アンジオテンシンⅡ
略称 | AⅡ |
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臨床的意義
- 循環系レニン・アンジオテンシン系の活性評価に用いる.高血圧,水・電解質代謝異常をきたす病態や疾患で異常値を示す.また,食塩摂取量,交感神経活性,薬剤などにより,その測定値は影響を受けるので,それらの点を考慮して評価することが必要である.
- 特殊な病態を除いては,PRAと同様な変動を示す.したがって,近年汎用されているレニン・アンジオテンシン系阻害薬服用などを含めて,通常は本系の活性発揮にあたって律速段階とならないレニン基質,変換酵素,代謝酵素などに変化があった病態あるいは疾患の評価に,AⅠと同様に必要となる場合がある.
- PRA,レニン濃度,PAC,さらに必要があれば血漿AⅠ濃度の測定を実施し,本系の病態や疾患に果たす役割を評価する.
基準値・異常値
- 基準範囲
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9~47pg/ml
変動要因 - 高値
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Addison病、 Bartter症候群、 Gitelman症候群、 ネフローゼ症候群、 レニン産生腫瘍、 悪性高血圧症、 褐色細胞腫、 肝硬変、 原発性選択的低アルドステロン症、 高レニン性本態性高血圧症、 腎血管性高血圧症、 腎実質性高血圧症、 脱水、 低食塩食、 慢性心不全、 利尿薬
高レニン性本態性高血圧症,腎血管性高血圧症,悪性高血圧症,腎実質性高血圧症,褐色細胞腫,レニン産生腫瘍,Bartter症候群,Gitelman症候群,脱水,低食塩食,利尿薬,肝硬変,ネフローゼ症候群,慢性心不全,Addison病,原発性選択的低アルドステロン症など
- 低値
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11β-水酸化酵素欠損症、 17α-水酸化酵素欠損症、 AME症候群、 DOC産生腫瘍、 Liddle症候群、 β遮断薬、 アンジオテンシン変換酵素阻害薬、 グリチルリチン製剤、 間質性腎炎、 偽性アルドステロン症、 原発性アルドステロン症、 高食塩食、 腎盂腎炎、 低レニン性本態性高血圧症、 糖質コルチコイド反応性アルドステロン症、 糖尿病腎症、 特発性アルドステロン症
低レニン性本態性高血圧症,原発性アルドステロン症,特発性アルドステロン症,糖質コルチコイド反応性アルドステロン症,低レニン性選択的低アルドステロン症(糖尿病腎症,間質性腎炎,腎盂腎炎など),高食塩食,アンジオテンシン変換酵素阻害薬,β遮断薬,Liddle症候群,偽性アルドステロン症(甘草を成分とする漢方薬,グリチルリチン製剤など),AME症候群,DOC産生腫瘍,先天性副腎酵素欠損症(11β-水酸化酵素欠損症,17α-水酸化酵素欠損症など)など
- 次に必要な検査
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血漿レニン活性(PRA),血漿アルドステロン濃度(PAC)などの測定を行う.
- 変動要因
- 食塩摂取量,交感神経活性,薬剤などにより,その測定値は影響を受けるので,それらの点を考慮して,評価することが必要である.一定の食塩摂取量のもとで,早朝安静臥位後の採血と,利尿薬,β遮断薬,レニン・アンジオテンシン系阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬,AⅡ受容体拮抗薬など)を休薬して検査をするのが原則である.しかしながら,日常診療では困難であり,それぞれの薬剤の特性を考慮してその測定値を評価するのが現実的である.
- 血漿中には前駆物質であるAⅠや代謝産物であるアンジオテンシンⅢやⅣなども存在するために,用いる抗体の特異性によって,交差反応が測定結果に影響することがある.
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