿素窒素,尿酸排泄量が同時に測定できる.これを基に,食事中の塩分,蛋白摂取量(Maroniの式で算出)を推定し,患者の食事指導が可能となる.
- 24時間Ccrは2時間Ccrよりも真のGFR(イヌリンクリアランス:Cin)に近似するとされる.これは,後者での水分負荷がCcrを増加させるためと考えられている.しかし,Crは生理的に尿細管からも排泄され,腎機能が低下するにつれ尿細管分泌量が多くなるため,Ccr/Cinは,GFRが80ml/min以上で1.16,40~80ml/minで1.57,40ml/min以下で1.92と高値となる.したがって,高度腎機能低下例のCcrは,真のGFRを過大評価していることに注意すべきである.さらに,Cr測定法が酵素法の場合,Jaffé法より0.2mg/dl程度の低値をとるためCcr/Cinはさらに大きくなる.
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基準値・異常値
- 基準範囲
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70~130ml/min
変動要因 - 高値
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糸球体過剰濾過、 糖尿病腎症
140ml/min以上:糖尿病腎症の前期・早期の糸球体過剰濾過.塩分・蛋白摂取過剰での糸球体過剰濾過.
次に必要な検査⇒血糖,HbA1c,24時間Ccrの測定時に,同時に尿中Na,尿素窒素の1日排泄量を測定し,食事での塩分・蛋白摂取量を推算し,過剰であれば栄養指導を実施する.
- 低値
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高齢者、 自己免疫疾患、 心不全、 腎炎、 腎硬化症、 脱水、 糖尿病腎症、 尿細管障害、 尿路閉塞、 末期腎不全
- 50ml/min以下:腎血流低下時(例:心不全,脱水,高齢者),腎実質障害(腎炎,糖尿病腎症,腎硬化症,自己免疫疾患,尿細管障害),尿路閉塞.
- 次に必要な検査⇒まず,Cr値,検尿結果の過去からの変動を調査する.また,検尿,尿蛋白・電解質定量,尿中β2-ミクログロブリン,α1-ミクログロブリン,尿中NAG,血糖,生化学・免疫学的検査,腎尿路の画像診断を行い,経過(慢性あるいは急性)と原疾患を鑑別する.急性であれば,腎前性(腎虚血性),腎実質性,腎後性(尿路障害)の鑑別を進める.慢性の腎障害では,24時間Ccrの測定時に尿中Na,尿素窒素の1日排泄量を測定し,食事での塩分・蛋白摂取量を推算し,食事制限(塩分,蛋白制限)指導に活用する.
- 10ml/min以下:末期腎不全
- 対応⇒「クレアチニンクリアランス」の対応を記載してください。
- 変動要因
- 不正確な蓄尿が主因である.蓄尿器は,尿量の1/50を保存するユリンメイト®,自動採尿器,蓄尿バッグなどが主体である.前2者は最大誤差±5%程度であるのに対して,後者には10~15%程度の正誤差が存在するため,蓄尿バッグ使用ではメスシリンダーでの再測定が必要である.その他は【→】「クレアチニンクリアランス」(p.361).
( 木村秀樹 )
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