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抗胃壁細胞抗体

抗胃壁細胞抗体

略称 PCA
別名 胃壁細胞抗体,抗壁細胞抗体,壁細胞抗体(parietal cell antibody:PCA),抗胃抗体

臨床的意義

  • 本検査は,慢性萎縮性胃炎(自己免疫性胃炎)および悪性貧血が疑われるときに行われる.
  • 悪性貧血で陽性率が高い(75~100%).悪性貧血はV.B12欠乏による巨赤芽球性貧血の代表的疾患である.悪性貧血では,V.B12の吸収に必要な内因子(intrinsic factor)に対する自己抗体が産生され,回腸でのV.B12の吸収ができないためV.B12不足となり,赤芽球を含む全身の細胞の核酸合成が障害され,末梢血で大球性貧血,骨髄で巨赤芽球性変化を呈する疾患である.なお,V.B12が全く吸収されなくなっても体内のV.B12は5年程度はもつと考えられる.悪性貧血の患者では,このような抗内因子抗体と同時に抗胃壁細胞抗体が産生されることが多い.
  • 悪性貧血の内視鏡所見として慢性萎縮性胃炎が特徴である.胃粘膜萎縮の進行とともに抗胃壁細胞抗体陽性率は増加するが,抗体価とは必ずしも相関しない.
  • 抗胃壁細胞抗体は悪性貧血以外の疾患においても出現頻度が高く,悪性貧血を伴わない萎縮性胃炎(20~60%),鉄欠乏性貧血(20~50%),甲状腺疾患(30~60%),糖尿病(18~30%),肝疾患(20%)など種々の疾患で陽性となる.
  • 健常者でも10%以下の陽性率がみられるが,高齢者になると10~15%程度と陽性率が増加する.
  • 抗胃壁細胞抗体が陰性かつ血清ペプシノゲン値が低値の人で,胃癌のリスクが高いという報告がある.
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基準値・異常値

基準範囲
陰性(10倍未満)
変動要因
陽性

Sjögren症候群、  SLE、  悪性貧血、  胃癌、  胃潰瘍、  萎縮性胃炎、  肝疾患、  機能亢進症、  低下症、  鉄欠乏性貧血、  糖尿病

悪性貧血,鉄欠乏性貧血,萎縮性胃炎,甲状腺疾患(機能亢進症,低下症),他の胃疾患(胃潰瘍,胃癌),肝疾患,糖尿病,SLE,Sjögren症候群

次に必要な検査
  • 他に確認すべき検査は,①末梢血の血球算定/血液像で大球性高色素性貧血と好中球過分葉(hypersegmentation),②骨髄塗抹標本での巨赤芽球性変化,③血中ビタミンB12(V.B12),葉酸の測定,④抗内因子抗体,⑤胃内視鏡による萎縮性胃炎と無酸症,⑥l-バリン負荷による尿中メチルマロン酸高値,⑦シリング(Schilling)試験である.
  • Shilling試験は58Co-V.B12の経口投与によるV.B12吸収試験であり,尿中排泄量により判断する.内因子欠乏型と吸収障害型を区別しうる.
  • 悪性貧血においては他の臓器特異的自己免疫疾患である慢性甲状腺炎(橋本病),Addison病,1型糖尿病などを合併することがあるため,それらの検索も必要である.
変動要因
健常者でも陽性になることがあるので,他の検査結果と併せて総合的判断が必要である.また悪性貧血でも10~20%程度は陰性である.
( 今福裕司 )
臨床検査項目辞典

「最新 臨床検査項目辞典」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部の項目を抜粋のうえ当社が転載しているものです。全項目が掲載されている書籍版については、医歯薬出版株式会社にお問合わせください。転載情報の著作権は医歯薬出版株式会社に帰属します。

「最新 臨床検査項目辞典」
監修:櫻林郁之介・熊坂一成
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, inc., 2008.

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