ライソゾーム病
lysosomal storage disease
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。
(リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690)
Clinical Chart
検査・診断
1.ファブリー病(Fabry disease)
[検査]
血漿,白血球,生検組織,濾紙血のα-galactosi-dase A の酵素活性に著明な低下を認める.また,被角血管腫などの皮膚の検査,心エコーなどの循環器的検査,腎機能検査,聴力検査,眼科的検査,頭部 MRIなどを行い,全身臓器について検索する.女性の場合は酵素活性の低下の程度が様々であり,家族歴の詳細な聴取と遺伝子検査を要する.
2.ゴーシェ病(Gaucher disease)
[検査]
白血球のグルコセレブロシダーゼの酵素活性の低下を認める.
3. GM1 ガングリオシドーシス(GM1 gangliosidosis)
GLB1(3p22.3)の変異のため,β-ガラクトシダーゼの酵素活性低下を生じ,GM1 ガングリオシドが蓄積する常染色体性劣性遺伝の疾患である.診断は白血球のβ-ガラクトシダーゼ活性低下により行う.1 型(乳児期発症),2 型(若年型),3 型(成人型)がある.3 型はジストニアなどの錐体外路症状,錐体路障害,認知障害を示し,肝脾腫がみられないことが診断を困難にしている.本邦では3 型が比較的多い.酵素補充療法は開発されていない.
4. GM2 ガングリオシドーシス,Tay-Sachs 病(GM2 gangliosidosis,Tay-Sachs disease)
HEXA(15q23)の変異のため,ヘキソサミニダーゼA 欠損を生じる常染色体性劣性遺伝の疾患である.酵素活性低下のため,GM2 ガングリオシドが脳内に蓄積する.確定診断は血清,白血球のヘキソサミニダーゼA の活性低下で行う.一方,ヘキソサミニダーゼB 活性は保たれている.乳児型が最も多く,眼底のcherry red spotが特徴的である.精神運動発達遅延,聴覚過敏,痙性四肢麻痺,痙攣を生じる.4 歳を超えての生存はまれである.その他,幼児期から小児期に発症し,痙性麻痺,運動失調,認知障害,言語障害,嚥下障害を示し10~15 歳で死亡する若年型,青年期に発症し,構音障害,嚥下障害,痙性麻痺,運動失調,精神症状を進行性に呈する成人型がある.これまでに酵素補充療法は開発されていない.
5. ニーマンピック病(Niemann-Pick disease)
SMPD1(11p15.4)の変異のため,酸性スフィンゴミエリナーゼの酵素活性低下を生じるA 型,B 型と細胞内のコレステロール輸送障害を生じるC 型(18q11.2 に遺伝子座があるNPC1 および4q24.3 に遺伝子座があるNPC2)があり,いずれも常染色体性劣性遺伝である.A 型とB 型の診断は白血球の酸性スフィンゴミエリナーゼ活性の低下で行う.C 型は培養線維芽細胞でのコレステロールのエステル化障害の生化学的検出,および骨髄細胞のフィリピン染色により診断される.A 型は全体の半数をしめ,精神運動発達遅延,肝脾腫,cherry-red spot,錐体路障害,痙攣を生じる.2 歳を超える生存はまれである.B 型は神経症候を示さず内臓型であり,肝脾腫,呼吸障害,骨髄障害を示し,肝不全により成人までに死亡することが多い.C 型の典型例は幼児期に発症し,精神運動発達遅滞,肝脾腫,眼球運動障害,運動失調,痙攣を呈する.特に,核上性垂直性眼球運動障害が特徴的で,下方視障害のため階段の下行や床の障害物を避けることに困難をともなう.C 型に対してグルコシルセレブロシド合成酵素阻害薬(ブレーザベス)が保険適応になっている.
6.ポンペ病(Pompe disease)
ポンペ病は糖原病Ⅱ型であり,ライソゾーム酵素である酸性αグルコシダーゼの遺伝子GAA(17q25.3)の変異で生じる常染色体性劣性遺伝の疾患である.酸性αグルコシダーゼの活性低下のため,基質のグリコーゲンがライソゾームに蓄積して発症する.発症年齢から乳児型と遅発型がある.乳児型は生後2 カ月までに筋緊張低下・筋力低下,肥大型心筋症,授乳困難,成長障害,呼吸障害,難聴,肝腫大,巨舌を呈し,酵素補充療法を受けなかった場合1 歳までに死亡する.遅発型は小児期発症では1 歳以降に緩徐に近位筋優位の筋力低下と筋萎縮が出現し,呼吸障害を生じる.成人発症の場合は20~70 歳に近位筋の筋力低下と筋萎縮が出現し緩徐に進行し,呼吸障害を発症する.成人の高CK 血症を呈するミオパチー症例では本症の鑑別診断を要する.診断はリンパ球,生検筋,培養線維芽細胞,濾紙血での酵素活性低下の証明により行う.治療は酸性αグルコシダーゼの酵素補充療法(マイオザイム)が2007 年より臨床使用可能となった.酵素補充療法とともに,循環器管理,呼吸器管理,栄養管理,リハビリテーションを行う.
[検査]
血漿,白血球,生検組織,濾紙血のα-galactosi-dase A の酵素活性に著明な低下を認める.また,被角血管腫などの皮膚の検査,心エコーなどの循環器的検査,腎機能検査,聴力検査,眼科的検査,頭部 MRIなどを行い,全身臓器について検索する.女性の場合は酵素活性の低下の程度が様々であり,家族歴の詳細な聴取と遺伝子検査を要する.
2.ゴーシェ病(Gaucher disease)
[検査]
白血球のグルコセレブロシダーゼの酵素活性の低下を認める.
3. GM1 ガングリオシドーシス(GM1 gangliosidosis)
GLB1(3p22.3)の変異のため,β-ガラクトシダーゼの酵素活性低下を生じ,GM1 ガングリオシドが蓄積する常染色体性劣性遺伝の疾患である.診断は白血球のβ-ガラクトシダーゼ活性低下により行う.1 型(乳児期発症),2 型(若年型),3 型(成人型)がある.3 型はジストニアなどの錐体外路症状,錐体路障害,認知障害を示し,肝脾腫がみられないことが診断を困難にしている.本邦では3 型が比較的多い.酵素補充療法は開発されていない.
4. GM2 ガングリオシドーシス,Tay-Sachs 病(GM2 gangliosidosis,Tay-Sachs disease)
HEXA(15q23)の変異のため,ヘキソサミニダーゼA 欠損を生じる常染色体性劣性遺伝の疾患である.酵素活性低下のため,GM2 ガングリオシドが脳内に蓄積する.確定診断は血清,白血球のヘキソサミニダーゼA の活性低下で行う.一方,ヘキソサミニダーゼB 活性は保たれている.乳児型が最も多く,眼底のcherry red spotが特徴的である.精神運動発達遅延,聴覚過敏,痙性四肢麻痺,痙攣を生じる.4 歳を超えての生存はまれである.その他,幼児期から小児期に発症し,痙性麻痺,運動失調,認知障害,言語障害,嚥下障害を示し10~15 歳で死亡する若年型,青年期に発症し,構音障害,嚥下障害,痙性麻痺,運動失調,精神症状を進行性に呈する成人型がある.これまでに酵素補充療法は開発されていない.
5. ニーマンピック病(Niemann-Pick disease)
SMPD1(11p15.4)の変異のため,酸性スフィンゴミエリナーゼの酵素活性低下を生じるA 型,B 型と細胞内のコレステロール輸送障害を生じるC 型(18q11.2 に遺伝子座があるNPC1 および4q24.3 に遺伝子座があるNPC2)があり,いずれも常染色体性劣性遺伝である.A 型とB 型の診断は白血球の酸性スフィンゴミエリナーゼ活性の低下で行う.C 型は培養線維芽細胞でのコレステロールのエステル化障害の生化学的検出,および骨髄細胞のフィリピン染色により診断される.A 型は全体の半数をしめ,精神運動発達遅延,肝脾腫,cherry-red spot,錐体路障害,痙攣を生じる.2 歳を超える生存はまれである.B 型は神経症候を示さず内臓型であり,肝脾腫,呼吸障害,骨髄障害を示し,肝不全により成人までに死亡することが多い.C 型の典型例は幼児期に発症し,精神運動発達遅滞,肝脾腫,眼球運動障害,運動失調,痙攣を呈する.特に,核上性垂直性眼球運動障害が特徴的で,下方視障害のため階段の下行や床の障害物を避けることに困難をともなう.C 型に対してグルコシルセレブロシド合成酵素阻害薬(ブレーザベス)が保険適応になっている.
6.ポンペ病(Pompe disease)
ポンペ病は糖原病Ⅱ型であり,ライソゾーム酵素である酸性αグルコシダーゼの遺伝子GAA(17q25.3)の変異で生じる常染色体性劣性遺伝の疾患である.酸性αグルコシダーゼの活性低下のため,基質のグリコーゲンがライソゾームに蓄積して発症する.発症年齢から乳児型と遅発型がある.乳児型は生後2 カ月までに筋緊張低下・筋力低下,肥大型心筋症,授乳困難,成長障害,呼吸障害,難聴,肝腫大,巨舌を呈し,酵素補充療法を受けなかった場合1 歳までに死亡する.遅発型は小児期発症では1 歳以降に緩徐に近位筋優位の筋力低下と筋萎縮が出現し,呼吸障害を生じる.成人発症の場合は20~70 歳に近位筋の筋力低下と筋萎縮が出現し緩徐に進行し,呼吸障害を発症する.成人の高CK 血症を呈するミオパチー症例では本症の鑑別診断を要する.診断はリンパ球,生検筋,培養線維芽細胞,濾紙血での酵素活性低下の証明により行う.治療は酸性αグルコシダーゼの酵素補充療法(マイオザイム)が2007 年より臨床使用可能となった.酵素補充療法とともに,循環器管理,呼吸器管理,栄養管理,リハビリテーションを行う.