薬物依存症(アルコールを除く)
drug dependence
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。
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Clinical Chart
- 薬物依存症とは,薬物を反復使用することにより,薬物に対する渇望が出現して,薬物の使用をコントロールできなくなってしまう病気である.
- 直近の薬物使用を同定する尿検査などはあるものの,依存症を診断するような検査は存在しない.
- 中毒性精神病の治療は,統合失調症に準じて,抗精神病薬を投与する.薬物の使用期間が短ければ,薬物の摂取中止後,短期間で改善することが多い.しかし長期間の使用歴がある場合は摂取中止後も,幻聴などの精神病症状が残存することがある.
- 依存症の治療には,担当医やスタッフとの良好な治療関係が非常に重要である.
- トランスセオレティカルモデルのどの段階にいるのかを評価し,各段階に適した治療法を行う必要がある.
- 動機づけ面接法により,「薬はやめたいけどやめたくない」という両価性を理解し,共感することが大事である.また患者自身の薬をやめたいという動機を引き出し,強化していくことが重要である.
- 認知行動療法は断薬を始めたときに特に有効な治療法である.薬物使用のハイリスク状況を避けたり,薬物を使用する以外の対処行動を身につけていくものである.
- 自助グループや DARC などの治療資源を利用することは断薬のために有効である.
- 家族に対する教育も非常に重要である.共依存状態から抜け出し,過干渉にならず,本人と適度な距離を保つように指導する.
診断
①薬物依存症には,診断に役立つ検査はない.尿検査でトライエージを行えば,直近の薬物の乱用については確認が可能であるが,陽性であったとしても,依存症かどうかは判断できない.問診を行い,ICD-10の診断基準(表1)を用いて診断していく.
②過去から現在までの薬物使用歴を確認する.多剤の乱用者も多いので,これまでに使用経験のある各薬物の使用開始年齢,使用し始めたきっかけ,使用動機,使用方法,使用頻度,購入ルートなどについて確認をしていく.
③家族歴については,アルコールを含む精神作用物質関連の精神障害をはじめ,統合失調症,気分障害等を確認する.また,本人に知的障害,ADHD,学習障害,摂食障害などの併存している精神疾患の有無や,自傷歴,自殺企図歴を確認する.社会生活歴では教育歴,職業歴,婚姻歴,虐待歴,暴力団関係者との関係,補導歴,矯正施設入所歴などを確認していく.
④覚せい剤などの経静脈的な使用歴がある場合には,B 型肝炎,C 型肝炎,HIV 等の感染症の有無を確認する必要がある.
⑤薬物の摂取により不安,焦燥,精神運動興奮,易怒性,猜疑心,被害関係妄想,追跡妄想,注察妄想,幻聴,体感幻覚などさまざまな精神症状を呈する.これらの精神症状は薬物の摂取を中止すれば急速に落ち着くことが多いため,薬物使用との時間的関係を確認する必要がある.ただし薬物使用歴が長い場合には,薬物の摂取を中止しても長期間精神病症状が残存することもある.
②過去から現在までの薬物使用歴を確認する.多剤の乱用者も多いので,これまでに使用経験のある各薬物の使用開始年齢,使用し始めたきっかけ,使用動機,使用方法,使用頻度,購入ルートなどについて確認をしていく.
③家族歴については,アルコールを含む精神作用物質関連の精神障害をはじめ,統合失調症,気分障害等を確認する.また,本人に知的障害,ADHD,学習障害,摂食障害などの併存している精神疾患の有無や,自傷歴,自殺企図歴を確認する.社会生活歴では教育歴,職業歴,婚姻歴,虐待歴,暴力団関係者との関係,補導歴,矯正施設入所歴などを確認していく.
④覚せい剤などの経静脈的な使用歴がある場合には,B 型肝炎,C 型肝炎,HIV 等の感染症の有無を確認する必要がある.
⑤薬物の摂取により不安,焦燥,精神運動興奮,易怒性,猜疑心,被害関係妄想,追跡妄想,注察妄想,幻聴,体感幻覚などさまざまな精神症状を呈する.これらの精神症状は薬物の摂取を中止すれば急速に落ち着くことが多いため,薬物使用との時間的関係を確認する必要がある.ただし薬物使用歴が長い場合には,薬物の摂取を中止しても長期間精神病症状が残存することもある.
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表1 ICD-10 依存症候群の診断ガイドライン
依存の診断確定は,通常過去1年間のある期間,次の項目のうち3つ以上がともに存在した場合にのみくだすべきである.
1.物質を摂取したいという強い欲望あるいは強迫感.
2.物質使用の開始,終了,あるいは使用量に関して,その物質摂取行動を統制することが困難.
3.物質使用を中止もしくは減量したときの生理学的離脱状態.その物質に特徴的な離脱症候群の出現や,離脱症状を軽減するか避ける意図で同じ物質(もしくは近縁の物質)を使用することが証拠となる.
4.はじめはより少量で得られたその精神作用物質の効果を得るために,使用量をふやさなければならないような耐性の証拠.
5.精神作用物質使用のために,それに代わる楽しみや興味を次第に無視するようになり,その物質を摂取せざるをえない時間や、その効果からの回復に要する時間が延長する.
6.明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず,依然として物質を使用する.たとえば,過度の飲酒による肝臓障害,ある期間物質を大量使用した結果としての抑うつ気分状態,薬物に関連した認知機能の障害などの害,使用者がその害の性質と大きさに実際に気づいていることを(予測にしろ)確定するよう努力しなければならない.