メラトニン
メラトニン
臨床的意義
- 本検査は,検査特異性が低いため,単独で測定されることは少ないが,下記の場合に適応となる.
①生体リズムの脱同調による睡眠障害を疑う場合.
②内分泌異常の患者において(他のホルモンと同時に).
③松果体腫瘍患者のフォローアップ.
〈測定値の上昇,低下がみられる場合〉
- 睡眠異常:睡眠障害患者と健常人の間にメラトニン血中濃度に差は認められない.サーカディアンリズムと睡眠リズムの乖離から身体的症状を示す,いわゆる脱同調症候群(時差ぼけやシフトの多い仕事における)の患者では,メラトニン分泌の周期が異常を示していると推察されている.
- 内分泌の異常:神経性食欲不振症,機能性無月経,視床下部性性腺機能低下症,Kallmann症候群など低ゴナドトロピン時にメラトニンが上昇しているという報告がある.妊娠時(特に重症妊娠中毒症時),月経時,閉経以降はメラトニンは低値を示す.
- 腫瘍:一部の松果体腫瘍では血中メラトニンが上昇する.腫瘍マーカーとしての意義は薄いものの,術後再発のフォローなどには有用である.
- 精神疾患:うつ病患者では血中濃度の減少および日内リズムの消失がみられているとの報告がある.
- その他:メラトニン内服時に上昇.肝障害時に代謝の遅延による上昇.
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基準値・異常値
- 基準範囲
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- 昼間値13.9±3.5pg/ml
- 夜間値66.1±37.5pg/ml
- 高値
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メラトニン摂取時、 肝障害、 松果体腫瘍、 低ゴナドトロピン状態
松果体腫瘍,低ゴナドトロピン状態,肝障害,メラトニン摂取時.
- 低値
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うつ病、 一部の睡眠障害の患者、 重症妊娠中毒症
一部の睡眠障害の患者,重症妊娠中毒症,うつ病
- 次に必要な検査
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それぞれの疾患に特異的な身体症状,所見などをもとに検査,診断を進めていく.
- 変動要因
- 国内でも内服している例がみられるため,健常人で血中メラトニンの異常高値をみた場合は,サプリメントや睡眠導入薬として摂取していないかを訊いておく必要がある.
( 内田香介,小寺 力 )
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