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泌尿器系の癌

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臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

●腎細胞癌
  1. 超音波断層撮影の器械の普及で,健診を機会に発見される偶発癌が増加している.
  2. 尿路症状としては血尿を認める.進行すると発熱,体重減少,貧血など尿路外症状が全面に出る症例もある.
  3. 手術療法は腎温存手術(腎部分切除術)や低侵襲手術(腹腔鏡手術)が主体となっている.
  4. 5 年生存率は Gerota 筋膜を超えなければ 60~70%である.
●膀胱癌
  1. 膀胱腫瘍の大部分は悪性腫瘍である.
  2. 男女別にみると,男性において約 4 倍高頻度に発生する.
  3. 喫煙習慣と膀胱癌罹患率に強い相関関係がある.
  4. 確定診断には膀胱鏡検査が必要である.
  5. 表在性腫瘍に対しては経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)で対応するが,進行癌の場合は尿路変向を含む膀胱全摘術が必要である.
  6. 進行癌の場合は全身化学療法,動注療法,放射線療法+化学療法などもある.
●前立腺癌
  1. 前立腺癌は欧米では男性の癌の中で最も頻度の高いものの一つ.日本では肺癌胃癌・肝臓癌・結腸癌・膵臓癌・食道癌・直腸癌に次いで第 8 位で年々増加傾向である.
  2. 前立腺癌の大半は外腺から発生するため病変が大きくならないと排尿障害が現れないことがあり,そのため直腸診の所見が重要となる.
  3. 治療方法は年齢,病期分類などにより,手術(開腹,腹腔鏡,医療ロボット),放射線治療(IMRT,小線源療法),ホルモン治療を選択する.今後の課題はホルモン抵抗性に対する治療である.
●精巣腫瘍
  1. 日本人男性 10 万人当たり 1~2 人の頻度.好発年齢は 0~10 歳,20~40 歳,60 歳以上の 3 峰性であり,生下時や 20~40 歳の男性で最も多い腫瘍であるため,社会的には極めて重要な疾患の一つである.
  2. セミノーマは完全治癒が期待できる固形腫瘍であり,無痛性の陰嚢腫大を認めれば専門医の診察を勧める.
  3. 進行性であってもシスプラチン製剤を中心とした多剤併用化学療法が有効.
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検査

1.腎細胞癌(renal cell carcinoma:RCC)
[検査](表1,2)
①超音波断層法:充実性腫瘤像が観察できる.
②採血:赤沈,CRP は予後因子として重要であり,治療前検査として推奨.
③CT:造影CT が腫瘤の診断に精度が高く,遠隔転移臓器(とくに肺)の観察ができる.また下大静脈内への腫瘍塞栓もチェックする.

2.膀胱癌(bladder cancer)
[検査](表4)
①尿検査:無症候性肉眼的血尿,感染の合併をみる.
②尿細胞診:尿中に排出される尿路上皮剥離細胞の異型度を病理学的に診断する方法である.感度は40~60%,特異度は90~100%と報告されているが,高分化な筋層非浸潤癌の検出能の低さが低感度の要因となっている.
③膀胱尿道鏡検査:数,大きさ,場所,性状を観察する.
④画像検査
 ① 排泄性尿路造影:膀胱内の陰影欠損.上部尿路の閉創,腎盂尿管腫瘍の合併に注意する.
 ② 超音波検査:経腹的膀胱エコーでは十分な蓄尿で約5 mm 以上の腫瘍は診断可能である.
 ③ CT,MRI:璧深達度の判定ならびにリンパ節腫大の有無をチェックする.

3.前立腺癌(prostatic cancer)
[検査](表5)
①直腸指診
 表面凸凹不整石様硬で結節硬結を触れ前立腺中央溝は触れないことが多い.
②前立腺腫瘍マーカー
 前立腺特異抗原(prostatic spesific antigen:PSA)がきわめて有用である.
 (基準値;4.0 ng/mL 以下または年齢階層別基準値;64 歳以下0.0~3.0 ng/mL,65~69 歳0.0~3.5ng/mL,70 歳以上0.0~4.0 ng/mL).
 なお,基準値上限から10.0 ng/mL の範囲をグレーゾーンとよぶことがある.カットオフ値が各種測定キットで違うので確かめておく必要がある.
③超音波断層検査(経直腸的がよい)
 種々の変形, 対称性の消失, 被膜の断裂,hypoechoic な病変として描出される.
④MRI
 病期診断には,高空間分解能のT2 強調画像が重要であり,1.5 テスラ以上の高静磁場強度装置での撮影が望ましい.近年では造影ダイナミックスタディ,拡散強調画像やADC マップを併用することで確信度を上げている.
⑤生検
 経直腸的超音波ガイド下生検を原則とする.アプローチは経直腸的,経会陰的アプローチのいずれか,または組み合わせてもよい.最低6 カ所(左右各3 カ所)の系統的生検を行うが,癌検出率の向上のためには6 カ所以上の生検が望ましい.10~12 カ所以上より採取するextended biopsy,20 カ所以上より採取するsaturation biopsy が提唱されている.
⑥骨シンチグラム
 骨転移検索には欠かすことができない検査である.よく使用される骨シンチグラフィ製剤は99mTc-MDP(テクネシウム標識メチレンジホスホネート)および99m-Tc-HMDP(テクネシウム標識ヒドロキシメチルジホスホネート)である.骨はその形を維持しながら,常に新しい骨組織に置き換わる(破壊と再生を繰り返す).骨に病気が発生すると,この破壊と再生のバランスが崩れ,骨を作りすぎてしまったり(造骨性),作らなかったり(溶骨性)といった現象が起こる.骨シンチグラフィ検査はこの骨造成を反映する検査である.骨シンチグラフィは骨転移のみに特異的ではなく,非特異であるので,MRI やPSA 値を参考にすることで相補的に診断精度が高まる.さらに骨転移が広範囲になるとALP(アルカリホスファターゼ)LDH(乳酸脱水素酵素)が高値になることもある.

4.精巣腫瘍
[検査](表7,IGCCC:International Germ Cell Consensus Classification 参照)
①腫瘍マーカー
 β-HCG,αフェトプロテイン(AFP)が重要な検査であり,診断上,治療効果の判定上,さらに予後の判定上において重要である.
  1. ①AFP(alpha-fetoprotein)
     精巣腫瘍のうちNSGCT(nonseminomatous germ cell tumor)で約75%に陽性で,卵黄嚢腫,胎児性癌では高率に陽性である.半減期は5~7 日を考慮し精巣摘出術後の病期判定や化学療法の効果判定を行うことは臨床的に有用な方法と考える.
  2. ②β-HCG(beta-human chorionic gonadotropin)
     組織別にみた陽性率は,絨毛癌100%,胎児性癌60%,卵黄嚢腫瘍25%,奇形腫25%である.pure seminomaの約5~10%は組織中にsyncytiotrophoblastic giant cell が存在するため上昇することがある.減期は24~36 時間でAFP と同様に推移は治療効果をよく反映する.
  3. ③LDH(lactate dehydrogenase;乳酸脱水素酵素)
     いくつかの癌において腫瘍マーカーとして推奨されており,精巣腫瘍でも約50%で上昇がみられるため,腫瘍マーカーとして有用と考えられる.しかし,疾患特異的ではなく,肝疾患など他の因子によっても上昇する場合があるため注意を要する.
②CT
 近年のCT の精度向上は目覚ましく,胸部~骨盤部位の検査は,初期病期診断としては必須である.肺および縦隔病変に関しては,胸部CT は胸部単純Xp よりも感度が高いため,転移巣の検索としては胸部CTを行うべきである.しかし,1 cm 以下の肺病変については,偽陽性の場合があることを知っておくべきである.
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表1 TNM 分類(UICC)
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表2 腎実質の上皮性腫瘍の組織学的分類
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表4 TNM 分類(UICC)
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表5 TNM 分類(2009 年版)
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表7 精巣腫瘍の病期分類(日本泌尿器科学会病期分類2005)
表はPC版サイトをご覧ください
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