ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー、フィッシャー症候群
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
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Clinical Chart
- ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome:GBS)は先行感染の後に急性に四肢の脱力,腱反射の減弱・消失を発症する末梢神経障害である.原因として自己免疫機序が考えられている.脱髄と軸索障害のいずれも生じる.
- 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyneu-ropathy:CIDP)は慢性進行性または再発寛解性の経過をとり,左右対称性の筋力低下,感覚障害を生じる末梢神経障害である.髄鞘に対する自己免疫機序により脱髄性の末梢神経障害を生じると推測されている.
- 多巣性運動ニューロパチー(multifocal motor neuropathy:MMN)は慢性進行性の経過をとり,左右非対称性に主として上肢に筋力低下と筋萎縮を生じる末梢神経障害である.原因として自己免疫機序が推測されているが詳細は不明である.
- フィッシャー症候群(Fisher syndrome)はギラン・バレー症候群の亜型と考えられ,急性発症の外眼筋麻痺,小脳性運動失調,四肢腱反射の減弱・消失を 3 主徴とする.
- ギラン・バレー症候群,慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー,多巣性運動ニューロパチー,フィッシャー症候群のいずれについても日本神経学会より診療ガイドラインが公表されている.診療にあたってはこれらを参考にする.
- 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーと多巣性運動ニューロパチーは厚生労働省の特定疾患治療研究事業の対象疾患であり,医療費の公費による補助がある.
検査
1.ギラン・バレー症候群(GBS)
[検査]
髄液検査では,蛋白が発症数日で上昇するが,細胞数の増多はみられない(蛋白細胞解離).各種の血清中抗ガングリオシド抗体は特異性が高く,診断に有用である.特にガングリオシド抗GM1IgG 抗体,抗GQ1bIgG 抗体は本症に保険適用されている.その他の抗ガングリオシド抗体についてはガイドラインを参照されたい.
神経伝導検査は伝導ブロックや神経伝導速度の低下がみられる.本検査は脱髄型と軸索型の病型診断にも重要である.
2.フィッシャー症候群
[検査]
約90%の症例に抗GQ1b 抗体が陽性である.抗GQ1b 抗体の疾患特異性は高く,診断に有用である.GQ1b は眼運動神経,後根神経節大型感覚神経細胞,筋紡錘に発現しており,その自己抗体が病態と関連していることが推測されている.
3.慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)
[検査]
髄液検査では,蛋白が上昇し,細胞数が正常(10/mm3以下)であることが多い.神経伝導検査では,脱髄を示唆する所見がみられる.すなわち,末梢神経伝導速度の低下,遠位潜時の延長,F 波潜時の延長,時間的分散および伝導ブロックを認める.二次的な軸索変性がある場合は,神経伝導検査で遠位部刺激による複合筋活動電位の低下,筋電図にて急性脱神経所見(fibrillation potential,positive sharp wave)が認められる.画像検査では,MRI 検査にて障害部位の肥厚と造影効果が観察される場合があり,認めれば本疾患を支持する所見である.典型的CIDPでは神経根が,非典型的CIDP では神経叢,神経幹に肥厚と造影効果が観察されることがある.神経生検は,非典型例や他の疾患との鑑別診断の参考になる.光顕所見として,マクロファージ,T 細胞などの炎症性細胞浸潤,ときほぐし法による脱髄の所見,電顕ではonion bulb などが認められる.
[検査]
髄液検査では,蛋白が発症数日で上昇するが,細胞数の増多はみられない(蛋白細胞解離).各種の血清中抗ガングリオシド抗体は特異性が高く,診断に有用である.特にガングリオシド抗GM1IgG 抗体,抗GQ1bIgG 抗体は本症に保険適用されている.その他の抗ガングリオシド抗体についてはガイドラインを参照されたい.
神経伝導検査は伝導ブロックや神経伝導速度の低下がみられる.本検査は脱髄型と軸索型の病型診断にも重要である.
2.フィッシャー症候群
[検査]
約90%の症例に抗GQ1b 抗体が陽性である.抗GQ1b 抗体の疾患特異性は高く,診断に有用である.GQ1b は眼運動神経,後根神経節大型感覚神経細胞,筋紡錘に発現しており,その自己抗体が病態と関連していることが推測されている.
3.慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)
[検査]
髄液検査では,蛋白が上昇し,細胞数が正常(10/mm3以下)であることが多い.神経伝導検査では,脱髄を示唆する所見がみられる.すなわち,末梢神経伝導速度の低下,遠位潜時の延長,F 波潜時の延長,時間的分散および伝導ブロックを認める.二次的な軸索変性がある場合は,神経伝導検査で遠位部刺激による複合筋活動電位の低下,筋電図にて急性脱神経所見(fibrillation potential,positive sharp wave)が認められる.画像検査では,MRI 検査にて障害部位の肥厚と造影効果が観察される場合があり,認めれば本疾患を支持する所見である.典型的CIDPでは神経根が,非典型的CIDP では神経叢,神経幹に肥厚と造影効果が観察されることがある.神経生検は,非典型例や他の疾患との鑑別診断の参考になる.光顕所見として,マクロファージ,T 細胞などの炎症性細胞浸潤,ときほぐし法による脱髄の所見,電顕ではonion bulb などが認められる.