原発不明癌
別名 | cancer of unknown primary |
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疾患スピード検索で表示している情報は、以下の書籍に基づきます。
「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690)
Clinical Chart
- 原発不明癌は病理組織学的に「がん」と診断された後に十分な検索を行っても原発巣が特定されないものを指す.種々の原発巣を含み heterogeneity に富んだ集団である.
- 乳癌,腎細胞癌,胃癌,肺癌,肉腫などの術後 10 年以上経過して転移する場合も報告されており,がんの既往を十分に問診する.
- 腫瘍マーカーの検索が重要で,β-hCG,AFP,CA125,PSA(男性)をベースとして,診断された転移巣の場所に応じてさらに追加する.
- 胸腹部造影 CT,必要に応じて上部/下部消化管内視鏡,骨盤 MRI などによる検索を行う.原発巣の検索において,FDG-PET は推奨されていない.
- 病理組織診断が重要であり,免疫組織学的検査の追加を行い,原発巣の推定を行う.
- 原発巣が同定できなくても,favorable subsets では化学療法により予後延長が期待できる.
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診断の手順:原発巣の同定
原発不明癌の診療においては,乳癌,腎細胞癌,胃癌,肺癌,肉腫などの術後10 年以上経過して転移する場合も報告されており,最初にがんの既往を十分に問診することが重要である.また,喫煙歴,飲酒歴,職歴(アスベスト曝露など),家族歴(遺伝性腫瘍など:表1)の聴取も重要である.
次に,腫瘍マーカーの検索が重要で,ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG),α-フェトプロテイン(AFP)で胚細胞腫瘍(性腺・性腺外),CA125 で卵巣癌,原発性腹膜癌,PSA(前立腺特異性抗原:男性のみ)で前立腺癌をスクリーニングし,CEA(上昇していれば頻度が高い肺癌・消化器癌を重点的に行うとともに,肉腫や悪性中皮腫の可能性は低下する),NSE・Pro-GRP(神経内分泌腫瘍),サイログロブリン(甲状腺癌),さらに転移巣の場所に応じて考えられる原発巣の腫瘍マーカーを追加する.
画像診断としては,造影CT が重要となるが,CA19-9やエラスターゼが高値の場合などは膵ダイナミックCT を行わないと膵癌を示唆する小病変を見落とすこともある.胸腹部造影CT などの際には,転移巣の部位とその他のデータを基にしてある程度臓器を絞ったオーダーも必要となる.転移巣が肝臓や腹腔内リンパ節のみにとどまる場合は,頻度的に消化器原発が多いため,便潜血のみでスクリーニングを行うのではなく,上部/下部消化管内視鏡を行う.また,胸水のみの場合は悪性胸膜中皮腫の可能性もあり,胸腔穿刺で悪性所見が得られなくても胸水中ヒアルロン酸高値などがあれば胸腔鏡下胸膜生検を検討する.
通常の検索のみでは見落としやすい,乳腺,泌尿生殖器の精査を乳腺外科,婦人科,泌尿器科などに依頼することも,転移巣の部位によっては検討する.なお,FDG-PET については,原発巣の検索を目的としては推奨されておらず,転移巣が局所療法の適応となる場合に根治性を検討する場合などに追加検査として施行する.
転移巣から得られた病理組織の診断はきわめて重要で,組織型は中~高分化腺癌が約60%,低分化腺癌が約20~30%,扁平上皮癌が約5%,未分化悪性新生物(悪性リンパ腫,肉腫などと鑑別困難なもの)が約5%,神経内分泌腫瘍が約1%で認められる.病理組織標本は免疫組織化学(immunohistochemistry:IHC)による染色を追加し,原発巣の推定を行うことが可能となる場合がある.そのため,胸水,腹水など細胞診でのみ悪性の診断がついている場合は,可能な限り遠沈でセルブロックを作成し,IHC を追加することが重要である.IHC で用いる上皮性悪性腫瘍に対するマーカーとして,サイトケラチン(cytokeratin:CK)7,CK20 の組み合わせ(表2)である程度の原発巣の見当をつけてから,臓器特異的マーカー(表3)を追加するが,病理医の技量によるところが多く,臨床医と病理医による情報共有と検討(clinico-pathologicalcorrelation)が重要となる.
次に,腫瘍マーカーの検索が重要で,ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG),α-フェトプロテイン(AFP)で胚細胞腫瘍(性腺・性腺外),CA125 で卵巣癌,原発性腹膜癌,PSA(前立腺特異性抗原:男性のみ)で前立腺癌をスクリーニングし,CEA(上昇していれば頻度が高い肺癌・消化器癌を重点的に行うとともに,肉腫や悪性中皮腫の可能性は低下する),NSE・Pro-GRP(神経内分泌腫瘍),サイログロブリン(甲状腺癌),さらに転移巣の場所に応じて考えられる原発巣の腫瘍マーカーを追加する.
画像診断としては,造影CT が重要となるが,CA19-9やエラスターゼが高値の場合などは膵ダイナミックCT を行わないと膵癌を示唆する小病変を見落とすこともある.胸腹部造影CT などの際には,転移巣の部位とその他のデータを基にしてある程度臓器を絞ったオーダーも必要となる.転移巣が肝臓や腹腔内リンパ節のみにとどまる場合は,頻度的に消化器原発が多いため,便潜血のみでスクリーニングを行うのではなく,上部/下部消化管内視鏡を行う.また,胸水のみの場合は悪性胸膜中皮腫の可能性もあり,胸腔穿刺で悪性所見が得られなくても胸水中ヒアルロン酸高値などがあれば胸腔鏡下胸膜生検を検討する.
通常の検索のみでは見落としやすい,乳腺,泌尿生殖器の精査を乳腺外科,婦人科,泌尿器科などに依頼することも,転移巣の部位によっては検討する.なお,FDG-PET については,原発巣の検索を目的としては推奨されておらず,転移巣が局所療法の適応となる場合に根治性を検討する場合などに追加検査として施行する.
転移巣から得られた病理組織の診断はきわめて重要で,組織型は中~高分化腺癌が約60%,低分化腺癌が約20~30%,扁平上皮癌が約5%,未分化悪性新生物(悪性リンパ腫,肉腫などと鑑別困難なもの)が約5%,神経内分泌腫瘍が約1%で認められる.病理組織標本は免疫組織化学(immunohistochemistry:IHC)による染色を追加し,原発巣の推定を行うことが可能となる場合がある.そのため,胸水,腹水など細胞診でのみ悪性の診断がついている場合は,可能な限り遠沈でセルブロックを作成し,IHC を追加することが重要である.IHC で用いる上皮性悪性腫瘍に対するマーカーとして,サイトケラチン(cytokeratin:CK)7,CK20 の組み合わせ(表2)である程度の原発巣の見当をつけてから,臓器特異的マーカー(表3)を追加するが,病理医の技量によるところが多く,臨床医と病理医による情報共有と検討(clinico-pathologicalcorrelation)が重要となる.
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- 表1 主要な遺伝性腫瘍と合併する悪性腫瘍
- 表はPC版サイトをご覧ください
- 表2 上皮性悪性腫瘍の免疫組織化学マーカー
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- 表3 臓器特異性免疫組織化学マーカー
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