NSAID起因性胃腸障害
NSAID-induced gastrointestinal injury
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
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Clinical Chart
検査
<上部消化管内視鏡>
NSAID の慢性投与に伴う潰瘍は,幽門部から前庭部に多発する比較的小さな潰瘍,前庭部の深掘れ潰瘍,不整形の巨大潰瘍などが特徴とされる.その他,低用量アスピリン服用に伴い食道炎の発症リスクが有意に高かったとの報告もある.
<小腸内視鏡(DBE,ダブルバルーン内視鏡)>
NSAID 起因性小腸障害の画像所見としては,膜様狭窄と称される中心性狭窄がよく知られている.これはNSAID の長期服用によって生じた管腔全周に及ぶ潰瘍性病変が治癒に至った所見と考えられている.そのほか,小潰瘍,発赤,出血の多発性小病変や輪状・類円形・不整形・縦走傾向などの数々の形態を呈する潰瘍病変などがあり,多彩かつ非特異的な潰瘍性病変を呈する.
<カプセル内視鏡(VCE)>
全小腸を非侵襲的に観察することが可能.DBE で認めるのと同様の所見を認める.ただし,狭窄部があるとそこでカプセルが滞留する可能性がある.
<小腸X 線造影検査>
狭窄や潰瘍病変の所見として,両側性ないし偏側性管腔狭小化/狭窄やバリウム斑を認める.高度狭窄の有無を確認するなどの目的では検査の意義があるが,VCE やDBE に比較すると詳細観察が困難で有用性が低い.内視鏡所見とXp 所見を対比検討した結果によると,内視鏡所見の71%はXp にて描出されたが,小病変の描出率は低かったと報告がある.
<大腸内視鏡>
起因性大腸粘膜障害は内視鏡像より潰瘍型,腸炎型に分類されている.
潰瘍型としては,回盲弁上やhaustra の頂部に好発し,幅の狭い溝状の形態,あるいは類円形ないし地図状の形態を呈する.潰瘍自体は比較的浅く境界明瞭で,いわゆるdiscrete ulcer の形態を呈する.また潰瘍周囲に発赤や顆粒状変化を認める.炎症が長期間にわたり継続し,治癒と再発を繰り返すことにより,haustra に一致した求心性の狭窄を生じ,本症にきわめて特徴的な膜様狭窄を認める.典型例では稜上の内腔側に浅い輪状潰瘍を伴う.潰瘍型病変は全大腸に分布するが,回盲部に多く,ついで上行結腸,横行結腸も好発部位である.また病変はしばしば多発するが,回盲部に近い近位大腸で所見がより高度なことが多い.組織学的所見は非特異的であるが,上皮内にアポトーシス消退が認められることが多いとされている.
腸炎型としては,発赤や出血を伴う浮腫状粘膜を特徴とする出血性大腸炎,その他アフタ性大腸炎などを呈し,全大腸にみられる.病理組織学的には非特異的な炎症細胞浸潤にとどまる症例が多いが,顕著な好酸球浸潤を伴う症例,あるいは肉芽腫性変化を認めた症例なども報告されている.また抗菌薬非併用にもかかわらず偽膜性大腸炎に合致した所見を呈した報告もあり,NSAIDs 起因性大腸炎の内視鏡所見,病理学的所見は抗菌薬関連大腸炎と類似する点が少なくなく,両者の鑑別は薬剤の使用歴によらなければ容易ではない.
NSAID 坐剤起因性直腸病変は,内視鏡像により発赤・出血・びらんが主体の急性出血性粘膜病変型と,明らかな白苔を有する潰瘍形成を認めた潰瘍型に分類される.潰瘍形態については多発,全周性が多く,輪状ないしは横走性潰瘍,全周性狭窄を伴う輪状潰瘍,不整形潰瘍,Dieulafoy 潰瘍などを呈する.病変は主にRb からRa に分布し,潰瘍周囲にも発赤・びらんなどの炎症所見が認められる.急性出血性直腸潰瘍や宿便性潰瘍,あるいはサイトメガロウイルスによる直腸潰瘍などとの鑑別が問題となる.
NSAID とmicroscopic colitis(collagenous colitis,lymphocytic colitis)との関連も指摘されているが,collagenous colitis の場合は,ほぼ正常の大腸内視鏡所見を呈するが,病理組織学的には大腸表層上皮直下のcollagen band の肥厚を特徴とする.近年collagenous colitis に幅の狭い縦走潰瘍を合併する報告が多く,縦走潰瘍合併例とNSIADs との関連が示唆されている.
NSAID の慢性投与に伴う潰瘍は,幽門部から前庭部に多発する比較的小さな潰瘍,前庭部の深掘れ潰瘍,不整形の巨大潰瘍などが特徴とされる.その他,低用量アスピリン服用に伴い食道炎の発症リスクが有意に高かったとの報告もある.
<小腸内視鏡(DBE,ダブルバルーン内視鏡)>
NSAID 起因性小腸障害の画像所見としては,膜様狭窄と称される中心性狭窄がよく知られている.これはNSAID の長期服用によって生じた管腔全周に及ぶ潰瘍性病変が治癒に至った所見と考えられている.そのほか,小潰瘍,発赤,出血の多発性小病変や輪状・類円形・不整形・縦走傾向などの数々の形態を呈する潰瘍病変などがあり,多彩かつ非特異的な潰瘍性病変を呈する.
<カプセル内視鏡(VCE)>
全小腸を非侵襲的に観察することが可能.DBE で認めるのと同様の所見を認める.ただし,狭窄部があるとそこでカプセルが滞留する可能性がある.
<小腸X 線造影検査>
狭窄や潰瘍病変の所見として,両側性ないし偏側性管腔狭小化/狭窄やバリウム斑を認める.高度狭窄の有無を確認するなどの目的では検査の意義があるが,VCE やDBE に比較すると詳細観察が困難で有用性が低い.内視鏡所見とXp 所見を対比検討した結果によると,内視鏡所見の71%はXp にて描出されたが,小病変の描出率は低かったと報告がある.
<大腸内視鏡>
起因性大腸粘膜障害は内視鏡像より潰瘍型,腸炎型に分類されている.
潰瘍型としては,回盲弁上やhaustra の頂部に好発し,幅の狭い溝状の形態,あるいは類円形ないし地図状の形態を呈する.潰瘍自体は比較的浅く境界明瞭で,いわゆるdiscrete ulcer の形態を呈する.また潰瘍周囲に発赤や顆粒状変化を認める.炎症が長期間にわたり継続し,治癒と再発を繰り返すことにより,haustra に一致した求心性の狭窄を生じ,本症にきわめて特徴的な膜様狭窄を認める.典型例では稜上の内腔側に浅い輪状潰瘍を伴う.潰瘍型病変は全大腸に分布するが,回盲部に多く,ついで上行結腸,横行結腸も好発部位である.また病変はしばしば多発するが,回盲部に近い近位大腸で所見がより高度なことが多い.組織学的所見は非特異的であるが,上皮内にアポトーシス消退が認められることが多いとされている.
腸炎型としては,発赤や出血を伴う浮腫状粘膜を特徴とする出血性大腸炎,その他アフタ性大腸炎などを呈し,全大腸にみられる.病理組織学的には非特異的な炎症細胞浸潤にとどまる症例が多いが,顕著な好酸球浸潤を伴う症例,あるいは肉芽腫性変化を認めた症例なども報告されている.また抗菌薬非併用にもかかわらず偽膜性大腸炎に合致した所見を呈した報告もあり,NSAIDs 起因性大腸炎の内視鏡所見,病理学的所見は抗菌薬関連大腸炎と類似する点が少なくなく,両者の鑑別は薬剤の使用歴によらなければ容易ではない.
NSAID 坐剤起因性直腸病変は,内視鏡像により発赤・出血・びらんが主体の急性出血性粘膜病変型と,明らかな白苔を有する潰瘍形成を認めた潰瘍型に分類される.潰瘍形態については多発,全周性が多く,輪状ないしは横走性潰瘍,全周性狭窄を伴う輪状潰瘍,不整形潰瘍,Dieulafoy 潰瘍などを呈する.病変は主にRb からRa に分布し,潰瘍周囲にも発赤・びらんなどの炎症所見が認められる.急性出血性直腸潰瘍や宿便性潰瘍,あるいはサイトメガロウイルスによる直腸潰瘍などとの鑑別が問題となる.
NSAID とmicroscopic colitis(collagenous colitis,lymphocytic colitis)との関連も指摘されているが,collagenous colitis の場合は,ほぼ正常の大腸内視鏡所見を呈するが,病理組織学的には大腸表層上皮直下のcollagen band の肥厚を特徴とする.近年collagenous colitis に幅の狭い縦走潰瘍を合併する報告が多く,縦走潰瘍合併例とNSIADs との関連が示唆されている.