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睡眠障害

別名 sleep disorders

疾患スピード検索で表示している情報は、以下の書籍に基づきます。

臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. 睡眠障害は[睡眠異常]と[睡眠時随伴症]に大別される.DSM(Diagnostic and Sta-tistical Manual of Mental Disorders)-5(2013)では「睡眠-覚醒障害群」のカテゴリーとなり,①不眠障害,②過眠障害,③ナルコレプシー,④睡眠呼吸障害群,⑤概日リズム睡眠-覚醒障害群,⑥睡眠時随伴症,⑦レストレスレッグス症候群,⑧物質・医薬品誘発性睡眠障害,⑨その他に分けられる.
  2. 不眠症(不眠障害)とは①入眠困難,中途覚醒(睡眠維持困難),早朝覚醒のいずれかにより満足のいく睡眠が取れず,②QOL が持続的に損なわれることと定義づけられる.3 週間以内の症状は一過性の生理的不眠とみなされる.「回復感のない睡眠」はうつ病や睡眠時無呼吸症候群など他疾患との関連で認めることが多い.
  3. 高齢者の不眠は,加齢に伴う生理的不眠や睡眠誤認,認知機能などを考慮し,より慎重に評価する.また(狭義の)せん妄,認知症に伴う夜間せん妄(BPSD),レビー小体病の可能性を考慮する.
  4. 5 P(Physical,Physiological,Psychological,Psychiatric,Pharmacologic)による原因分類が役に立つ.外的要因も含め,取り除ける原因については可能な限り取り除く.
  5. 治療に先立ち,十分に睡眠評価を行い,「健康づくりのための睡眠指針 2014~睡眠 12 箇条~」に基づいた生活指導を行う.「治療の目標は眠れることではなく,日中 QOL の回復」と説明.飲酒習慣については必ず確認し,薬物療法期間中は飲酒をしないよう指導する.
  6. 薬物療法は,耐性(依存性)や高齢者の転倒リスクを勘案し,非ベンゾジアゼピン系薬剤,メラトニン受容体作動薬が第一選択となる.薬剤はいずれの場合も「単剤」での使用を基本とする.
  7. うつ病,睡眠時無呼吸症候群,レストレスレッグス症候群などに伴う不眠は,原疾患の治療と並行して不眠治療を実施する.
  8. 常に終了(休薬)を見据えた治療を心がける
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チェックリスト

 実臨床場面では不眠症(不眠障害)が大半を占めるため,本稿ではこれを中心に言及する.また臨床医は必ず文献1,文献2に目を通しておく必要がある.
①疫学
 わが国の成人の30%以上がなんらかの不眠症状を有しており,6~10%が不眠症に罹患している.高齢者は不眠症の有病率が20~30%にまで増加する.4.8%(約20人にひとり)の国民が睡眠薬を処方されている.
②定義
 不眠症(不眠障害)は①入眠困難,中途覚醒(睡眠維持困難),早朝覚醒のいずれかにより満足のいく睡眠が取れず,②QOL が持続的に損なわれることと定義づけられる.睡眠障害国際分類ICSD(InternationalClassification of Sleep Disorders)-2 では1カ月以上,DSM-5 では週に3日以上かつ3カ月以上症状が持続しているものとし,3 週間以内の不眠は一過性の生理的不眠とみなされる.不眠症は放置すると遷延するリスクが高まるため,日常診療では診断基準にある持続期間を念頭に置きつつも,症状が出現した早期より療養指導の対象とすることが望ましい.
 「回復感のない睡眠」もかつては不眠の症状のひとつにあげられていたが,DSM-5 の定義からは除外された.「回復感のない睡眠」はうつ病や睡眠時無呼吸症候群,レストレスレッグス症候群など他疾患と関連した不眠で認めることが多い.同疾患の合併を念頭に置く.
③高齢者と不眠
 高齢者の不眠は,加齢に伴う生理的不眠や睡眠誤認,認知機能などを考慮し,より慎重に評価する.高齢者が訴える「不眠」には誤認や「8 時間寝ないと健康に悪い」「長く寝たいから早く床に就く」などの睡眠に対する不適切な思い込みや習慣が反映していることがある.それに加え,(狭義の)せん妄による不眠,認知症に伴う夜間せん妄(BPSD),レビー小体病に随伴した精神症状の可能性も考慮する.「不眠以外の症状」に着目し鑑別を進める.日中のQOL が相応に保たれていれば生理的不眠と誤認の可能性を考え,そもそも治療対象とするかどうかを慎重に判断する.急性疾患や薬物投与の事実があればせん妄を,持続した認知機能障害が背景にあれば認知症を,歩行障害や易転倒性・変動するパーキンソン症状・幻視などを伴えばレビー小体病の可能性を考慮する.
④原因分析
 治療介入においては,5 P(Physical,Physiological,Psychological,Psychiatric,Pharmacologic)による原因分類が役に立つ.
 ① Physical(身体的):疾患由来の身体的苦痛(疼痛,瘙痒,呼吸困難など)
 ② Physiological(生理的):騒音,光,室温,環境や生活習慣
 ③ Psychological(心理的):急性,慢性のストレスなど
 ④ Psychiatric(精神疾患関連):うつ病,不安障害など
 ⑤ Pharmacologic(薬剤性):降圧剤,テオフィリン,ステロイド,インターフェロン,アルコールなど
 外的要因も含め,取り除ける原因については可能な限り取り除く.以上の原因検索はフローチャートにそって考えるともれなく行える(内山 真:睡眠障害の対応と治療ガイドライン. p.66, じほう, 2002 参照).
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